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VAMPS、でんぱ組.inc、藍井エイル……アーティスト海外展開が広がる背景は?

2015年06月02日 15:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『JAPAN EXPO』公式HP

 7月2日から5日の4日間、フランス・パリのVillepinte Exhibition Centerで開催される『Japan Expo』に、VAMPS、でんぱ組.inc、藍井エイルらの出演が決定した。


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 数日間にわたって日本のマンガやファッション、音楽などを紹介する同イベント。音楽のコーナーでは毎年日本から有名アーティストが多く遠征し、海外ファンへ向けてライブを繰り広げるというものだ。近年はこうしたジャパンカルチャーの普及を目的としたイベントに、アイドルやアニソン歌手、ヴィジュアル系など、海外で人気のジャンルを武器にするアーティストが数多く登場。そこで知名度をより広げ、ワールドツアーを成功させるケースが増えている。


 先に挙げた3組は、ワールドツアーを積極的に行ってきた代表例だ。VAMPSは2010年のアジア・ヨーロッパ・北米・南米を横断したワールドツアーに始まり、2015年春にはニューヨークでヘッドラインショーを行った。でんぱ組.incは今年初夏から秋口にかけ、約7か国を回ることが決定している。藍井エイルも7月よりワールドツアー『Eir Aoi WORLD TOUR 2015 -ROCK THE WORLD!-』で、パリ、ロンドン、サンフランシスコ、アトランタ、シンガポール、台北、香港の7都市でライブを行うことを発表している。


 そもそもこの流れは何を起点に始まり、どう発展してきたのか。音楽コンシェルジュのふくりゅう氏は、これらのアーティストが世界へ急速に広まった背景についてこう語る。


「近年、アメリカやフランス、イギリス、アジア地域などで、日本人アーティストが出演する大規模イベントが定番化しているのは、世界中でインターネット動画サービス・YouTubeが普及した影響が大きいと思います。たとえば、X JAPANのYOSHIKI氏は、X JAPANは1997年の解散後、活動休止中に海外ファンが増えた背景のひとつに、ライブ映像やミュージックビデオの閲覧によるYouTubeでの拡散を挙げています。また、きゃりーぱみゅぱみゅが海外で人気になったきっかけも、リンプ・ビズキットのフレッド・ダーストやケイティ・ペリーなど海外アーティストがYouTubeのURLをTwitterで拡散した流れが大きく、そこにKAWAIIカルチャーとの掛け算によって新たな市場が生まれたのだと思います」


 ネットを通じたファン層の広がりが下地となり、各国でのイベント出演、さらにはワールドツアーへと発展したという見立てだ。続けて、同氏は海外イベントの出演によってアーティストが得る付加価値をこう解説する。


「海外エキスポはアーティストにとって、動画や配信ビジネスはもちろん、単独ライブへの集客など、良いプロモーションの場となっています。ファンにとっても海外での人気の動向は気になり、国内へのニュースなどのフィードバックによってブランディング的な相乗効果が認められることでしょう」


 また、同氏は音楽視聴メディアの発展に伴い、海外で活躍するアーティスト像にも変化が生まれつつあると語る。


「7月にフランス・パリで開催される人気イベント『Japan Expo』に出演するBACK-ON、藍井エイルらは、海外でも人気な『機動戦士ガンダム』シリーズなど、アニメ主題歌での起用をきっかけに知名度を高めています。ちなみに、海外活動において最近気になるアーティストはmoumoonです。昨年出演した『Japan Expo』でのフランス人気を皮切りに、今年はオースティンSXSWでのライブ、先日はパスピエと対バンでイギリス公演を成功させています。面白いのは、アニメやヴィジュアル系、アイドル文化でもなく、海外のインディーロックと並列で楽しめる音楽性のクオリティの高さが評価されていることに注目したい。日本アーティストの海外エキスポ系イベントへの出演は、流通の問題もあってか、すぐには作品セールスへは反映されません。しかし、今後サブスクリプション・サービスの国境を越えた世界的な普及が進めば、リアルな現場における良きアピールの場となることでしょう」


 現在は特定ジャンル中心に盛り上がる海外進出であるが、今後はより多様なジャンル・アーティストが活躍の場を広げそうだ。(宮澤紀)