2015年05月29日 16:52 弁護士ドットコム
夫婦が離婚するときには、二人の「共有財産」をめぐるバトルが繰り広げられることが少なくないが、同棲解消の場合も、同じようなトラブルが起こるようだ。同棲相手の浮気がきっかけで破局したという女性から「使っていた家具は、私と彼氏、どちらのものになるのでしょうか?」という質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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彼のほうは、同居していた家から、自分の持ち物を持って出て行った。家に残されたのは、彼の友人から贈られた「同棲祝い」の家具。相談者の女性は、その友人と面識があり、プレゼントのお礼をしたときには「2人でこれから頑張りなよ!」と言われたそうだ。
同居解消後、彼に貸したお金が返ってこなくなり、家具を売ってチャラにしたいと考え始めた。しかし、彼氏は「家具は俺の友達が買ったものだから、俺の物だ。売るなんて許せない」と譲らない。一方の女性は「2人へのプレゼント」だから、売っても問題ないと考えている。
はたして、どう考えればいいのか? 増田勝洋弁護士に聞いた。
「家具の贈り主が、相談者ではなく『彼氏だけ』に対して、家具をあげたのであれば、所有者は彼氏であると考えられます。その場合、相談者がそれらの家具を勝手に売却することはできません。
しかし、本事例では、相談者も友人と面識があり、家具をもらって2人でお礼を言いに行ったところ、『2人でこれから頑張りなよ!』と言われています。
したがって、友人としては、彼氏だけでなく、『2人』にお祝いとして家具を贈与したのだと解釈する余地も十分あります。その場合、それらの家具は彼氏と相談者の共有物となります」
増田弁護士はこのように説明する。2人の共有物なら、相談者が家具を売却してもいいのだろうか?
「共有物だからといって、相談者が家具を勝手に売却することはできません。なぜなら、共有ということは、彼氏の持分もあるからです。勝手に売ってしまうと、自分の持分を侵害されたということで、損害賠償請求を受ける可能性があります」
だが、相談者としては、彼氏がなかなか借金を返してくれないため、家具を売ることでチャラにするつもりだった。売却できないなら、どうすればいいのか?
「借金を返済するか、あるいは、返済の代わりに家具を相談者に譲渡する(『代物弁済』)か、彼と話し合ってみてはいかがでしょうか。『代物弁済』とは、お金を借りた人が、返済する際に、お金ではない別のもので返すことです。共有と考えられる場合には、彼氏もそれらの家具を勝手に持ち出すことはできませんから、代物弁済の話はしやすいと思います。
話し合うべきなのは、家具が共有ではなく、彼氏の単独所有だと考えられる場合でも、同じことです。もちろん、彼氏から所有権を譲渡してもらえば、それらを売却するのは、相談者の自由です」
増田弁護士はこう話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
増田 勝洋(ますだ・かつひろ)弁護士
大阪弁護士会、司法委員会、司法修習委員会委員
著書:『事例にみる遺言の効力』(共著、執筆担当)
法律事務所の携帯電話向けサイトURL:http://masuda-law.plimo.jp
事務所名:増田法律事務所
事務所URL:http://www.masuda-law.net/