「キャリコネ」は働きやすい職場を増やすため、現役従業員やOBOGが企業の年収・評判を書き込める口コミデータベースと内部通報窓口を設置している。ここ最近増えているのが「社会福祉関係団体」のずさんな経営実態に関する告発だ。給付金の不正受給や経費の私的流用、違法労働の強要やハラスメントなど悪質なものも少なくない。
そこで編集部は社外のジャーナリストと協力し、寄せられた内部通報の追加取材を行い、信憑性が高いとみなしたケースを数回に分けて公開することにした。従業員側の一方的な声ではあるが、似通った内容もかなりあり、業界の構造的な問題が垣間見られる。(特別取材班)
市の遅い対応を問題視し、県が立入検査を実施
千葉県の某市で、障がい者福祉施設を運営する特定非営利活動法人。最近までここに勤務していた会田さん(仮名)の話を聞くと、理事長のA氏(女性)には経営者としての資質に大きな問題があると思えてならない。
会田さんは、この法人には数え切れないほどの問題があるとしながら、特に許しがたい問題について話してくれた。最初に明かされたのは「利用者に対するひどいセクハラ」だ。
理事長A氏は、夫を事務員として雇用していたが、この夫が利用者である障がい者の女性たちに、胸を触ったりキスをしたりするなどの性的虐待を繰り返していたという。
利用者やその親から、会田さんが直接相談を受けたため発覚。実態をA氏に訴えたところ、「単に可愛がっているんでしょ、という程度の認識」で、利用者に謝罪したり夫に注意したりするなどの対策はまったく取られなかった。
会田さんは所管の市担当者に相談するが、アクションはない。しびれを切らして県に通報すると「市の遅い対応を問題視して」(会田氏)、施設への立入検査を実施。夫はすぐに退職した。会田さんは行政の限界について、こんな懸念を抱いている。
「実は理事長のA氏は、市職員のOG。制度について熟知しているので、かなわないと感じることも多い。現役担当者は先輩に対し、強く指導できないとは思いたくないのですが…」
娘とその内縁の夫も雇用「家族にお金が回るシステム」
A氏は夫のほか、娘も施設職員として雇用している。月に3日しか出勤していないが、フルタイムの一般職員と同等の給与が支払われている。そのうえ、密かに多額の交通費が支給されていた。
他の職員が残業代をカットされながら薄給で働いているのに、これではあまりにもバランスを欠く。会田さんはA氏に見直しを掛け合ったところ、「あの娘は特別扱いだから問題ないのよ」と門前払いだったという。
さらにA氏は、娘の内縁の夫を副理事長に据え、彼の持ち物である施設2か所と送迎車数台に対し、割高の賃貸料やリース料を支払っている。会田さんは「家族にうまくお金が回るシステムになっているんですよね」と憤る。
民間のオーナー企業であれば、こんな極端な身内びいきも許されるかもしれない。しかし特定非営利活動法人には給付金が投入され、民間企業にはない税制上の優遇措置もある。そんな公共性の高い法人を、ここまで私物化してよいはずがない。
なお、市の障害福祉課に取材したところ、この施設について「通知義務のある行政処分を下すには至っていません。それ以上は守秘義務があるのでお答えできないのですが…」と回答を寄せてくれた。何らかの指導を実際に行ったことを暗に認めた、と受け取ってよいだろう。
パワハラで退職。同時期に10人以上の職員も辞めた
結局A氏はセクハラ被害者に謝罪もせず、A氏の夫は退職後も利用者と接点を持ち、性的虐待を続けているという。止めさせようとした会田さんは執拗なパワハラを受けて、退職に追い込まれてしまった。同時期に10人以上の職員も退職したそうだ。
退職の際にも、複数の職員に対し「私のやり方が気に入らないのなら、辞めてもらっても構わないのよ」と言い、退職勧奨を認めながら、実際の離職票には「自己都合」と記入されていた。
大量退職によって仕事が回らなくなっている施設では、自立支援の名の下にオムツを替えないなど十分なサービスが行えていない。指定基準を満たした職員配置もできていないはずだが、いまも給付金を得ながら運営を続けている。
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