ミシガン州デトロイトにあるベルアイルパークで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズ。ダブルヘッダーの2戦目となる第8戦決勝が5月31日に行われ、セバスチャン・ブルデー(KVSH)が佐藤琢磨(AJフォイト)とのスプリントバトルを制し、今季初勝利を飾った。琢磨は2位に入り2年ぶりの表彰台を獲得している。
日曜日のデトロイトは朝から寒かった。雨が降り、気温は摂氏10度しかなく、風まで吹いていた。午後になっても寒さは変わらず、ファイアストンのウエットタイヤが性能を発揮できるギリギリの路面温度でレースは始まった。
今日の午前中に予定されていた予選は雨のためキャンセル。スターティンググリッドはポイント順となった。
スタートではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がフロントロー外側からトップに出た。しかし、ポイントリーダーでポールシッターのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)が3周目にパスし返し、そこからは大きなリードを築き上げた。
もうモントーヤの独走でレースは終るかと思われた。パワーがステアリングのトラブルで27周目に予定外のピットインを行ったことで、その様相は更に強まった。しかし、寒さの中、路面コンディションが変わり続けるレースは、終盤戦に入ってから大きくシフトした。
モントーヤは最後のピットストップでフロントウイングを立てるセッティング変更を施したが、その作業に手間どってスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)とセバスチャン・ブルデーに先行を許した。
ディクソンはピットが雨を予想したのか、誰もがスリックに換える中でウエットタイヤを装着。読みは完全に外れて後退を余儀なくされ、最後はチームメイトのチャーリー・キンボールが不用意なライン変更をして接触、リタイアに追い込まれた。
これでトップはブルデーのものとなった。昨日に続いてフルコースコーションが続出したため、レースは70周に届かず、2時間でゴールが迎えられることとなった。
ブルデーが逃げ、モントーヤが追う。しかし、度重なるコーションでリスタートが繰り返されると、15番手スタートから3番手にまで浮上して来ていた佐藤琢磨がアタック。モントーヤの攻略に成功し、ブルデーに襲いかかった。
最後にはレースがグリーン下でゴールとなるよう赤旗まで出され、ゴールまで3周で切られたリスタートの後、ブルデーは琢磨を振り切って今シーズン初勝利。CARTシリーズからの通算33勝目を挙げた。
「最後は琢磨のアタックを警戒していた。彼は自ら掲げるモットーの通りにアタックしてくると思った。本当に精神的にクタクタになるレースだっただけに、こうして勝てて本当に嬉しい。オール・オア・ナッシングの作戦でもあった」とブルデーは語った。
琢磨は2013年のブラジルでの2位以来となる久しぶりの表彰台となった。
「長いレースだったけど、凄い戦いになっていたでしょう?」と琢磨は久しぶりの表彰台フィニッシュを喜んでいた。「何度リスタートがあったか覚えてないけど、最後の方のリスタートで随分順位を上げることができた。モントーヤを抜いたのは、先頭のブルデーがアクセルを戻してブレーキを踏まなくちゃならなかったため。僕も踏んだけど、モントーヤをパスできた」
「最後のリスタートでは、そういうこともあったので、ブルデーをパスしてやりたかったけど、スピードをコントロールしているトップのドライバーを、短いストレートの前のキンクまででパスするのは本当に難しい。チームのためにも今日の2位はいい結果でしょう。クルーたちは本当に頑張ってきてくれているので、この調子でシーズンの残りは行きたいですね」と琢磨は話した。
3位はグラハム・レイホール(RLLR)。今季3回目の表彰台で、ポイントスタンディングでエリオ・カストロネベスを1点差ながら抜いて4番手に浮上した。
パワーはゴールを目前にしてトリスタン・ボーティエ(デイル・コイン・レーシング)と接触しスピン。チームメイトのエリオ・カストロネベスを巻き込み、クラッシュしてレースを終えた。リザルトは18位。カストロネベスは19位。
モントーヤはゴールを目前に燃費の苦しさもあって一気に後退。10位でのゴールとなった。それでも、ランキングの順位が近いドライバーたちが軒並みリタイアしたため、ポイントリードを保ち、しかも、パワーとの差は21点に広がった。
「いいマシンとできていた。特に雨の中で速かった。10位でのゴールとはなったが、ウィル・パワーとのポイント差は広げることができた」とモントーヤは語っていた。
「ステアリングのトラブルで作戦はみんなと違うものになった。そこからはリスタートで順位を上げていった。最後にクラッシュしたのは残念だった。ガッカリしている。しかし、テキサスで好結果を残すつもりだ」とパワーは気持ちを切り替えていた。
ホンダは敵地デトロイトでの2レース制覇こそ逃したが、今日もふたりが表彰台に上り、2位から9位までトップ10に8人を食い込ませた。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)