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ポルノグラフィティ『オー!リバル』はなぜロングヒットに? 新たな代表曲の魅力を読み解く

2015年05月25日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

ポルノグラフィティ。

 ポルノグラフィティが4月15日にリリースしたシングル『オー!リバル』が、iTunes・レコチョク・moraなど複数の音楽配信サイトにて、5週連続で週間ランキングTOP10入りするロングヒットを続けている。


 同楽曲は、4月18日に公開された映画『名探偵コナン 業火の向日葵』の主題歌に起用されており、劇中に登場するキャラクター、コナンと怪盗キッドの“ライバル関係”をテーマにしている。タイトルの「リバル」はフランス語やスペイン語で「ライバル」という意味で、映画の世界観とマッチした歌詞やサウンドも話題となった。


 今作のスマッシュヒットによって、ポルノグラフィティの実力と人気が改めて証明されたかたちとなったが、メジャーデビュー15周年目の彼らの楽曲がロングヒットとなった理由を、その楽曲の特徴からひも解いてみたい。


 まず、印象的なのは先ほど少し触れた「オー!リバル」というキャッチーなタイトル。耳馴染みのない言葉ではあるものの響きがよく、つい意味が気になってしまうのではないだろうか。実際、SNSなどでは「リバルってワードが検索ワード1位になってて何だって思ったら、ポルノさんの新曲のタイトルなんだね」「オー!リバルというタイトル見た瞬間さすがに笑った」「早くリバるポルノさん見たい」と、そのタイトルだけで話題を呼んでいた。こうした独特な言葉のセンスはこれまでも存分に発揮されており、「サウダージ」「メリッサ」「ネオメロドラマティック」「ハネウマライダー」「アニマロッサ」など、絶妙な響きを持ったタイトルが数多く生み出されてきた。これらの言葉の多くは英語ではなく、イタリア語やポルトガル語など、日本人にはあまり馴染みのない言語であったり、ポルノグラフィティによる造語だったりする。一見するとよく意味のわからない、しかし気になる言葉をタイトルに冠して、リスナーの関心を誘うのは、ポルノグラフィティが得意とする手法といえよう。この遊び心が長くリスナーに支持されてきた理由のひとつなのかもしれない。


 また、楽曲の世界観が『名探偵コナン』のストーリーに寄り添い、その魅力を大いに引き出しているのも、今作が支持される理由のひとつだろう。2003年、テレビアニメ『鋼の錬金術師』の第1期オープニングテーマに起用された「メリッサ」では、作詞を手がけた新藤晴一は明確にアニメのストーリーを意識し、「自己犠牲」をテーマに詞を書いたという。続くテレビドラマ『末っ子長男姉三人』の主題歌「愛が呼ぶほうへ」もまた、脚本を読んだうえでハートフルな世界観を意識して書かれた作品だ。


 この頃にポルノグラフィティは、アニメやドラマの世界観をテーマに楽曲を制作する、という手法を確立したといえよう。2008年、初の映画主題歌となった楽曲「あなたがここにいたら」も、映画『奈緒子』のストーリーを想起させるもので、その優しい曲調は原作ファンの評価も高かった。そして今作、「オー!リバル」もまた、映画のエンディング場面と楽曲のコラボレーションが秀逸だと、アニメのファンにも好評である。ドラマやアニメなどの作品にリスペクトを込めて、その世界観をより魅力的にしようとする姿勢があるからこそ、彼らは常に新たなファン層を獲得することに成功し、その人気をますます盤石なものにしているのは、想像に難くないところである。


 そして最も注目したいのが、今作の音楽性だ。ガットギターやアコーディオン、ピッコロといった楽器を取り入れたラテン調のサウンドは、「アゲハ蝶」「ジョバイロ」「Love,too Death,too」といった人気曲の系譜に続くもので、ポルノグラフィティの真骨頂と呼べる作品だろう。さらに、アヴィーチー以降、世界的に流行している“オーガニックなサウンドにEDMを合わせた”スタイルに真っ向から挑戦しているのも特筆したいところ。近年、EDMを取り入れる邦楽のアーティストは多数いるが、もともとラテン調の楽曲を得意としていたポルノグラフィティだけに、このスタイルは驚くほどフィットしている。自身のサウンドの個性を活かしながら、しっかりと最新の音楽を取り入れ、自己更新していく姿勢もまた、アーティストとしてリスペクトされ続ける所以に違いない。


 ポルノグラフィティの魅力が最大限に発揮された今回の『オー!リバル』は、彼らにとっても新たな代表曲となり、多くの人に愛聴される一曲となりそうだ。(松下博夫)