安倍内閣が掲げる「女性が輝く日本!」というスローガンから考えると、女性起業家の数が増えることは歓迎すべきことなのかもしれません。しかし米国では、2014年の女性の起業率は2008年のリーマンショック以前のレベルにまで落ち込んでいます。
このことは、本当に悪いことなのでしょうか。編集者のカロリーン・フェアチャイルドさんが5月19日付のLinkedIn Pulseに寄稿しています。(文:夢野響子)
「自分の会社」を創る必要性を感じなくなっている
記事によると米国では、過去20年間にわたって女性は男性よりも高い率で新規事業を立ち上げてきたそうです。2008年のリーマンショクは中小企業に大打撃を与えましたが、女性起業家たちは新しいベンチャーを立ち上げることで、それに対抗しました。
アナリストたちは、女性の起業の増加は雇用の創出を後押しし、経済を強化する好ましいことだと見てきました。したがって彼らは、今回の女性起業の減少は経済的によくないことだと批評するかもしれません。
しかし、そもそも「女性が起業する理由」は何なのか。ペイパルの調査によると、米国の女性起業家の半数以上が、おもに「ワーク・ライフ・バランスを確保するため」に起業しています。つまり、企業文化の制約によって家族とキャリアの両立ができない女性が、起業の道を選んでいるのです。
現在、米国企業は才能ある女性のために、柔軟な労働形態を作り出すことに成功しつつあります。これにより、女性が自分の会社を創る必要性を感じなくなってきている。女性の起業家減少の背景には、このような状況もあるようです。
業績好調企業は「優秀な女性人材集め」に躍起
女性が働きやすい職場改革をリードしているのが、シリコンバレーのハイテク企業です。長い有給出産休暇やその他の政策で、働く人たちが自分の希望にあったキャリアを築くことを可能にしています。
このことは全米企業売上高ランキング「フォーチュン500」に挙げられているAmerican Expressや Ciscoにも言えます。会社がチーフ・ダイバーシティ・オフィサーを置き、多様な労働者のニーズを考慮することで、多くの女性が企業で成功できると感じ始めています。
CEOの中には、すでに男女同一賃金を保証している者もいます。10人中4人の女性が、同一賃金は職場の第一問題だと考えており(Gallup社調べ)、これは才能ある女性を企業にとどめるために不可欠な要因になっています。
女性起業家の減少は、女性が起業することの困難とも関係がありそうです。2011年から2013年に女性起業家に対して投資したベンチャーキャピタルファンドは、わずか3%。1996年以降に起業した20歳から34歳までの米国女性のうち、およそ27%が不成功に終わっています。
一般に、起業数の減少は警告すべきことですが、ここでは起業家が自分のベンチャーを立ち上げる理由を考慮することが重要です。データは、多くの女性の起業は意識的な選択ではなく、むしろ必要から生まれているものであることを示しています。
(出典)Fewer Women Starting Businesses May Not Be All Bad(LinkedIn)
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