2015年05月26日 15:01 弁護士ドットコム
「一生子どもを作らない約束で結婚して3年。嫁が突然、『そろそろ子供欲しくない?』と言いだした。あり得ない」。インターネットの掲示板に、ある男性がこんな書き込みを投稿した。
【関連記事:「JKビジネス」の闇――なぜ「普通の女子高生」まで足を踏み入れてしまうのか?】
男性とその妻は、どちらも子どもが嫌いで、結婚前から「子どもはいらない、作らない」と口頭で約束していたという。妻も「子どもを産むより2人で旅行行ったり、いい家に住んだりするほうがいいよね」と積極的に賛同していたそうだ。
しかし先日、食事中に妻が突然「子供が欲しい」と言い出した。男性が思わず「えっ、子供は作らない約束だったよね?」と聞くと、「そうだっけ?」ととぼけられたという。男性は「何をされるか怖くて、夜の夫婦生活ができない」とかなり警戒しているようだ。
男性は「妻が子どもを望んでいたら、絶対結婚しなかった」というほどに意思は固く、離婚も視野に入れているという。結婚前にした「子供は作らない」という口約束を妻が破ったことを理由に、離婚できるのだろうか。柳原桑子弁護士に聞いた。
「民法754条では、『夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる』とされています。『子供を作らない』という約束を破る趣旨のことを妻が述べているからといって、直ちに離婚できるという結論にはなりません」
柳原弁護士はこのように切り出した。ただ、今回の「約束」は、お互いの人生に大きくかかわってくる内容に思えるが、今回のケースでも難しいのだろうか。
「『子供を作るか作らないか』という問題は、夫婦の家族計画としてはもちろん、人間としての根源的な欲求や考えに関わる問題です。心変わりした場合には、夫婦でよく話し合いをする必要があるでしょう
話し合いをしても、意向が一致しなかった場合には、根本的なところで考え方の違いが埋まらず、円満な婚姻生活を維持するのが困難になったといえ、離婚理由になりうるでしょう。
ただ、それはあくまで『結婚前にした約束を破ったから』という理由で離婚できるという意味ではなく、婚姻生活の中でお互いの考え方が変化し、相容れなくなったからという点で検討するべきものと考えます」
妊娠出産には年齢もかかわってくる。相談者夫妻の場合、互いの人生のためにも、早めの決断がよいのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/