2015年05月26日 12:52 弁護士ドットコム
「傘横持ちしてる女の人にぶつかってムスメが顔を怪我してしまった」。右目の下が赤く腫れた子どもの写真とともに、そんなツイートが投稿され、話題になった。
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投稿者によると、「傘の横持ち」とは、傘の柄ではなく、本体の真ん中あたりを握りしめて持つことだそうだ。傘が横向きになっているため、腕を振りながら歩くと、傘の先端が後ろの人に当たる危険がある。特に、後ろにいるのが背の小さい子どもだと、傘の位置は、ちょうど顔のあたりになる。
今回のケースで投稿者は、混雑する駅の中で、前を歩く女性が「横持ち」していたことに気づいて距離をとっていた。だが、女性が急に立ち止まったため、後ろを歩いていた投稿者の子どもの顔に傘が当たったという。幸い、子どもは「少し赤くなっているものの大したことなさそう」とのことだ。
投稿者は「傘を横に持つと本当危ないのでやめてくださいね」と呼びかけている。ワザと人に当てたわけではなくても、こうした危険な「傘の横持ち」をした結果、相手にケガを負わせたら罪に問われるのだろうか。刑事事件にくわしい中村憲昭弁護士に聞いた。
「過失傷害罪が成立する可能性があります。過失傷害罪は、注意義務に反して人を傷つけた場合に成立する罪です。
一般的に、傘の先端は尖っていて人を傷つける可能性があります。傘を持ち運ぶ人は、他人にケガをさせないように、安全に持ち運ぶ注意義務があるといえるでしょう。
横持ちすれば前後の人に当たることは容易に想像できます。横持ちをして人にケガをさせた場合、この注意義務に違反したと評価できます。
ただ、過失傷害は、法定刑が罰金(30万円以下)か、科料(1000円~9999円)という軽い罪です。実際に処罰されることは、ほとんどないかもしれません」
罪としては、非常に軽いというわけだ。
「法定刑が軽いからと言って、問題が小さいというわけではありません。
民事訴訟で、損害賠償責任を負う可能性もあります。その場合、治療費だけでなく、慰謝料の支払いが必要な場合もあります。
今回の事例は、幸いにして大事には至りませんでしたが、傘が目に刺さっていたらと思うと背筋が凍ります。賠償で損害が回復できればいいですが、お金で回復できない損害を発生させたら、被害者だけでなく、加害者の人生も大きく変わってしまいます」
中村弁護士は「歩きたばこもそうですが、ちょっとした気配りで、他人に損害を与えないようにしたいですね」と述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中村 憲昭(なかむら・のりあき)弁護士
保険会社の代理人として交通事故案件を手掛ける。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。そのほか、離婚・相続、労働事件、医療関連訴訟なども積極的に扱う。
事務所名:中村憲昭法律事務所
事務所URL:http://www.nakanorilawoffice.com/