就活時期の繰り下げで懸念されているのが、大手企業の採用選考が本格化する8月の「真夏の暑さ対策」だ。特にスーツを着慣れない就活生にとって、真っ黒なリクルートスーツの上下を着てネクタイを締めるのが、かなりの苦痛だろう。
選考を行う会社でもクールビズがかなり浸透しており、就活生だけに暑い服装を強いる必然性はなくなった。そこで「わが社の選考には軽装で来てください」とアピールする企業が集まって、宣言をすることに。それが「就活クールビズ宣言プロジェクト」だ。
「画一的な就活の象徴」を脱ごうと呼びかけ
プロジェクトは大阪市の人材ベンチャー企業アイプラグが呼びかけ、日産自動車やコクヨ、カゴメ、サイボウズなどの人気企業を含む82社が賛同している。200社の協賛を目指して、サイトで専用バナーやイメージ素材の提供をしている。
賛同企業は、「ノーネクタイスタイル」「ノージャケットスタイル」「ビジカジスタイル」「私服スタイル」の4つから1つを選んで提示。日産自動車やコクヨはビジカジ、カゴメは私服、NTTデータアイはノーネクタイとさまざまだが、ネクタイ着用不要という点は共通している。プロジェクトのウェブサイトには、こんな言葉が並んでいる。
「時代は、明らかに『画一』から『多様』にと向かっています。『就活クールビズ』を企業が宣言し、画一的な従来型の就活の象徴である『リクルートスーツ』を脱ぐことは、学生の多様化を促し、より良い企業と学生とのマッチングを実現することにつながると信じています」
プロジェクトが4月30日に都内で行ったイベントでは、協賛企業の担当者やモデルを務めた学生たちが、就活クールビズに対する思いを話した。コクヨの担当者によると、面接でのスーツ着用には元々こだわりがなかったという。
特別協賛している写真素材サイトのピクスタも、「面接時は普段着でどうぞ」と伝えていた。自社のサイトで「就活クールビズ」のイメージ素材を提供することで、社会にスタイルを浸透させたいと考えたという。
疑心暗鬼な学生たち「服装で間違うのが一番怖い」
ただし、就活生からは、さまざまな理由で「やっぱりスーツを着てしまうかも」という声が聞かれた。プロジェクトのサイトでモデルを務めた学生からは、「このスタイルを是非広めて欲しい」「宣言企業が増えて企業も学生も楽になれば」と声があがる一方で、
「企業によっては私服OK、リクルートスーツじゃなくていいと言う企業は今もあるが、いくつかの企業が言っているだけだと、どこまで本当なのか不安」
「服装で間違うのが一番怖い」
という声も聞かれた。これに対し、コクヨの大島広さんは「服装などに左右されず、自分の将来をしっかり考えて話し、伝えることに注力してほしい」と語っている。疑心暗鬼になる気持ちも分かるが、今年の真夏の就活は服装よりも大事なことに力を注いでみてはどうだろうか。
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