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「牛たんねぎし」の出店は年1軒のスローペース 社長曰く「人の成長を待っている」

2015年05月31日 08:00  キャリコネニュース

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業績を悪化させる外食業界が少なくない中、「現場に任せる経営」でサービス向上と人材確保を実現している店がある。2015年5月28日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、ねぎしフードサービスの社長・根岸榮治氏に経営術を聞いた。

東京・横浜に34店舗を構え、坪当たりの月売上高2000万円で1位。年商56億円と右肩上がりで成長を続けている「牛たん専門店・ねぎし」を運営。そんな根岸社長だが、かつて「店舗スタッフ全員に逃げられた」苦い経験があるという。

他社からの転職組「やりがいが圧倒的に違う」

ランチ時、「ねぎし」には1500円前後の牛たん麦めし定食目当てのサラリーマンが大行列をつくる。決して安くはないが「自分へのご褒美」「やわらかくて肉厚。この値段で食べられる店はそうない」と大好評だ。

人気の秘密はおいしい牛タンだけでなく、「親切」をモットーにした高い接客力も魅力だ。客に「感動した」と言わせる行き届いたサービスぶりで、接客の感想が書かれたアンケートハガキは毎月1500通。内容を全店舗で共有し、名指しで誉められた従業員には表彰も行う。

なぜそこまで親切にできるのか。実は、ねぎしの具体的な経営戦略を立てているのは、各店舗の店長たちだ。他店舗の清潔度を審査し合う「クレンリネスコンテスト」や「焼士(やきし)」という制度は、現場の店長の発案。肉汁たっぷりでやわらかい絶妙の焼き加減は、ベテラン店長たちの審査に合格した焼士の技だ。

中野店の店長・蓮沼広則さんは、他の大手外食チェーンの社員だったが、この仕組みに惹かれ転職してきた。現場に任せるねぎしの魅力を、蓮沼さんはこう語る。

「今までの会社だと、トップダウンで完全に上から『こうしなさい』と言われてからやる。でもねぎしの場合は自分たちの考えでやるから、他人事じゃなくて『我が事』になる。責任も重いですが、やりがいが圧倒的に違います」

短期的な利益ばかり追求していた経営を大転換

1981年創業34年目のねぎしは、今年34店舗目を横浜にオープン。1年に1店舗というスローペースに取材スタッフが疑問を投げかけると、根岸社長はこだわりをこう言い切った。

「店の数じゃない。良い店を作って地域に役立てる。人の成長を待って出店している。根本は人。人しかいない。人に始まって人に終わるんです」

くどいほどに「人」にこだわる理由は、過去の苦い経験にある。牛たん専門店を出す前、東京で流行った業態を地方に持ってきては飲食店を開いていた根岸社長は、ある時スタッフ全員が出勤してこないという事態に陥る。同じ業態のライバル店に、全員が引き抜かれていたのだ。

根岸社長は、短期的な利益ばかり追求し、人材に目を向けなかった自らの落ち度を反省し、方針を大転換。人を大切にする地道な経営方針へと舵を切った。

「自分で判断して実行する過程で、人は成長する」

村上龍が「人は信じてあげた方がより能力を発揮できる。でもそれはすごく勇気がいることですよね?命令するほうが楽ですもん」と感想を漏らすと、根岸社長は考えを語った。

「人は任せると、自分で創意工夫します。努力し、一生懸命になる。自分で考えて判断して実行するときが一番うれしいですし。その過程で確実に人は成長します。『人の成長』が先にあって、会社の成長につながるんです」

根岸社長は「人が」と従業員のことを言ったようだが、まず社長自身が成長したことで良い店舗・会社づくりができたのだ。現場を信じることは、「現場に丸投げ」とは違う。やはりトップの高い志が働く人に伝わることで、企業はうまく回っていくものだと感じた。(ライター:okei)

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