「一つの物事に集中しだすと他のことに目もくれず、時間を忘れてやり続ける」「自分の決めた手順に強いこだわりがあり、例外は認めない」――。そんな行動が行き過ぎている場合、その人は発達障害なのかもしれない。
発達障害は100人に1人の割合でいるとされているが、その中でも自閉症やアスペルガー症候群などの「自閉症スペクトラム障害(ASD)」は、対人関係やコミュニケーションの障害があり、興味や行動の偏りがあるという。
この障害は子どもの頃は症状が見えにくく、大人になってから症状が表に出てきやすい。5月25日のNHK「あさイチ」では、大人の障害を発症した夫の影響を受け、二次障害を引き起こしてしまった妻の話を取り上げていた。
「全部自分が悪かったと思い込み続けてきた」
番組では、結婚10年目になる主婦のとう子さん(仮名)を取材。夫がASDだと診断されたのは2年前。結婚後、夫は食卓での食器の位置を細かく指摘したり、時には実家の躾を引き合いに出して注意したりすることもあった。
夫は真面目で子育てにも熱心なため、周囲の評判は良いものの、とう子さんに対する冷たい言動は変わらないまま。次第に孤独感を抱くようになった彼女は、3年前にうつ病を発症してしまった。
きっかけは、子どもが小学校にあがり、問題行動が目立つようになったために発達障害について調べたこと。症状が夫に当てはまるのではと思い、病院で検査を受けてもらったところ、ASDと診断された。
「全部自分が悪かったとか、私がおかしいんだと言われ続けて、思い込み続けてきた」
今は自分を肯定できるような気持ちになったとう子さんだが、以前は夫への不満が募って周りにも理解されずに孤独になり、「私が悪い」のではと自分を責めてしまい、「カサンドラ状態」という二次障害を引き起こしていた。カサンドラとは、予言能力を持ちながら誰にも信じてもらえないギリシャ神話の王女の名だ。
栗原類は「早期発見」で周囲が配慮
この状態を良くするには、夫の気付きや症状の自覚が重要だという。スタジオでは夫がASDかもしれないとき、どうやって気付かせるかということが話題になった。
発達障害に詳しい医師の宮尾益知氏は、非常手段ではあるとしながら、「妻が家事をストライキしてみる」という方法を提示していた。そうすることで、妻の立場を夫に理解させるという。自分の損になるような行動が分かれば、次から行わない。
この日、スタジオゲストとして登場した栗原類は、生放送中に自身が注意欠陥障害(ADD)だと告白した。栗原がADDだと診断されたのはアメリカにいた8歳の頃。当時の担任の先生が、栗原の行動が少しおかしいと感じたため、親に診断を受けることを勧めて受診した結果、発覚したという。
「家を出る時間はここぴったしとか教室を出る時間ぴったしとか、もう水を飲まないと授業に参加しないとか、すごいこだわりがありました」
「冷蔵庫の中にお茶があって、いつもは一番真横に置いてあるんですけど、そこに置くべき場所に違うものが置いてあったら、別にいいんだけど『なんか気持ち悪い』って風な感じでつい戻しちゃうって感じがして。そういうこだわりは今でもすごくあります」
彼はそんな自身の経験を語った。音の感覚過敏もあったということだ。早期発見だったため、主治医や親が自分の弱点や、できるできないことを伝えてくれていたという。「そういう周りの環境があったからこそ、なんか今があるのかなって思いました」と話していた。
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