メルセデスAMG同士の争いとなったF1第6戦モナコGPの予選は、昨年の“雪辱”を果たしたルイス・ハミルトンが、モナコ初のポールポジションを獲得しました。
コース幅が非常に狭く抜きにくいモンテカルロの市街地コースでは、スターティンググリッドが何よりも重要視されます。実際、過去6年のモナコでは、ポールポジションを獲得したドライバーがそのまま優勝を飾ってきました。そのため、日曜のレースでも初のポールポジションからスタートするハミルトンが、2008年以来自身2度目となる優勝に最も近い位置にいると言えるでしょう。
今回のモナコはほぼ1ストップのレースになることが濃厚です。タイヤサプライヤーのピレリによれば、78周を最も速く走るためにはトップ10のドライバーがスタート時に装着するスーパーソフトタイヤで27周程度を走り、残りの約50周をソフトタイヤで走りきるのが理想的とされています。
また、今年は路面全体の80パーセントが再舗装されており、摩耗とデグラデーション値は例年よりさらに小さくなっています。そして、何よりもここモナコは追い抜きが非常に難しいサーキット。そのため、ポールスタートのハミルトンとしては、最大のライバルとなる2番手スタートのニコ・ロズベルグに対し、常に前のポジションを守ることが重要かつ最大の鍵になるでしょう。
一方、3連覇を狙うロズベルグとしては、スタートで先頭のポジションを奪いたいところ。FP1ではソフトタイヤのロングランペースがハミルトンから0.7秒程度遅れていましたが、上記のようなコース特性と、モナコを得意としているロズベルグの能力を持ってすれば、ハミルトンを抑え切ることも十分に可能だと考えられます。
本命のふたりにとって、スタートの次に重要となるのは、おそらく1度限りとなるであろうピットストップのタイミングです。ここでは、クルーを含めてミスをしないことはもちろん、相手より早くピットインすること、もしくは相手のピットインに対して素早く反応し、トラック上のポジションを守ることを優先する必要があります。
今季初登場となる新しいスーパーソフトは、すぐに熱の入るリヤに比べてフロントの温まりが悪い傾向が出ているようです。一方、各車が第2スティントで履くと予想されるソフトタイヤには、そのような傾向は見られません。また、モナコはトラフィック(渋滞)の影響が非常に大きいこと、そしてセーフティカーの導入率が他のサーキットに比べて高いことも、戦略を組み立てる上で考慮しておく必要もあるでしょう。
予選3番手につけたフェラーリのセバスチャン・ベッテルはメルセデス2台と戦うのは少々厳しい状況です。仮にスーパーソフトを使用する第1スティントでメルセデス勢についていくことができたとしても、第2スティントで履くソフトタイヤのロングランペースは、安定こそしてはいるものの、メルセデス勢とは大きな差がありそうです。
ベッテルはそれよりも、同じ2列目4番グリッドに並ぶダニエル・リカルドと、その後方5番グリッドにつけるダニール・クビアトを警戒する方が現実的な問題でしょう。レッドブル勢のパワーユニットはすでに年間使用制限の4基目に入っていますが、表彰台が近づいた今回のモナコにかける意気込みは、相当大きいはず。ロングランでもフェラーリに匹敵する速さをみせていることから、スタートはもちろん、レースにおいてもフェラーリを苦しめる可能性がありそうです。
最後にマクラーレン・ホンダですが、予選ではフェルナンド・アロンソがマシントラブルでストップ、ジェンソン・バトンも12番手に終わり、念願の今季初のトップ10入りは今回も果たせませんでした。ですが、バトンのQ2最後のアタックはイエローフラッグに阻まれており、それがなければ「余裕でQ3に進めていた」とバトン自身もコメント。実際、ペースを落としたというバトンの最終アタックは10番手のセルジオ・ペレスのタイムからわずか0.094秒遅れというものでした。
また、トラブルで15番手(注:決勝は13番グリッドスタート)に終わったアロンソも「6~8位」に入ることができたはずと、マシンパフォーマンスの向上を実感している様子。レースでは粘り強く走りきり、混戦をくぐり抜けてなんとかポイント圏内まで食い込んでほしいところです。
第73回モナコGP決勝は24日14時(日本時間21時)スタートです。