F1モナコGP、予選Q2で2回目のアタックに出て行ったジェンソン・バトン。今年のモナコは気温が低く、スーパーソフトでもフロントタイヤが温まりにくく、バトンはアウトラップに続いて、もう1周ウォームアップランを行い、3周目にタイムアタックを開始した。ターゲットは、その時点で10番手だったペレスの1分16秒999。0.094秒差で追うバトンには手ごたえがあった。しかし、アタックを開始した直後の1コーナーでイエローフラッグ。直前にニコ・ロズベルグがブレーキングをミスして、エスケープゾーンに退避していたからだった。
「本人も(Q3へ)行ける感触があったと思うので、アタック後に無線で12番手と知らされると、声をあげて残念がっていました」
予選後に新井総責任者は、そう言ったあと「きちんとアタックできていれば(Q3へ)行けたでしょう」と唇を噛んだ。新井総責任者を悔しがらせたのは、バトンのアタック中に出たイエローフラッグだけではない。この日マクラーレン・ホンダには同じ1コーナーで、もうひとつの不運が起きていた。それは、Q2でフェルナンド・アロンソに起きた。アタックに入った直後のホームストレート上で突然、ステアリング上の液晶パネルに「アンチストール」の文字が表示されたアロンソのマシンは、1コーナーを過ぎたあとにストップしたのである。
「(アロンソは)予選前に話をしていたときも感謝してくれたほど(ドライバビリティが)かなり良くなっていると言っていて、(Q1で)乗ってみて(Q3へ行ける)自信はあったと思います」
今回モナコGPでパワーユニットのドライバビリティが向上した理由は、もちろんホンダの絶え間ない努力があったからだが、新井総責任者はバトンとアロンソの貢献があったことを強調した。
「やっぱりモナコをよく知っている。どこでどういう走りをすれば、タイムを稼げるかを熟知していて、細かい注文を出してくれました。ドライバビリティを上げるにはドライバーからのフィードバックが重要で、特にモナコのようなところでは大切になってくる。我々エンジニアにとって力強かった」
だからこそ、ふたりそろって予選Q3へ進出してほしかったという気持ちがあったのだろう。予選後の新井総責任者の言葉には、そんな思いがにじみ出ていた。
モナコGP予選結果は、バトン12位、アロンソ15位。悔しさとともに、手ごたえを感じたマクラーレン・ホンダの走りだった。
(尾張正博)