2015年05月23日 13:01 弁護士ドットコム
「8:00出勤、24:30退社。残業代は出ない」。こんなタイトルで、サービス残業に明け暮れる毎日へのボヤキをつづった、はてな匿名ダイアリーが話題になった。
【関連記事:「JKビジネス」の闇――なぜ「普通の女子高生」まで足を踏み入れてしまうのか?】
投稿者によると「明らかに作業量が多すぎる仕事」を、自分も含めた3人でこなしているため、帰宅できるのは、毎日23時くらいになるそうだ。日記を投稿した日は、24時半まで働いていたという。
遅くまで働いたら、せめてその分の残業代を払ってほしいところだ。しかし、投稿者の会社では、時間外申請が22時までしかできないという。さらに、水曜日と金曜日は、会社が「ノー残業デー」としているため、時間外申請すらできないのだそうだ。ほぼ毎日、サービス残業が生じるのに・・・。「奴隷か、俺は」。そんな言葉で文章は締めくくられている。
いまの時代、社員の長時間労働を防ぐために「ノー残業デー」を設けている会社も少なくないはずだ。だが、仕事の都合上、「どうしても残業しなくてはならない」という日もあるだろう。そんなとき、残業をしても「ノー残業デー」だったら、会社に残業代を請求することはできず、「働き損」になってしまうのだろうか。労働問題にくわしい土井浩之弁護士に聞いた。
「時間外申請をしていなくても、『ノー残業デー』でも、作業が発生した時間が『労働時間』にあたれば、残業割増賃金を請求できるのが原則です。
残業代を支払わない場合、使用者(会社)は刑事罰の対象となります。『ノー残業デー』と宣言したからと言って、この原則がなくなることはありません」
土井弁護士はキッパリと述べる。「労働時間」にあたるかどうかは、どう判断すればいいだろう。
「ポイントは、使用者の指揮命令下におかれているかどうかという点です」
では「ノー残業デー」は、使用者の指揮命令下にあるといえるだろうか。
「たしかに、会社が長時間労働を抑制するために、『その日は残業をしてはならない』という趣旨で、あえて『ノー残業デー』を設けているのであれば、『指揮命令はしていない』と評価されるとも思えます。
しかし、労働者が行っている仕事が、業務性があり、かつ、会社内で行っている場合には、指揮命令下にあるといえる可能性が高くなります。
さらに、『ノー残業デー』だったとしても、残業しなければ、指示された期限に間に合わないとか、査定に響くとか、上司から注意されるというのであれば、指揮命令があったと認められるでしょう。
また、国の通達により、使用者は、労働者の労働時間を把握することが義務付けられています。会社内で残業をしている以上、上司が把握していないということは、よほどの事情がない限り認められないでしょう。
今回のようなケースでも、時間外労働については、少なくとも上司の容認があり、指揮命令があったといえることになると思います」
土井弁護士はこのように分析していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい・ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。東北学院大学法科大学院非常勤講師(労働法特論ほか)。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:http://heartland.geocities.jp/doi709/