小林可夢偉がスーパーフォーミュラ第2戦の岡山で初めてQ3に進出し、4番手グリッドを獲得した。開幕戦の結果からも、いくら可夢偉と言えども、経験の少ないサーキット、そしてニュータイヤが練習走行で実質使用できない難しさなど、現在のスーパーフォーミュラがいかにハイレベルな僅差の戦いであるかが分かった。
だが、この岡山は可夢偉にとってテスト経験のある数少ない、走行したことのある国内サーキット。その経験を活かし、他のドライバーとのハンデが少ない岡山で、可夢偉が2列目グリッド獲得することができた。予選上位に来たことで、自然と目標は次のステップに移る。果たして、可夢偉は第2戦の岡山で勝つことができるのだろうか?
「そんなに不満でもない。でも、ミラクルではないなと」
予選後の合同会見で、可夢偉は4番手となった自身の結果を振り返った。
「普通な感じです。すごいことをしたわけでもなく、クルマなりにという感じ。自分でも決まったという感じではなかったですが、だからといってすごく悪いわけでもない。どちらかというと、明日(決勝)の方がすごく重要」
予選結果を淡々と振り返る可夢偉。というのも、可夢偉は今回、1分13秒083で予選4番手につけたが、PPを獲得した石浦宏明の1分12秒429をはじめ、野尻智紀、山本尚貴と続いた上位3位は1分12秒台半ばのタイムをマークしている。上位3台と可夢偉の差はコンマ4秒。予選Q1で1秒以内に17台が入ったことを考えると、この上位3台の予選タイムが頭ひとつ、抜けていることが分かる。
可夢偉も「(自分のタイムを)上げられたとしてもコンマ2~3でしたし、それでは順位は何も変わらなかった」と、あっさりと敗北を認めた。だが、レースは決勝でリザルトを残してこそ。それを良く理解している可夢偉だからこそ、落ち込む様子もなく冷静に予選を振り返り、すでにその視線の先は決勝の戦い方を睨んでいた。あっさりと敗北を認めたのも、裏を返せば決勝に自信があるからこそ、とも言える。
可夢偉車を担当する山田健二エンジニアも、PPを獲得した今回の石浦の速さを素直に認めるものの、決勝への自信を覗かせる。可夢偉と山田エンジニアは今回から試したセットアップの「新しい方向性」も良い方向に進んでいるといい、「4番手というポジションは、まずは表彰台を目指そうというチームの目標がある中で、いい位置」と予選の結果を受け入れた。そして決勝の展望を語る。
「開幕戦でもロングランをしているし、クルマの安定感があるのは分かっている。決勝重視と言えるかな」
可夢偉は3月の岡山テストで30周のロングランを行っており、さらに開幕戦の鈴鹿でも誰よりも先に序盤にピットへ向かい、前方がクリーンな状態でロングディスタンスを走り切る作戦を採用。この日の朝の走行でも決勝を見据えてユーズドタイヤで多くの周回を重ねるなど、決勝に向けたロングランに関してはセットアップの方向性、そしてタイヤの使い方という面で大きな手応えを得ている様子だ。可夢偉も決勝への自信を言葉にする。
「スタートがすごく重要だということも前回のレースで分かったし、スタート決めてレースペースが良ければ問題なくレースを戦えると思う。そのパズルさえ組み合わせれば、そこそこ戦えるかなという感覚です」と可夢偉。
さらには、ほとんどのドライバーが「オーバーテイクが難しい」と声を揃える岡山のコースにも可夢偉節で応える。
「OTS(オーバーテイク・システム)を使って鈴鹿の直線で抜ける時代ですから。そう考えたらここも難しいわけではないと思います。鈴鹿の1コーナーはきちんとブレーキングをするわけではないコーナーなのに抜ける。ここはコース幅は狭くてすごく勇気はいりますけど、あれだけ長いストレートのあとのブレーキング勝負になると考えると、個人的には鈴鹿より抜きやすいような気がしています」
明日の決勝は果たして可夢偉のオーバーテイクショーを見ることができるのか。それとも、初PPを獲得した石浦が逃げるのか、はたまた、予選Q2の1コーナーでタイヤをロックさせたという前回ウイナーのアンドレ・ロッテラー(予選13番手)が巻き返すのか……7年ぶりの開催となった岡山での国内トップフォーミュラ戦は、ひと筋縄では終わらなそうな雰囲気だ。