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TERU&HISASHI曲に見る「GLAYらしさ」とは? 52ndシングルが示すものを考える

2015年05月25日 18:21  リアルサウンド

リアルサウンド

5月25日に『HEROES / 微熱(A)girlサマー / つづれ織り~so far and yet so close~』をリリースするGLAY。

 昨年5月からメジャーデビュー20周年を祝して、シングルやアルバムのリリース、『GLAY EXPO』の10年ぶり開催、アリーナツアーと精力的な活動を展開してきたGLAY。その締めくくりを飾るにふさわしい52ndシングル『HEROES / 微熱(A)girlサマー / つづれ織り~so far and yet so close~』が5月25日にリリースされ、その数日後の5月30、31日には10年ぶりの東京ドーム公演『20th Anniversary Final GLAY in TOKYO DOME 2015 Miracle Music Hunt Forever』も開催される。


 シングル』HEROES / 微熱(A)girlサマー / つづれ織り~so far and yet so close~』にはTERU(Vo)の作詞・作曲による「HEROES」、HISASHI(G)が作詞・作曲を手掛けた「微熱(A)girlサマー」の新曲2曲に加え、10年前に発表されファンから今なお愛され続けているバラードナンバー「つづれ織り~so far and yet so close~」が「つづれ織り~so far and yet so close~〈Live from Miracle Music Hunt 2014-2015〉」として収録される。既発曲の「つづれ織り~so far and yet so close~」は別として、今作のために制作された新曲2曲がどちらもバンドのメインソングライターであるTAKURO(G)作の楽曲ではない点は非常に興味深いといえる。


 そもそもこの1年間に発表されたシングル3作では、表題曲をTERUが手がけているという点がかなり面白いと思うのだ。昨年7月リリースの『BLEEZE~G4・III~』ではオープニングを飾る「BLEEZE」を書き下ろし(ちなみにこれがTERUにとって初のシングル表題曲となる)、続く10月発売の『百花繚乱 / 疾走れ!ミライ』では表題曲の1つ「疾走れ!ミライ」を作詞作曲。そして今回の「HEROES」へとつながるのだ。


 もともとシングルの表題曲を担当することに消極的だったTERUはこの件について、オフィシャルインタビューで「自信がなかったんでしょうね(笑)。今までTAKUROがシングルとして世に放ってきた楽曲というのは本当に素晴らしすぎて、そこで自分の楽曲がシングルとして出たときになんとなくGLAYの音楽が違う捉えられ方をされてしまうのが怖かった。でも『BLEEZE』という曲が完成したときに『これはGLAYのシングルとしてちゃんとリリースしても、恥ずかしくないように仕上がった』と実感できて、やっとGLAYの中でも同じスタートラインに立てたのかも。そこで自信は付きましたね。やっとシングルとしての楽曲を制作することに対して不安はなくなりました」と語ってくれている。


 TERUが書く楽曲の魅力は、何と言ってもそのキャラクター同様に突き抜けるようなストレートさにある。GLAYの記念すべき通算50作目のシングルのオープニング曲、そして昨年9月に東北で開催された『GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary』のテーマソングに「BLEEZE」が起用されたのも(もちろんTERUと東北との結びつきなどの要因はあるものの)、J-POP / J-ROCKシーンを20年にわたりサバイブしてきた彼らの象徴であるまっすぐさが端的に表現された楽曲だからだと個人的には感じている。わかりやすいメロディと聴き手を鼓舞させる歌詞、そしてパワフルなバンドサウンド。メンバーが40代に突入し、その説得力と深みはより増しているのではないだろうか。多ジャンルに派生 / 拡大化した2015年のJ-POPシーンにて、このタイミングだからこそ評価されるべき1曲だと信じている。


 そしてHISASHI作詞作曲の「微熱(A)girlサマー」は、彼らしい言葉遊び満載の歌詞が魅力的なスカテイストのロックチューン。HISASHIの楽曲にしてはシンプルな印象を受けるサウンドだが、これについて彼は「音数が少ない、ちょっと力の抜けたスカパンクみたいなのをやりたいなとずっと思っていて。歌詞は淡い夏の思い出がテーマで、結構いろんな言葉遊びをしてます」と説明している。歌詞にも登場するFPM(Fantastic Plastic Machine)こと田中知之は実際に同曲にゲスト参加しており、“らしさ”を存分にアピールしている。そのほかにも歌詞には浜田麻里の「Return to myself~しない、しない、ナツ。」やアニメ『さすがの猿飛』の主題歌「恋の呪文はスキトキメキトキス」などをモチーフにしたフレーズが飛び出す。この80年代テイストはHISASHIの「学生の頃に感じた、弾けるような夏の瞬間というのを切り取りたかった」という思いから生まれたもので、30代後半から40代半ばのリスナーなら思わずニヤリとしてしまうはずだ。


 TAKURO以外の人間が「GLAYらしさ」を存分にアピールするシングル曲を用意したという事実以外にも、興味深いポイントは存在する。それは、これらの新曲群がどれも夏を彷彿とさせる作風だということだ。タイトルからしてそのまんまの「微熱(A)girlサマー」はまだしも、「HEROES」に関してもTERUは「甲子園球場の夏の大会とか、あの日差しの強い、ちょっと蜃気楼がフワーっとしてるような暑さを曲の中で表現したかった」と語っている。その結果、5月のリリース作品にも関わらず早くも夏が待ちきれなくようなトータル性が誕生。そんな中に、清涼感を感じさせるバラード「つづれ織り~so far and yet so close~〈Live from Miracle Music Hunt 2014-2015〉」が入ることで、絶妙なバランス感が生まれたのも非常に面白い話だ。


 この“少し気の早い夏シングル”を携えて、GLAYはいよいよ20周年イヤーの総決算として、10年ぶりの東京ドーム公演を行う。彼らにとって特別な場所である東京ドームで、2日間にわたりどんな選曲を聴かせ、どのようなステージを見せてくれるのか。そして今回の新曲がどのタイミングに登場するのかなど、楽しみは尽きない。さらに彼らは6月以降もその歩みを止めることなく、LUNA SEA主催フェス『LUNATIC FEST.』への出演や、地元函館に完成した函館アリーナのこけら落とし公演『GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2』などが控えている。この1年の大掛かりな活動で一区切りを付けてしばらく休みを取るわけでもなく、そのまま何事もなかったかのように活動を継続するのは今に限ったことではなく、GLAYの場合はこの20年間ずっとそうやって途切れることなく活動を続けてきたのだ。この勤勉さは非常に日本人的とも言えるが、それ以上に「音楽が究極の趣味であって、好奇心が止まらい、すごくクリエイティブなメンバーだったから、というのが一番大きいんじゃないかな」(HISASHI)、「『微熱(A)girlサマー』をレコーディングしたとき、亀田誠治さんが『GLAYすごいよ! すげえ音楽やってるよ!』と言ってくれて。それがこれまでの20年間真面目にやってきたことに対する答えなのかな。4人が4人とも真剣に音楽と向き合ってこれたからこそ、今があるんだなっていうのを強く感じた」(TERU)という2人の言葉がすべてを物語ってるように思う。もっとも日本人らしくて、それでいて誰も真似できない領域にまで到達したデビュー21年目のGLAYがどこへ向かっていくのか、ぜひこれからも注目していきたい。(西廣智一)