すでに6月1日(月)、FIAは「フェラーリとホンダが改良型パワーユニットを投入するためトークンの使用を行使した」ことを各エンジンマニュファクチャラーに通知している。6月4日、カナダGPのパドックに姿を現したホンダの新井総責任者も、その事実を認めている。
新井総責任者は金曜日にメディア向けの会見を行う予定で、あまり多くは語らなかったが、今回使用したトークン「2」は、信頼性に関する分野に使ったと認めた。
しかし、ここで疑問が発生する。信頼性向上を目的とした改良はFIAに申請して承認が取れれば、トークンを使用しなくとも可能なはずだ。なぜホンダは、その分野にトークンを使用したのだろうか。この件に関しては、あるFIAスタッフも次のように語っている。
「ホンダがどの部分にトークンを使用したのか我々は公表できないが、少なくとも信頼性向上のために使用したのではない。明らかにホンダはパフォーマンスをアップするためにトークンを使用した」
そこで浮上してくるのは、序盤戦でトラブルが相次いだターボチャージャーの改良である。開幕戦でグリッドに着くためのレコノサンスラップでパワーユニットに問題が発生したケビン・マグヌッセン。その原因は明らかになっていないが、ホンダは次戦マレーシアGPでマグヌッセンに代わって復帰してきたフェルナンド・アロンソのパワーユニットのうち、ICE、TC、MGU-H、それぞれ2基目のコンポーネントを投入している。この3点が同時にトラブルを起こす原因は、エンジンとMGU-Hに連結されているターボチャージャーではないかと考えられる。
第2戦マレーシアGPでは、ジェンソン・バトンがターボのトラブルでリタイア。ホンダは第3戦中国GPでもICE、TC、MGU-H、それぞれ3基目のコンポーネントに変更している。もちろん2基目も3基目も、信頼性向上を目的とした改良を行っているはずだ。今回ターボチャージャーにトークンを使用したとすれば、メルセデスやフェラーリに追いつくためには、信頼性向上を目的とした改良だけでは十分ではないという段階にきたと言っていい。
ただし今回の改良によって得られるパフォーマンスアップが、それほど大きなものではないため、新井総責任者は「パフォーマンスより信頼性向上を目的としたトークンの使用である」と言いたかったのではないだろうか。
ふたつのトークンを、ひとつずつ2箇所に使ったのか、まとめて使用したのかも新井総責任者は明言しなかったが、FIA関係者が「ふたつのトークンを使用した“あるコンポーネント”は確実に、以前のものとは違っている」と語っていることから、ひとつのコンポーネントに、まとめて2トークンを使用した可能性が高い。
最後の疑問は、トークンを使用した改良パワーユニットが実際カナダGPに投入されるのかどうか。もし使用されるとしたら、金曜日から走るのかどうかだ。この件に関しても新井総責任者は明らかにしていない。ただ、ホンダがFIAにトークンの申請を行ったのは5月の最終週であり、スペインGP直後のバルセロナ・テストで実走はしていないことを考えると、金曜日のフリー走行から走らせて、さまざまな確認を行いたいのではないだろうか。
この件に関しては新しい情報を入手しだい、またお伝えする。
(尾張正博)