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TOYOTA GAZOO Racing若手ラリードライバー育成選出の新井大輝「外国選手との筋肉量の違いに衝撃」

2015年06月05日 20:30  AUTOSPORT web

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3日に都内で行われた合同会見に出席した新井大輝
トヨタが3日に開催した、ラリーで世界に挑戦する若手ドライバーを支援する『TOYOTA GAZOO Racing チャレンジプログラム』に関する記者会見。会見には、プログラムに選出された新井大輝と勝田貴元が登場し、自身の課題や今後の意気込みなどを合同記者会見で語った。

 育成ドライバーのひとりに選出された新井は、1998年から2002年にかけてWRC世界ラリー選手権に参戦し、今季もJRC全日本ラリー選手権に参戦している新井敏弘を父に持つ。2013年に新井は、JRCのオープンクラスやAPRCアジア・パシフィックラリー選手権などへ参戦しラリーデビュー。2014年からはJRCのJN6クラスへステップアップし、今季開幕戦ツール・ド・九州で総合4位を獲得している。

●外国選手は筋肉量が違う

――これからの数年間での目標を教えて下さい。

「WRCには機会があればいつでも出たいと思っています。ただ、自分のドライビングスキルがまだトップレベルには達していないので、ヨーロッパ選手権などで経験を積んでから、最終的にWRCで結果を出したいと思います」

――フィンランドでの2次選考で、射撃やアスレチックなど様々なテストを行っていましたが、一番戸惑ったもの、難しかったものはどんなことでしたか?

「辛かったというより、初めての経験だったのはローイングトレーニングでした。カヌーを漕ぐ動作に似ている筋力トレーニングです。このトレーニングをフィンランドの若手選手と一緒に行ったのですが、ヨーロッパの同世代の選手がどれくらいでこのトレーニングをやりきっているのかを見るのに役立ちました」

「外国選手は筋肉量が違うなというのが感想ですね。同じような体格の選手とトレーニングしましたが、筋肉の質というか持久力に違いがあり、ショックを受けました。僕が全力で2回漕いで到達する数値を、彼らは1回で出してしまうんです。この点は僕の課題ですし、伸ばしていく必要があると思っています」

――ラリーを始めたきっかけ、自身の考えるラリーの魅力はどのような部分でしょうか?

「運転するのが好きで、軽トラックで山を走ったりしていました。友達に勧められて群馬の地区大会に出場したのが、ラリーを始めたきっかけです。ひとりで走っていると比較対象がないので、自分がどのレベルで走っているのか分かりません。いろいろな人と走ることで、自分のレベルが分かるので楽しく感じました。ひとりで走る競技ではない所も魅力です。コドライバーとは、お互い命を預け合ってるので、家族以上の関係を築くことができますから」


●ペースノートの重大さを痛感した

――新井選手が感じた、海外ラリーと日本のラリーの違いはどのような部分ですか?

「去年、オーストリアの国内戦に2回出場しました。走る道も初めてでしたし、ほかのチームでドライブするのも初めての経験でした。コドライバーはグレン・マクニールという方で、以前に父のコドライバーを務めていた方でした。日本のラリーとの違いはアベレージスピード。日本では60mくらい前方を見ていれば対処できることが多いのですが、海外では平均速度が高いので、300m、400m先を見ていないと、体がコーナーに対応できなくなってしまいます。シェイクダウンの時に、この違いに戸惑ってクラッシュしてしまいました」

「日本では反射神経でどうにか対処できる場合が多いんですが、海外では反射神経だけでは何も対処できずに、気がつけばクルマが何回転もしている、というような状況になります。ラリーに対する考え方を変える必要があると痛感しました。コドライバーを務めてもらったグレンとは、いまでも連絡を取っていてアドバイスを貰っています」

「海外ラリーの経験が活かされている部分としては、ペースノートが大きいですね。ラリー独特のことかもしれませんが、ペースノートを信頼して走らないと速いタイムが出せません。自分で速く走れたと感じてもタイムが出ていなかったり、自分では攻めきれなかったなと感じても、ペースノートがしっかりしていると良いタイムが出ていることがあります」

――今回の選考過程で、トミ・マキネンやミッコ・ヒルボネンからアドバイスはありましたか?

「今回は自分がどこまで運転できるかを判断してもらうテストだったので、特にアドバイスを受けてはいません。ただ、ホテルで朝食を食べている時にラリーに何が大事なのか質問したところ、ペースノートの書き方についてアドバイスを頂けました。海外ラリーはスピードが速いので、100m以内のペースでノートを書く場合、詳細かつ理解しやすいようにする必要があると教わりました」


●長距離SSで集中力を維持するのが課題

――今月末から始まるトレーニングの課題と目標は?

「僕の課題は、距離が長いステージなどを走っている時に、後半集中力が落ちるタイミングが必ずあることです。体力的な要素も関係しているとは思いますが、どの程度集中してドライブできているかを具体的に知ることができれば、ミスをする確率が減ると思います。体をエンジニアリングしながら、どれくらいの集中力でラリーに臨んでいるかを知ることが課題ですね」

――お父様もラリードライバーですが、育成ドライバーに選出された際なにか言われましたか?

「電話で合格を伝えたら、「ふーん、そう」とだけ言われました。父の場合、教えるというよりは態度で示すタイプの人間です。アドバイスというよりは、自分の姿から学べという昔ながらのタイプの人なので。これからも父の背中を見ながらになると思いますが、すぐに父を追い抜ければいいなと思います」

――現地でのコミュニケーションに不安はありますか?

「イギリスに1年以上住んでいたので、言葉に関しては心配していません。これからはフィンランドならスオミ語など、現地の言葉で会話できるようになりたいですね」