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拡大するヘッドフォン市場、今後のトレンドはどうなる? 注目のモデルをレポート

2015年05月22日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

 去る5月16~17日、中野ブロードウェイにて「春のヘッドフォン祭2015」が開催された。2006年にはじまったハイエンドヘッドホンショウからかぞえて9年。いまや国内のみならず、諸外国からも注目されるポータブルオーディオの祭典となったイベントで、新モデルの発表・試作機のお披露目がなされることも多い。ポータブルプレーヤー、アンプ、ヘッドフォン、イヤフォンの市場傾向をチェックするのに欠かせない場だ。


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 Futuresource Consultingが2014年10月に発表したデータによると、2013年度のヘッドフォン・イヤフォン出荷数は2億8600万台、販売総額は84億ドル(1兆円)に達した。ヘッドフォンの市場規模が年々拡大している現在、「春のヘッドフォン祭2015」で見た展示物の中から、今後のトレンドとなりそうなモデルを2つ、ご紹介したい。


 第一に注目したいのがハイエンド市場だ。古くから高級モデルは存在したが、市場が形成されたのは00年代からと考えていいだろう。2005年にリリースされたAKG K701(当時の実勢価格は8~9万円)、2009年に登場したゼンハイザー HD800(同16~17万円)といったモデルなどが注目を集め、これらのモデルをリファレンスとしてモアクオリティなモデルが増えてきた。


 写真のパイオニア SE-MASTER1はこの5月にリリースされたばかりの最新作。6年という開発期間をかけ、K701やHD800と同じように、スピーカーで聴いているかのような広大な音場表現を得意とする。


 ほんのわずかなパーツの共振や付帯音が音質劣化を招くことから、ヘッドパッドスライダーの内部やヘッドバンドなど、ドライバー・ハウジングとは離れた位置にあるパーツすら制震を行うほどの作り込みが窺える。またテンションロッドを交換することで側圧のコントロールも可能。ヘッドフォンはウェアラブルガジェットである以上、サイズの問題が常に存在したが、SE-MASTER1はS/M/Lといった3サイズ的ポジションにセッティングできる。


 なおSE-MASTER1の組み立ては、ハイエンドスピーカーTADシリーズ、そしてハイエンドカーオーディオスピーカーcarrozzeria RSシリーズを生産している東北パイオニアの、たった1人の職人が手作業で行っている。量産効率よりも精度を優先したプロダクツだ。自動巻腕時計のような、工芸品としてのクオリティをメーカーであるパイオニアは重視している。


 開放型という構造上、静かな室内での利用が前提だ。さもないといま聞いている曲を周囲にも伝えてしまうし、雑踏のノイズも耳に入ってしまう。インピーダンスは45Ωとスマートフォンでもドライブできるが、願わくば据え置きのヘッドフォンアンプを自分の部屋に用意し、最もリラックスできる環境で好きな曲に耳を寄せたい。つまるところリビングに据え置いている、フルサイズのホームオーディオをリプレイスできるポテンシャルを持った、インドア用ヘッドフォンというわけだ。


 スタイリッシュなモデルであってもユーザビリティを重視する流れも生まれてきている。


 ゼンハイザーが2012年にリリースした「MOMENTUM」シリーズはレトロフューチャーなルックスと豊富なカラーリングで人気を博したが、この夏にリリースされる2nd Generationは折りたたみ機構を追加。可搬性を大幅にアップさせる。イヤーパッドの素材も変更される。


 ドライバーチェンジやフェイスリフトなマイナーチェンジではなく、使い勝手のみを向上させるというリニューアル。人気モデルだからこそできる手法だろうが、お気に入りのルックスをそのままにアップデートできるというのはユーザーメリットも大きい。


 なお「MOMENTUM」はiPhoneやAndroidといったスマートフォンでのドライブにも適した仕様になっている。全体滴に落ち着いたトーンでジャンルの得手不得手がない。イベント会場で展示されていたモデルはAndroid用のリモコンを装備しており、端末をポケットやバッグに収納したままコントロール可能。iPhone用のリモコンを装備したモデルもラインナップされるだろう。


 こちらのモデルは遮音性高く音漏れも軽微な密閉型。轟音のノイズが蔓延している地下鉄駅構内でもビートを着実に伝えてくれる。首掛けも可能なサイズ感だし、折りたたみ機構による可搬性の高さを生かすには、日々の通勤/通学時にも多用したい。(武者良太)