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TOYOTA GAZOO Racing若手ラリードライバー育成選出の勝田貴元「ラリーへの転向は苦悩した」

2015年06月05日 20:41  AUTOSPORT web

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3日に都内で行われた合同記者会見に出席した勝田貴元
トヨタが3日に開催した、ラリーで世界に挑戦する若手ドライバーを支援する『TOYOTA GAZOO Racing チャレンジプログラム』に関する記者会見。会見には、プログラムに選出された新井大輝と勝田貴元が登場し、自身の課題や今後の意気込みなどを合同記者会見で語った。

  育成ドライバーのひとりに選出された勝田は、2005年にカートデビューし、2011年にFCJフォーミュラチャレンジ・ジャパンでチャンピオンを獲得。翌2012年にF3参戦と同時にJRCへスポット参戦を開始し、参戦2年目の2014年には、JN5クラスへスポット参戦した第8戦ハイランドマスターズでクラス優勝を達成。今季はJN6クラスへのステップアップを果たしている。勝田の父である勝田範彦もラリードライバーで、今季JRC開幕戦ツール・ド・九州で総合優勝し、同大会10連覇を達成している。

●WRCには2018年以降に参戦したい

――これからの数年間での目標を教えて下さい。

「僕はまだラリーの経験が浅いです。運転するという意味ではサーキットレースと同じですが、ラリーには独特の難しさがあると思います。まだ経験値やドライビングスキルという面で、世界と戦っていけるレベルには達していないと思います。今年と来年、再来年をヨーロッパのラリーに実際に参戦し、経験を積んでいきたいですね」

「2017年からWRCに参戦するのは厳しいと思っています。2018年か19年にWRCへ参戦できるよう、自分のレベルを高めていきたいです。WRCに参戦したら、1~2年勉強したあと、チャンピオン争いに絡んでいけるよう、成長していけたらと思います」


――フィンランドでの2次選考で、射撃やアスレチックなど様々なテストを行っていましたが、一番戸惑ったもの、難しかったものはどんなことでしたか?

「高いところが苦手なので、一番戸惑ったのはアスレチックです。高いところで実施されたトレーニングだったので戸惑いました。怖かったですね。しかし、やってみると楽しいのと同時に、フィジカル的に厳しいトレーニングだったので、行けるところまでやろうと思いました。日本にはなかなか無い環境だったので、楽しみながらトライすることができました」

――ラリーを始めたきっかけ、自身の考えるラリーの魅力はどのような部分でしょうか?

「祖父と父がラリードライバーなので、物心つく前からラリーに触れる環境でした。小さい時はラリーというよりクルマが好きで、大きくなったらクルマを運転するんだ、という感情しかありませんでしたね。12歳の時にレーシングカートに出会って、ラリーよりレースにのめり込みました。F3までステップアップすることができましたけど、今年からサーキットレースを一切やめて、ラリーに転向する決意を固めました」

「昨年JRCにスポット参戦した時に、ドライバーの一番近くにコドライバーが居て、サービスパークにはメカニックが居て、チームが主役なんだという雰囲気を強く感じました。それに心を奪われましたね。また、公道を使う競技なので、いろいろなコンディションで何があるか分からない道で速さを競います。サーキットとは違う恐怖感がプレッシャーになるのと同時に、楽しさを感じるポイントですね」


●スピードに対する恐怖感が少ないのが強み

――サーキット出身ならではの持ち味はなんでしょうか?

「昨年までサーキットだけで戦ってきましたが、そこで培った経験やドライビングスキルなどはラリーでも役立つと思っています。たとえばターマックの走行感覚は変わらないので、ペースノートさえしっかり作ることができれば速く走ることができるはずです」

「スピード感に関してもサーキットレースの方が高いので、スピードに対する恐怖感はまったくありません。スピードが上がればコントロールが難しくはなりますが、落ち着いてドライビングに集中できていますね」

――今回の選考過程で、トミ・マキネンやミッコ・ヒルボネンからアドバイスはありましたか?

「新井選手も言っていましたが、自分たちの技量を見せることが目的のテストでした。こちらから質問すれば答えてくれましたが、向こうから特別教えてもらうようなことはありませんでしたね」

「ただ質問をした時に、海外ラリーは車速が速いので距離をしっかり取ること、ブラインドコーナーが多いので、ジャンピングスポットから次のコーナーまでの距離を正確に記載した方がいいと言われました」

「技術的なものよりもメンタルに関する質問を多くしましたね。ラリーは1台で走るので、ライバルとの差はゴールするまでわかりません。その分、強い自信と精神力がないと戦えない競技です。自分に自信を持って、無茶をしない走りができる強い心を持つよう言われました」

――今月末から始まるトレーニングの課題と目標は?

「今月末のトレーニングは、ドライビングとペースノートに関するものです。特に課題だと感じているのはペースノート。経験が浅いこともあり、中身が大雑把になってしまうところがあります。この部分を教えてもらいながら、より理解しやすく具体的に書き込んでいけるようになりたいですね。もちろん、ドライビングに関してもしっかり走りこんで、レベルを上げていきたいです」


●サーキットレースを続けるかラリーに転向するか、とても悩んだ

――F3でランキング4位に入りました。トヨタのサポート受けていることもあり、その先スーパーGTやル・マンなども視野に入っていたと思います。ラリーに専念すると決めた時に葛藤はありましたか?

「昨年末に、サーキットレースを続けるか、ラリーに転向するか決断しました。正直どちらも好きなので、両方やりたいという気持ちがありました。しかし、どちらをやるにしても甘くはない世界です。どっちつかずの状態では、上まで行くことはできないと思います。自分の中での覚悟として、周りに意気込みを示すためにもラリーの道を選びました」

「決断した後に迷った時期もありましたが、今はラリーで戦っていくためのプランを3年先まで立てているので、迷いはありません」

――お父様もラリードライバーですが、育成ドライバーに選出された際なにか言われましたか?

「父は結構適当な人間なんです(笑)。父に近い人は気にしているよと言っていますが、なにか直接言われたりはしていません。レースをしていた時も、ラリーに進むと決めた時も、特にこうしろ、ああしろとは言われませんでした」

「僕が聞くと、俺はこうしている、と教えてくれるくらいですね。レースも結局、1度も見に来てくれませんでした(笑)。ただ、頼った時は聞きたいことをしっかり教えてくれます」

――現地でのコミュニケーションに不安はありますか?

「半年くらいイギリスに居ましたが、新井選手ほどは喋れません。コミュニケーションを取りに行くのは苦手ではないので、たくさん喋っていきたいです。日本に帰ってきた時も、英会話に通ったり、親戚に英語が堪能な人がいるので、そういうものを使って勉強していきたいです。フィジカル面と同じくらい重要だと思うので、しっかり取り組んでいきたいです」