2015年05月27日 16:02 弁護士ドットコム
改正金融商品取引法と施行令が5月29日に施行され、株式市場に上場していないベンチャー企業などへの「株式投資」をネットを通じて募ることができるようになる。新規企業や成長企業への資金供給を促進することが狙いだ。
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ただ、無制限に解禁されるわけではない。投資家を保護するために、1人の投資家が1つの企業に投資できる額は年間50万円までで、資金を募る企業側が1年間に募集できる総額は1億円未満に制限されている。ネット上で不特定多数から少額投資を募る「クラウドファンディング」の形になっているのだ。
ニュースアプリ「NewsPicks」のコメント欄では、この改正について「資金調達の多様化は歓迎」といった肯定的な意見がある一方、「情報量が少なく、経営参画も出来ず、流動性もない未公開会社の株式投資に個人を誘導するのは如何なものだろう」と不安視する声も少なからず寄せられていた。
そもそも、未上場の株式への投資は、これまでなぜ制限されていたのだろうか。今回の規制緩和は歓迎すべきなのだろうか。金融商品取引法にくわしい桑原義浩弁護士に聞いた。
「未公開株については、『上場すると株価が上がる』と偽って、価値のない未公開株を高額で購入させる詐欺商法が横行していました。
市場で流通していない未公開株は、『その価値がいくらくらいなのか』という客観的指標に欠けています。
そのため、日本証券業協会の自主規制として、『グリーンシート』と呼ばれる銘柄に限るといった取り扱いがされていました。これは、証券会社が一定の審査を行い、日本証券業協会に届け出たうえで、その証券会社が継続的に売り気配、買い気配を提示している銘柄のことです」
規制を緩和しても、問題はないのだろうか。
「未公開株を少額とはいえインターネットを通じて購入できることについて、ただちに歓迎すべきとはいえません。
投資詐欺が横行している現在、ウェブサイト上に事業内容や事業計画が掲載されていても、その実態に裏付けがあるのかは、ただちに信用できません。
そういった前提でもなお投資するのか、慎重に考えた上での対応が必要だと思います」
桑原弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
桑原 義浩(くわはら・よしひろ)弁護士
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会(金融サービス部会、違法収益吐き出し部会)、九州弁護士連合会消費者問題連絡協議会副委員長、福岡県弁護士会消費者委員会、民事手続委員会等。全国証券問題研究会、全国先物取引被害研究会などに多数参加している。
事務所名:弁護士法人しらぬひ柳川事務所
事務所URL:http://www.shiranuhi-law.com/