2015年06月02日 13:41 弁護士ドットコム
与党・自民党の教育再生実行本部は5月中旬、小中高校の「教員免許」の国家資格化などを盛り込んだ提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。
【関連記事:18歳男子と16歳女子 「高校生カップル」の性交渉は「条例違反」になる?】
提言によれば、大学で教職課程を修了した後、「全国共通の国家試験」を受験。合格者は1~2年の研修を経て、国が「教員免許」を授与することになる。その後、勤務希望地の自治体で「採用面接」を受ける流れを想定しているそうだ。
現在は、大学の教職課程で所定の教科・科目の単位を取得すると、大学所在地の各都道府県の教育委員会が「教員免許」を授与。その後、勤務を希望する自治体での「採用試験」を受ける流れとなっている。
この提言に対して、ネット上では「教員は子供の人生に影響を与える存在なのだから、最低限、国家資格くらいは課していい」と肯定する声もある一方、「国家による教育への干渉につながる」「免許を取るまでの手間が増えると、志望者が減りそう」といった批判的な意見も少なくなかった。
教員免許の国家資格化は、どのようなメリット・デメリットがあると考えられるのか。宮島繁成弁護士に意見を聞いた。
「30年ほど前、法学部に在籍しながら、教職課程をとり、教育実習にも行って中学校と高校の社会科の教員免許をもらいました。別の進路に進んだために、教員免許を生かす機会はありませんでしたが・・・」
そう明かした宮島弁護士は、教員免許の国家資格化をどうみているのか。
「教員免許の国家資格化の詳細はまだよくわからないため、報道を元にしたコメントになります。まず、メリットとしては、報道にもあるように、国家資格化による教員の地位の向上と、研修による資質向上が考えられます」
いっぽう、「いくつかデメリットも考えられます」と宮島弁護士は指摘する。
「免許を与える際に、学生時代や研修時代の活動にかかわる部分が、どのように評価されるのでしょうか。また、客観的で公平な適性判断が可能なのか、志願者の萎縮、ひいては、国の教育への介入強化につながらないかという点も懸念されます。
実際に働き出すまでの期間が長くなりそうなので、研修中の財源が確保されていないと、研修者の収入や生活に影響が出てくるでしょう」
宮島弁護士は「さらに問題なのは、実際に教員として働けるのか、将来の予測が立たないことです」と指摘する。
「教員免許は免許を取得しても、学校に入らなければ使えません。しかし、時間とコストをかけて免許を取っても、各教育委員会が、どのくらいの人数を教員として採用するのかは、その年ごとに変わるものです。同じ国家資格でも、いざとなれば独立開業できる医師や弁護士とは、ここが違うところです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会、同いじめ問題対策プロジェクトチーム。その他、スポーツ問題や法教育にも取り組んでいる。
事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com