2015年05月25日 18:21 弁護士ドットコム
東京地裁(吉田徹裁判長)は5月25日、卒業式・入学式で「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱しなかったこと」だけを理由にして、東京都立高校を定年退職した教職員を「再雇用」しなかったことが「違法だ」とする判決を下した。2007年~09年にかけて再雇用されなかった元都立高校教職員の原告たち22人に賠償金(211万円~260万円)と利息を支払うよう、東京都に命じた。賠償金は、もし再雇用されていたら支払われていたはずの1年分の給与にあたる額。
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判決は、教職員の90%~95%が採用される再雇用制度の実態などから、教職員には再雇用されることを期待する権利(期待権)があり、その期待権は「法的保護に値する」とした。そして、都教委が「不起立」のみをもって原告たちを再雇用をしなかったことは、原告たちの期待権を「大きく侵害」し、違法だと判断した。
判決を受けて、原告たちは同日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで、”勝訴”を報告する記者会見を開いた。
原告代表の泉健二さん(68)は「私たちは君が代を斉唱することが耐えられないので、静かに座っていただけです。そのことを唯一の理由として再雇用を拒否され、職場を追われることになりました。こんなひどいことがあるものか」と裁判を起こしたきっかけを振り返った。永井栄俊さん(68)は、「採用拒否の意味は見せしめですよ」と怒りをあらわにした。
水野彰さん(66)は「僕らはもう、都立高校の教育現場に戻ることはできません。その点で悔しさは残りますが、判決はうれしかったです。明日から戦争法案が国会で審議されます。戦争法案と日の丸君が代は一体のものです。この判決が戦争法案を食い止めるきっかけになれば」と述べた。
近藤徹さん(66)は「画期的な判決です。他の裁判の状況を考えると、私たちの全面勝訴と言ってもいい内容でした。願わくは、都教委が誤りを認めて控訴を断念し、判決が確定してほしいです」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)