通常は捨ててしまうキャベツの外側の葉や規格外で出荷できない野菜を、なんと文房具のクレヨンにして売り出して成功しているベンチャー企業があるという。青森県上北郡で農業を営む成田さんは、笑顔で語る。
「農家としては、作ったものは再生されるというのが一番いい。捨てるのはやっぱりもったいないからね」
2015年5月26日放送の「ガイアの夜明け」は、捨てるしかなかったモノを画期的な新しい製品として生まれ変わらせる、ふたつのベンチャー企業を紹介した。
開発者は、野菜嫌いの娘を持つシングルマザー
青森市にある「mizuiro(みずいろ)」は、2014年に設立した社員4人のベンチャー企業。農家から廃棄される野菜を買い取ってクレヨンを作っている。
社長の木村尚子さん(36歳)は青森で生まれ育ち、専門学校を卒業後デザイン会社に就職。店舗のロゴやイベント会場のデザインを手がけた後、フリーのデザイナーとして独立した。野菜でクレヨンをつくることを思いついたのは3年前だ。
「面白いもの、オリジナル性の高いものを作りたいと思って。きれいな色を見たいと思った時に、野菜を並べたらきれいかなと思って」
木村さんは6年前離婚し、11歳の野菜嫌いの娘を持つシングルマザー。にんじん、ごぼう、ネギなどの野菜を原料にした「おやさいクレヨンvegetabo」(2160円)は、着色料や香料を使わず、野菜の香りがする。色は人工的な鮮やかさとは違う、落ち着いた淡い風合いだ。
去年3月に発売すると大人気となり、高級雑貨店や大手百貨店からも引き合いが来た。わずか1年で累計3万セットを売り上げ、多くの幼稚園や保育園でも使われ始めている。
おやさいクレヨンの製造を委託されているのが、1953年創業の名古屋の小さな町工場「東一文具工業所」。3代目の水谷和幸さん(33歳)は生き残りの道をこう語る。
「クレヨン会社は全国を探しても少ない。特にうちみたいな零細企業で生き残っているところは少ない。付加価値のあるものを作って生き残っていくしかない」
定年退職者が竹を使った「鮮度保持剤」を作る
東一文具工業所は、大手メーカーからの受注で安い製品を大量に製造してきたが、このクレヨンを作るようになってから売り上げが20%増えたという。廃棄野菜を生かすアイデアと技術で、農家も喜び、国内の零細企業も利益を伸ばすことができたのだ。
番組ではそのほか、放置された竹林の竹を使って青果物の鮮度保持剤「タンカフレッシュ」を開発した佐賀県のベンチャー企業「炭化(たんか)」を紹介した。
大手土木会社を定年退職した入江康雄さん(65歳)が在職中、山に積み上げられ放置された竹を頻繁に目にし、なんとか活用できないかと考えたという。
捨てられることの多い三番茶も使い、高い鮮度保持効果が物流業界から注目を集めた。今まで輸出できなかった傷みやすい葉物野菜も、海外に広く輸出できる可能性が高まった。
捨てるしかなかったモノを、人が喜ぶ役立つモノへと製品化するアイデアと努力は素晴らしい。新しいモノを消費し続けるだけでなく、環境のためにゴミの減量やリサイクルが意識される今だからこそ、より成功のチャンスがあるビジネスだと思う。(ライター:okei)
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