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【今宮純】モナコGPドライバー採点&短評

2015年05月28日 14:20  AUTOSPORT web

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勝利を逃したハミルトンだが、当採点では最高得点
今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第6戦 モナコGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレイを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)

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☆ フェリペ・ナッセ
 序盤の相手がフェルナンド・アロンソで終盤はジェンソン・バトン、気がつけば新人ベストリザルトの9位ゴール。6戦すべて完走、3度目の入賞でチームのランキング5位キープに貢献だ。初日を見る限りザウバーはブレーキングでふらつき、それが尾を引き加速姿勢も不安定。入賞圏は無理と思われたが、その状況からよく這いあがった。

☆ パストール・マルドナド
 FP1から良いリズム、ずっとロマン・グロージャンに先行し今年ベストグリッド8位。フロントタイヤ発熱をうながす工夫が見てとれた。久々の入賞チャンス、ところがまたもトラブル(ハイドロ系ブレーキ)。6戦5回リタイアは、ちょっと“異常”だ。

☆☆ セルジオ・ペレス
 リヤタイヤの摩耗を抑えるのが彼の長所、チームメイト以上と言われてきた。それがロングラン・ハイペースを可能にしている。みなタイヤのケアに苦労した週末、予選7位、決勝7位はVJM08の現有戦力でまさに“金星”で☆ふたつ。

☆☆ マックス・フェルスタッペン
 グロージャンとの接触事故で各方面からバッシング(?)された17歳。審査委員会の判定は、とても厳しい重罪。チーム側は受けいれたが、あのプレーが“無謀”で“幼い”行動とは思えない(接触前、あちこちで加減速時に相手がトリッキーで老獪なラインをとるのに冷静に反応している)。クラッシュ・リタイアで体と心に痛手を負ったうえ、さらにペナルティポイント2は戒めの判定か。注視したいのはレース中にセクター1最速タイムを記録、1コーナー~カジノの高速エリアでメルセデスを上回った。ずば抜けた“全開率”である。

☆☆☆ ダニエル・リカルド
 これが自身2度目の最速ラップ、猛追する74周目に出しきった。スーパーソフトへ交換、果敢にキミ・ライコネンをミラボーで抜き、ダニール・クビアトに譲ってもらい3位ルイス・ハミルトンに挑んだ。0.546秒差まで迫ったものの、あきらめて最終ラップで譲り返す「チームワーク精神」。この連携プレイにレッドブルふたり、イニシャルD&Dの絆を見た。

☆☆☆ ダニール・クビアト
 モナコでドライバビリティ改善に成功したルノー・パワーユニットが、彼の滑らかなアクセリングから、はっきり見てとれた。首脳陣からプレッシャーをかけられていたがFP2ウエット路面で最速1分33秒台(!)。レースではスタートを決めてリカルドの前へ、チーム指示に従い一度は後ろへ、そしてまた前へ。25戦目の自己ベスト4位。

☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
 モナコGPに連勝するには、レース運も必要だ。「ハミルトン・ピット事件」によって抜くことなく逆転の幸運を授かると、すでに40周近く走ったソフトタイヤで1分18秒台ラストスパート。集中力が漲っていた。

☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.
 抜けないモナコでも「挽回レース記録」がいくつかある。2010年アロンソはピットスタートから6位、2008年ベッテルは19位から5位、2006年シューマッハは22位から5位。車重検査違反によるペナルティを喫してピットスタートとなった彼は12周目にソフトタイヤへ交換後、66周の超ロングスティントをカバー。今年の新人のなかでタイヤマネージメントの持ち味が目立つ。予選Q3アタック8位も、冷えたタイヤのグリップを巧く引き出したからだ。

☆☆☆☆ ジェンソン・バトン
 パワーというよりもドライバビリティが求められるモナコに備え、スペインGPアフター・テストで精力的に開発。その成果が実った。プールサイドで見ていてMP4-30の挙動はスムーズに映り、ふたりともコントロールに苦心する様子はなかった。スタート後のマセネでニコ・ヒュルケンベルグの前に出たバトン、ミラボーで接触したアロンソ、これが分かれ目。他よりも燃費特性上やや重い状態でスタートせざるをえなかったが順位キープ。けして楽なレースではなく体力、気力、知力を出しきった8位だ。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 終盤リスタートで見せた対ハミルトン・バトルがハイライト、グリップ感がない状態ながら各コーナーで防戦。セクタースピードが伸びるのを活かす走法によって2位を守りきった。フリー走行中にライコネンとの違いを感じたことがひとつ、低速コーナーのクリッピングポイント手前で細かくステアリングを切り重ねてフロントを発熱させていた。

☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 美しいポールポジション・ラップ、ひとことに尽きる。Q2までポケットに隠していたのかQ3ではセクター1も2も3も“0.2秒”縮めた。1分15秒864から1分15秒098へ、完璧な速さだった。悲運のピットストップ事件によって3位へ下落後、自暴自棄に陥らず耐えた。無理にベッテルにしかけても接触かスピン、ペナルティもありえる。「我慢の15点」、これが今シーズンの運命決定ポイントになるかもしれない──。