6月5日(金)に、FIAからカナダGPのパワーユニット使用状況が発表された。それによれば、ホンダは2台そろってターボチャージャーとMGU-Hの4基目を投入。アロンソのみ、CE(コントロール・エレクトロニクス)も4基目を使用。つまり今回ホンダがトークンを使用したコンポーネントは、ターボチャージャーとMGU-Hの可能性が高い。
その件について尋ねたところ、ホンダの新井総責任者は「そうでしたっけ?」と言って、話をはぐらかした。新井氏が、まともに質問に答えなかったことには理由がある。
「もし、どこにトークンを使用して改良したのか具体的に明示すれば、他のエンジンメーカーは「ああ、そういうことか!」と、ホンダの開発状況を把握できる」
しかし、FIAのリリースにはターボチャージャーとMGU-Hが変更されたと明記されている。それでも新井総責任者が明言しなかったのは、ターボチャージャーとMGU-H両方にひとつずつトークンを使用したのか、どちらかに2トークンをまとめて使用したのか、ふたつの可能性を残しておきたかったからではないか。
また、今回トークンを使った目的については次のように説明した。
「(トークンを使用しなくても)信頼性で変えられるところはたくさんあるが、たとえ信頼性向上が理由であっても、その部分を変えれば明らかに性能も上がるのであれば、トークンなしで改良することはできない。信頼性向上を目的としているのは確かだけれど、パワーがまったく上がっていないわけではない。みなさんパワーが上がったと言うと、トップエンドの馬力を想像すると思いますが、そういう点でパワーが上がったというわけではない。全体として、より効率の良いパワーユニットになるような改良をしていて、若干だがパワーも上がっている」
最後に新井総責任者は、こう語った。
「今回のトークンを使用した改良は、特にカナダGPのためというわけではなく、長期的に見て、いまトークンを使って改良するのが最適だと判断したから。後半戦に向けて、(残ったトークンで)次は他のところも変えていく」
フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトン、ふたりがカナダGPに向けたコメントに、あまり威勢のいい言葉が含まれていないのは、そのためなのだろう。だからといって、ホンダが今シーズンをあきらめたのかというと、そんなことはない。
「(どこに、どのトークンを使用したのかによって)一瞬、差が開くときもあるかもしれないが、やることをきちんとやっていれば、ヨーロッパラウンド終盤では、それなりの戦いができると思う。我々が、ライバルたちに追いつくために立てた計画に間違いはないと信じている」
バトンのギヤボックストラブルは解決したものの、フリー走行2回目は雨でほとんど走ることができなかった。好天が予想されている土曜日に、ホンダの改良パワーユニットがどんな走りを披露するのか、楽しみにしたい。
(尾張正博)