IT業界の人材が「売り手市場」となって久しい。特に中小企業やITベンチャーなどは、エンジニアの採用に苦労しているところが多いようだ。
そこで現在、企業は専門学生に目を向けている。一般の大卒者よりもITスキルが高い傾向にあり、うまく採用すれば即戦力の期待も持てる。
マスの採用市場とは違う彼らの市場は、どのような特徴があるのだろうか。専門学生に特化した就職サイト「WorKuru(ワークル)」を運営するライフマップ社・竹内將人さんに聞いてみた。
専門学生は「中小企業志向」その理由は?
専門学校生の就職志向には、大学生と異なる特徴がある。同社の調査(2015年)によると、彼らは「中小企業志向」が強く、希望する会社の規模で一番多かった回答は「50人~100人」(20.8%)、次いで「50人未満」(19.9%)だった。
一方で、専門学生の78.4%が「就職活動に不安」を抱いており、その理由は「自分に合う企業がどこか分からない」が90.8%と最多。大企業志向はないが、得られる情報が少なく「自分に合う企業」を判断できない状態にある。
「専門学生はエリート志向が強くないと感じています。企業選択軸として自分の好きなことができる企業かどうか、休暇がきちんと取れるかどうかなど、自分に合った企業を選びたいと思っています。ただ、専門学生向けのそうした情報は少ないのが課題でした」(竹内さん)
大手の就職サイトでは、中小企業の情報が埋もれがち。彼らが志望する会社を膨大な情報の中から探し出せる専門学生は少ない。それをサポートする学校側も、少ない職員で多くの求人をさばくことには限界があった。
その結果、ITスキルはあるのに「自分に合った企業」が見つけきれない学生が増え、企業側も学生の応募がないために、自社にマッチングする人材を採用できないという課題が発生していたのだ。
採用意欲が旺盛「その場で内定」も
2015年度版の中小企業白書では、必要な人材を「十分確保できている」と回答した企業はわずか6.7%に留まっている。「確保していない」「確保できていない」をあわせると56.3%で、半数以上の中小企業は人材不足を感じている。
WorKuruは、そうした企業が専門学生に直接「面接オファー」を出せるサイトだ。同サイトには主にエンジニア、デザイナー、プランナーの卵であるIT系専門学生約2000人の登録がある。
「15年度卒からベータ版としてスタートしましたが、その会社のエース級になるようなエンジニアが採用できたという企業もあります。16年度卒では専門学校での企業プレゼンや地方での少人数セミナーなど、学生が企業と接触できる機会をさらに増やしています」(竹内さん)
特に今年は企業の採用意欲が強く、関西で行った3日間のセミナーでは約10人の専門学生が「その場で内定」を得た。
中小企業志向が強い専門学生らしく、時期が後ろ倒しになった大企業の選考を見据えて内定を保留する学生もあまりいない。納得するまでコミュニケーションを取る企業も多く、内定の承諾率も高いのだと竹内さんは話す。
「今後も、専門学生や学校自体の強みが、より明確に分かるようサイトを改良していきます。これによって、企業は自社に合う専門学生にオファーしやすくなり、学生も志向に合った企業からオファーを貰いやすくなる。説明会などウェブ以外の接点も増やしながら、企業と学生双方にとってスムーズな活動を支援できればと思っています」
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