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星野源はさらなるスターへの階段を登る? SGチャート2位の楽曲を読み解く

2015年06月08日 13:41  リアルサウンド

リアルサウンド

星野源『SUN(初回限定盤)』(ビクターエンタテインメント)

参考:2015年5月25日~2015年5月31日のCDシングル週間ランキング(2015年6月8日付)(ORICON STYLE)


 今週のシングルランキングは、1位にAKB48『僕たちは戦わない』、2位に星野源『SUN』、3位にUVERworld『僕の言葉ではない これは僕達の言葉』、4位にAAA『アシタノヒカリ』、5位にGLAY『HEROES/微熱(A)girlサマー/つづれ織り~so far and yet so close~』という並びとなった。


 1位のAKB48『僕たちは戦わない』は、発売初週で167.3万枚のセールス。2週目でも6万枚を超えるセールスを記録している。出荷枚数ベースではグループ史上最高を更新し、300万枚を超えたというニュースも報じられた。


 というわけで、売り上げの数字だけを見ればAKB48がダントツなのだが、すでに誰もが知っているように48グループはヒットチャートというものをハックしながら「別のゲームを戦っている」巨大な文化現象なので、AKB48を別枠として、この週の「実質1位」は星野源と言ってもいいのではないだろうか。


 こうして見てみると、実はかなり興味深い並びとなっているのが今週のシングルチャートだ。ジャニーズ系やEXILE一族が上位に姿を見せず、ここのところチャート上位の常連だったK-POPグループ、アニソンやキャラクターソングも6位以下。ということで上位は非常に「J-POP感」ある並びになっている。そしてUVERworld、GLAYといったスタジアムバンド、10周年を迎えいまだ人気の衰えないAAAを抑えて、初のドラマタイアップで大きく支持層を広げた星野源が上位に食い込んだことになる。


 基本的にはこの記事はシングルチャートの分析なのでアルバムの話は避けてきたが、これらのシングルがリリースされた5月27日は、Superfly、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ceroなどのニューアルバムの発売日にあたり、それらの新譜もチャート上位に食い込んでいる。ロックファンやJ-POPリスナーがCDショップに足を運び、その中でも星野源が最もマスに届いたという状況が見てとれる。


 こちらの分析記事(http://realsound.jp/2015/06/post-3366.html)にも書かれている通り、星野源「SUN」の音楽的なアプローチは「ダンス・クラシックとJ-POPの融合」。昨年にリリースされた「桜の森」の延長線上にある音楽性だ。


 ディスコやダンス・クラシックをどう今の時代にアップデートするか。それはここ数年の世界のポップシーンの大きな潮流でもある。ファレル・ウィリアムスを筆頭に、ジャスティン・ティンバーレイクやブルーノ・マーズ、今年に入ってもメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンのタキシードなど、様々な良作がリリースされている。星野源もそこに刺激を受けていることは間違いない。ただ、それをそのまま取り入れるのではなく、あくまでJ-POPに換骨奪胎するセンスが彼の魅力と言っていいだろう。


 歌詞に「Hey J」という一節がある通り、曲はマイケル・ジャクソンへのオマージュとなっている。「僕たちはいつか終わるから」という一節もありながら、(それゆえか)基本的には、とても明るく、ハッピーで躁的な一曲になっている。


 今年に入り、星野源は事務所もこれまで所属していたカクバリズムからアミューズへと移籍した。シンガーソングライターとしてはもちろん、役者としても、文筆業でも、すでに幅広い人気を獲得している彼。しかしここからはさらなるスターへの階段を登ろうとしているのではないだろうか。


 シングル売上の躍進からも、そのことが感じ取れる。(柴 那典)