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落し物を届けたら「お礼」するのが義務ーー「落し物拾得」の意外なルールとは

2015年06月08日 14:11  弁護士ドットコム

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落とし物を拾ってくれた人へのお礼は、果たしてどこまで必要だろうか。お礼のことなど考えず「善意」で届ける人もいれば、もらって当然だと思っている人もいるだろう。巷には様々な体験談があふれている。


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先日、財布の落とし物を見つけて交番へ届けた東京都内在住のM男さん(20代)。警察官から、おもむろに「お礼はどうしますか?」と聞かれて戸惑ったという。後日、持ち主からお礼の電話が入り、財布に入っていた3万円の10%にあたる3000円のお礼を提示された。「たなからぼたもちの気分ですよ」とM男さんは話す。



いっぽう、ネット上には「拾ってくれた人が財布に入っていた以上の金額を要求してくる」といったトラブルの相談もある。落し物を届けてくれた人へのお礼は義務なのだろうか。また、スマホなどお金以外の品物でもお礼は必要なのだろうか。



足立敬太弁護士に話を聞いた。



●拾ったお金や品物の5~20%のお礼は義務


「遺失物法第28条には『物件の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない』と定められています。


『支払わなければならない』ですから、これは法的な義務です。けれど、いつまでも請求できるわけではなく、返還後1か月を経過した後の請求はできません(同29条)」


スマホなどのモノはどうだろう。


「それが重要な記載がある手帳や、思い出の詰まったスマホであっても、基本的にはその手帳やスマホそのものの価値を『当該物件の価格』として、その100分の5以上100分の20以下の範囲で報労金を支払えば足りると考えます」


持ち主にとっては、かけがえのない思い出の「プライスレス」なデータが入ったスマホでも、モノの価格の算定でよいのだろうか。


「もちろんデータや思い出の価値が、手帳やスマホを大きく上回る可能性はあります。しかし、データや思い出の価値がこれくらいの価値があるという根拠付けや立証は、報労金を請求する拾得者の側がしなければなりません。それなりの労力が必要になります。しかも前述のとおり、そうした立証は、返還後1か月以内にしなければなりません」


短期間でそんなことをするのは、あまり現実的ではない。


「そうですよね。それでもなお、報労金の額が争われた裁判例はいくつもあります。ただ、報労金の算定は、裁判所の裁量によって決定できるというのが一般的な実務例です。もちろん、データや思い出を、手帳やスマホのモノの価格より高く評価して報労金が高くなるというケースもあり得ます」


足立弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。分かりやすく丁寧な説明だと高評価多数。
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/