2015年05月25日 13:31 弁護士ドットコム
「美少女ゲームを、巨匠の名画だけで作ってみました」。こんなツイートとともに投稿されイラスト「ときめき絵がリアル」が話題になり、1万7000件以上リツイートされた。
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投稿されたイラストは、美少女恋愛ゲームのパッケージイラストをモチーフにしたものだ。一風変わっているのは、登場キャラクターが、「モナリザ」「ヴィーナスの誕生」「民衆を導く自由の女神」など、歴史上の名画に描かれた人物にそっくりということだ。名前も「モナ美」「ヴィナ子」「ミケラ子」など、名画を意識したものになっている。
イラストに対しては、「発想が素晴らしいです!w」「最初キモい!と思ったけどやってはみたいと思いました♪」など、多くの反響が寄せられた。
ただ、昔の作品とはいえ、過去の名画をパロディにすることは、法的には問題ないのだろうか。著作権法にくわしい柿沼太一弁護士に聞いた。
「海外の名画ということなので、日本以外の国の著作権法が関わってくる可能性がありますが、今回はあくまで一般論として、日本の著作権法に関する問題に絞って検討します」
柿沼弁護士は、このように前置きしたうえで、解説をはじめた。
「日本の著作権法の場合、著作者の死後50年を経過すれば著作権の保護期間が満了しますので、イラストに掲載されている原画については、いずれも保護期間が満了しています。
ですので、それらの原画は、基本的には自由に利用できます。ただ、無制限に利用できるわけではありません」
利用が制限されるのは、どんな場合だろう。
「著作権法60条は、著作物の著作者が存在しなくなった後でも『著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為』はしてはならないと定め、違反した場合に罰則(500万円以下の罰金)を設けています。
つまり、著作者が死亡して50年以上が経ち、保護期間が満了している作品についても、著作者人格権を侵害するような行為はしてはならないというわけです」
今回のようなパロディは、どう評価できるだろう。
「著作権法60条は、次のような場合はセーフと定めています。
『その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合』
簡単に言えば、もし著作者が生きて自分の作品のパロディを見たとしても、怒らないだろうといえるような場合です。
ただ、今回のパロディについては、日本の著作権法を前提とする限り、『かなり厳しい』つまり『著作者人格権の侵害となる可能性が高い』と言わざるを得ません。
もちろん、現実に刑事罰に問われることはおそらくないと思いますが」
柿沼弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柿沼 太一(かきぬま・たいち)弁護士
兵庫県弁護士会所属、映像制作会社やアーティストからの著作権に関する依頼案件が多い。またIT系ベンチャー企業からの相談・依頼案件も近時とみに増加している。著作権に関するブログ「プロのための著作権研究所」(http://copyrights-lab.com/)を執筆中。
事務所名:STORIA法律事務所