いまや多くの企業が、ツイッターアカウントで自社の商品やサービスをPRしている。新たな広報のツールだけに、発信を担当する「中の人」はユーザーをいかに惹きつけるか試行錯誤していることだろう。
そんな彼らの様子が、5月21日に作られたハッシュタグ「#企業公式アカウント中の人あるある」をつけたツイートから垣間見られる。会社とネットユーザーの両方に目配せしながら仕事をするのは、予想以上に苦労があるようだ。
実は「キラキラ女子の皮をかぶったおっさん」がやっている?
このハッシュタグを作ったのは、愛知県のレインメーカーグッズの伊藤商店(@ito_kirin)。「狙って呟いた事ほどRT数が伸びない」とツイートしたことを受けて、多くの企業アカウントがこの流れに乗った。
公式アカウントといえば、気になるのは「どんな人が運用を担当しているか」ということ。それを察してか、ハッシュタグで「中の人」の存在を指摘された各アカウントは、こぞってこれに言及している。
「中の人などいない」(日経電子版広報部 @webkanpr)
「実はみんなプリキュア」(ケロリンの内外薬品株式会社 @KERORIN_PR)
「実はみんなサイヤ人」(東急ハンズ @TokyuHands)
「実はみんな永遠の17歳」(北陸コンサルタント @hokucon)
いずれもかなりおちゃらけているが、ハンゲーム(@hangame)だけは「高確率でキラキラ女子の皮をかぶったおっさん」と内情を暴露するようなツイートをした。
運用上の「あるある」としては、ユーザーから批判的なリプライを送られるという悩みが多い。確かに普通の会社員生活をしていれば、ここまで世間の矢面に立つ仕事をしている人も珍しい。会社を代表している手前、容易に反論もできない。
「いろいろ打たれて、メンタルが強くなるというか鈍感になる」(ハンゲーム@hangame)
「Disられる日もあるけれど、わたしはげんきです」(日経電子版広報部@webkanpr)
注文住宅のアルネットホーム(@alnethome)は、「フォローすると『お家は間に合ってます』と軽く拒否される…」と悲哀に満ちたツイートをしていた。
自虐や趣味とビジネスのバランスが難しい
このほか多かったのは、「中の人」の社内での立場が弱いという悩みだ。仕事なのに同僚や上司から「遊んでいる」と勘違いされたり、がんばって運用しているアカウントの存在が社内でほとんど知られていなかったりする。
「仕事そっちのけでTwitterやってる人と思われてる」(エキサイトニュース@ExciteJapan)
「大多数社員に、遊んでいると思われている…」(シャープ製品/ネットサービス@SHARP_ProductS)
「新入社員『あの人いっつもTwitter見てない…?ヒソヒソ』」(価格.com@kakakucom)
「社内の人『えっ、うちツイッターやってたんだ』 中の人『 』」(渡辺布帛工業株式会社@moritaalumi)
経営再建中のシャープ(@SHARP_JP)のアカウントは、商品紹介の合間にハッシュタグをつけて「つらい」「重い」「(でもやるんだよ)」とポツリ。「つらい」のツイートは、リツイートとお気に入りで8000以上のユーザーの反応を集めている。
通常の広報では、社外にポジティブな情報を中心に流すのが常識だが、それではフォロワーは増えない。つい自虐的でネガティブな書き込みも増えるが、やりすぎると社内から「何をやっているんだ」と言われ、バランスが難しい。ビックロ・ビックカメラ新宿東口店のアカウント(@bic_shinjuku3ch)も、こう悩みを明かす。
「商品紹介ツイートよりも、趣味的な内容やネタツイートの方が反応がいい…」
ツイッターの「トレンド」入りするほどの流れを受けて、TwitterJPの公式アカウント(@TwitterJP)も「このハッシュタグに参加すべきか悩む」 と投稿。すでに参加しているセガ(@SEGA_OFFICIAL)やタニタ(@TANITAofficial)から、「参加参加―」「これは期待せざるを得ない」とラブコールが送られている。
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