2015年05月24日 11:31 弁護士ドットコム
「新入社員研修で、泣きながら『自分はダメ人間です』と叫ばされた」——。そんな変わった研修を受けたという新入社員が、ネット掲示板に書き込みをしていた。その新人は研修を冷めた目でみていたが、なかには「号泣しまくって、『私は変わります!』とか叫び続けてる奴もいた」そうだ。
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こうした研修は、ネットなどで「ブラック研修」と呼ばれているようだ。コメント欄には「駅前で大声で自己紹介させられた」「社訓を叫ぶんだけど、何度やっても声が小さいって言われて、泣き出す奴もいた」などの衝撃的な実例が次々に投稿されていた。
自分の人格を全否定するようなことを言わされたり、街角で大声で叫ばされたりするような新人研修は、法的に問題ないのだろうか? 鈴木徳太郎弁護士に聞いた。
「会社には、従業員に対する『業務命令権』があります。しかし、無制限に何でも命令して良いわけではなく、従業員の人格権を侵害するようなことは許されません。
どういう場合に『人格権の侵害』にあたるかですが、一般には、
(1)業務命令に違法、不当な目的があるか
(2)業務命令の業務上の必要性があるか
(3)業務命令によって従業員が被る不利益の程度が重大かどうか
といった要素から、個別に判断をすることになると思います」
鈴木弁護士はこのように説明する。では「ブラック研修」も、人格権の侵害にあたるのだろうか?
「ブラック研修の場合、たとえば、従業員を退職させることや、特定の従業員に対するいじめが目的であるような場合は、研修に違法・不当な目的があるものとして『人格権侵害』とされる可能性が高いでしょう。
そのような特定社員のいじめや退職勧奨が目的でない場合でも、会社の業務とあまりにかけ離れた研修内容であったり、従業員を極端に辱めたり、過度に負担をかけるようなものは、『人格権侵害』と判断される可能性があると思われます」
ネット上の書き込みにあった「『ダメ人間です』と叫ばされる」ことや、「駅前での自己紹介」は、屈辱と感じる人もいそうだが・・・。
「そのような研修は、業務上の必要性との関連で見ると微妙な部分もあると思います。程度によっては、従業員に過度な負担をかけ、『人格権侵害』と判断される可能性があるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 徳太郎(すずき・とくたろう)弁護士
多摩地区・府中市の弁護士。個人の案件については、相続問題の他、交通事故や倒産事件を多数取り扱う。近時は労働問題の相談も多い。会社関係の事業承継なども取り扱う。現在、第一東京弁護士会多摩支部副支部長、府中市情報公開・個人情報保護審議会委員を務める。
事務所名:鈴木徳太郎法律事務所
事務所URL:http://www.fuchu-lawoffice.jp/