2015年05月30日 09:31 弁護士ドットコム
妻の不倫が発覚。その相手は自分の部下だった——。そんなショッキングな経験をした男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。
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相談者と妻、その不倫相手である部下の3人は、同じ会社で働いている。不倫発覚後、相談者が話をして関係を解消させたが、その後も2人きりで話していたりと、いっこうに反省の色が見られない。
怒り心頭の相談者は、部下に対して「職場の飲み会では顔を合わせたくないし、妻とも会ってほしくない」「会社を辞めた方がいいのではないか?」と激しい言葉をぶつけてしまった。
しかし冷静に考えてみれば、言葉をぶつけた相手は自分の部下。「顔を合わせたくない」「会社を辞めろ」という発言は、パワハラなのではないか・・・と相談者は心配している。感情的になるのも無理はない気もするが、こうした場合でも、パワハラになってしまうのだろうか。労働問題にくわしい竹之内洋人弁護士に聞いた。
「一般的にパワハラとは、上司と部下といった職場での優位性を背景に、精神的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為をさします。パワハラによって被害者の名誉やプライバシーといった人格権を侵害し、民法上の『不法行為』に該当すれば、慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
もっとも、『不法行為』に該当するというには、慰謝料を支払わせるだけの社会的不相当性や精神的苦痛の大きさが必要です」
竹之内弁護士はこのように説明する。今回のケースはパワハラにあたるのか?
「本件では、上司が部下に『顔を合わせたくない』『会社を辞めた方がいい』と言ったわけです。上司と部下という関係からすれば不適切な発言ですが、1度限りであることと、当の部下が妻の不倫相手という事情を考慮すれば、不法行為とまではいえないでしょう。
もっとも、このような発言を繰り返したり、悪意をぶつけるような態度を取り続ければ、いかに背景事情があろうとも、不法行為になる可能性が出てきます」
とはいえ、妻と関係を持った部下が近くにいては、心を穏やかに保ち続けるのは難しそうだ。
「そうですね。常に感情を切り離して、自分を律して行動するのは、なかなか難しいと思います。話しにくいこととは思いますが、人事権者に事情を伝えて、お互いに接触しないような部署への異動措置を早期に取ってもらうほうがいいように思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/