「フリー走行2回目は、ほとんど何もできず、セッションになっていなかった」
モナコGP初日を終えたあと、ホンダの新井総責任者は、まだ濡れた地面の上に立ち、そう言って苦笑した。午前中のフリー走行1回目は、ジェンソン・バトンがセッション前にエナジーストアを交換。
「いろいろな部品の確認をし、システムチェックを行っているうちに、時間ばかりが過ぎていってしまった。もう少し、早く走行できるはずだったが……」
バトンが走った15周という周回数は、20人中で最も少ない。スペインGPの決勝ではタイヤの使い方に問題を抱えていただけに、ホンダとしては、もう少し走らせてあげたかったのだろう。さらに午後になって、モナコ上空を雨雲が覆った。
フリー走行2回目が開始して間もなく降り出した雨が上がることはなく、90分のセッション中、75分間はウエットコンディションとなった。他のサーキットなら、よほどの雨でもない限り、確認するためにウエットタイヤを履いてコースインするが、市街地コースのモナコではわずかなミスでもガードレールの餌食となるため、チームはできる限りリスクを少なくしたい。フリー走行2回目のバトンには何のトラブルもなかったが、走行はフリー走行1回目より少ない14周にとどまった。
今季F1に復帰したホンダは、序盤戦でさまざまなトラブルに見舞われた。その対策もひと段落し、スペインGP後には初のインシーズン・テストも行った。「スペインのテストは2日間ともしっかり走り込みができ、データもきちんと取れたので大変有意義だった。スペインGPのレースでジェンソンのマシンに起きた問題についても、復習することができた」と語る新井総責任者にとって、モナコGP初日はその成果を試す場だった。しかし、雨がホンダの思惑をさえぎった。
それでもホンダにとって7年ぶりのモナコ、わずかな走行でも得るものは少なくなかった。
「路面が新しくなり、それに合わせて白線などのペイントも塗り替えられていて、いくつかのポイントではとても滑りやすい状態となっているようです。特にラスカスの上り坂が滑りやすい。金曜日に休みが一日あるので、エネルギー配分のマネージメントは、もう少し見直さなければならない」
前戦スペインGPでもホンダはデータ系を結構変えていたが、モナコは特にドライバビリティが重要になるので、アクセルを踏んだときのパワーの出方などに関して、かなり変えてきたという。それをフリー走行で確認したかったが、できなかった。
だが、過ぎ去った時間を振り返ってばかりいるわけにはいかない。
「天気ばかりはどうしようもないし、条件は他のチームも同じだから、これからデータをしっかりチェックするしかない。ドライバビリティに関してはデータを改善すればするほど良くなる。そこを改善できれば、モナコではいいところへ行けるだろう」
金曜日のモナコはF1の走行がない「休息日」となる。この1日でホンダがどこまでドライバビリティを改善してくるか、楽しみに待ちたい。
(尾張正博)