「絶対、ポイントを取ってくる」
スタート前、フェルナンド・アロンソはホンダの新井総責任者に、そう言ってマシンへ乗り込んだ。13番グリッドからスタートしたアロンソは言葉だけでなく、スタート直後から熱い走りを披露した。ニコ・ヒュルケンベルグとの接触によって5秒加算のペナルティを受けたものの、それでもポイント獲得をあきらめず、ソフトタイヤでスーパーソフト勢に離されないペースを刻んでいた。
10番手からスタートしたジェンソン・バトンのレースペースも良かった。
「予選Q3のトップと我々のタイムとの差が約2秒あったので、このままのペースで78周走ったら、計算上は周回遅れになっても不思議はなかった。でも、レースでは上位勢と遜色のないタイムで走ることができた」と新井総責任者は言う。
今回モナコGPでマクラーレン・ホンダのペースが向上した理由のひとつに、パワーユニット側の改善がある。新井総責任者は次のように分析する。
「ここは全開率が低いので、スロットルの中間開度から低速の部分での出力特性をきちんとまとめることが重要。それができていないと、レースでプッシュせずにペースをキープしているときに、ドライバーがすごく気を使ってしまう。ジェンソンの安定したペースを見れば、その部分のドライバビリティが向上していたと言っていい」
残念ながら、アロンソはメカニカルトラブルでリタイアしたものの、バトンは78周のレースを8位で完走。レース前の計算を超え、周回遅れになることなくフィニッシュした。新井総責任者にとっては、8位で得た4ポイント以上にトップと同一周回でチェッカーを受けられたことが、うれしかったに違いない。
しかし、その喜びは一瞬だけ。すでに心は次のステップへ向いている。
「この世界は日々たゆまぬ努力を続けないと生き残れないので、次のカナダGP、それ以降もパワーユニットだけでなく、車体側も含めてマシンをアップデートしていかなければならない」
F1復帰6戦目で手にした初ポイント。ここまでの道のりはホンダにとって早かったのか、あるいは遅かったのだろうか。
「開幕前のテストの状況を考えれば、6戦目でのポイント獲得が決して遅すぎたとは思っていない。ただ、失った時間はかなり大きいことも自覚しており、ファンのみなさんの期待にまだまだ答えられていないこともわかっている。ポイントを取ったことは素直にうれしいけれど、我々はこのポジションを目指して戦っているわけではない。もっともっと上を目指したい」
日本語での会見を終えた新井総責任者は、コメントを求める海外メディアへの対応に追われていた。
(尾張正博)