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セカオワ、海外展開へ向けた動きが明らかに 著名プロデューサーや<PC Music>とのコラボを分析

2015年06月06日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

SEKAI NO OWARI オフィシャルサイト

 SEKAI NO OWARIが、この夏全国公開される映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の主題歌を担当。7月29日にリリースするシングル『ANTI-HERO』のカップリング曲とあわせ、そのクレジットが話題となっている。


(参考:ポップミュージックの最前線へ SEKAI NO OWARIの「挑戦」を読み解く


 映画の前編である『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』に書き下ろした主題歌であり、シングル表題曲の「ANTI-HERO」は、ゴリラズやカサビアンのサウンドプロデュースを手掛けるダン・ジ・オートメイターとともに作り上げた楽曲。後編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』の主題歌「SOS」は、シガー・ロスのプロデューサーを務めるケン・トーマスとともにロンドンで制作された。これらの楽曲について、音楽ジャーナリストの柴那典氏は「世界展開に向けた本気度の表れである」と語る。


「セカオワは直近の作品において、『Dragon night』でプロデューサーにニッキー・ロメロを起用し、流行のEDM路線を展開しましたが、今回はゼロ年代初頭に頭角を現したプロデューサーであるダン・ジ・オートメイターとケン・トーマスの2人を招聘しています。まだ楽曲を聴けていないので確信的なことは言えないのですが、これらは『流行ものではないスタンダードな楽曲を制作する』という意思の表れだと思います。また、海外レコーディングかつ全英詞の2曲においても、ネイティブレベルの英語の発音を目指し、ケイティ・ペリーやブリトニー・スピアーズ、アウル・シティーなどを手がけるボーカル・プロデューサー、エミリー・ライトを起用し、徹底的にボーカルトレーニングに励んだようです」


 また、今回発表された映画主題歌の2曲については対照的な曲調になるのではないか?と話す。


「ダン・ジ・オートメイターはゴリラズでエレクトロ・ポップとヒップホップが融合したサウンド感を作りましたし、セカオワという自身をキャラクターナイズする戦略を持ったバンドにぴったりです。また、ケン・トーマスの起用に関しては、彼の手掛けてきたアーティストを見るに『幻の命』などの透明感のある壮大なバラードと相性が良い。『ANTI-HERO』と『SOS』は対照的な2曲となる予感があります」


 そして、『ANTI-HERO』にカップリング曲として収録される「ムーンライトステーション remixed by Dux Content from London」では、インターネットを中心に話題を集めているロンドンのクリエイター集団<PC Music>の主宰である、A. G. CookとDanny L Harleによるプロデューサー・デュオ「Dux Content」がリミックスを手掛けている。最近では、安室奈美恵が6月10日発売のアルバム『_genic』で、同じく<PC Music>所属のプロデューサー・SOPHIEを起用するなど、日本のメジャーアーティストによる<PC Music>界隈とのタッグが続いている。


「海外ではカニエ・ウェストやビョークがArcaなどを起用して話題を呼んでいるように、今のセカオワや安室奈美恵がカッティング・エッジなプロデューサーを迎えているということだと思います。ネットレーベルを拠点に活躍する海外のプロデューサーの中には日本のキャラクター音楽やゲーム、アニメに強い興味を持っている作り手も多く、今回の起用が新たな交流に結びつく可能性は高そうです」


 また、同氏は今回のコラボがもたらす可能性について、海外クリエイタ―にも影響を与えるのではと指摘した。


「Fukaseがkz(livetune)の楽曲に参加するなど、セカオワとトラックメイカー勢の交流は以前よりあったので、今回の起用にそこまで疑問を抱くリスナーはいないと思います。それに、日本で最大級のポップ・バンドになったといえるセカオワが遊び心を表現しつつ、振り幅の広さを見せていることにも注目です。日本の音楽の作り手は『アメリカやイギリスのポップミュージックをどう輸入してローカライズするか』という発想になりがちだが、ボカロやアニソン、アイドルやV系など日本にオリジンのあるゼロ年代以降の音楽が海外へ輸出され、海の向こうのクリエイターに影響を与えているという事実もある。セカオワの海外進出にも期待は高まります」


 前作『Tree』も58万枚のセールスを突破し、ますます勢いに乗るセカオワ。世界展開を見据えた彼らの動きは、今後の音楽シーンを考える上でもカギとなりそうだ。(リアルサウンド編集部)