今週末の開催される、フォーミュラE第8戦ベルリンePrix。昨年9月に始まったフォーミュラE最初のシーズンも、残り2ラウンド/3レースとなった。チャンピオン争いも熾烈。その大事なレースとなる、ベルリンePrixについて、テレビ朝日のフォーミュラE中継で解説を務める片山右京が、その見所を語った。
■白熱したモナコePrixのトップ争い
モナコのレイアウトは、人工的に作られた(直角コーナーの多い)市街地コースとは違い、コーナーのRなどが独特なんです。その中でフォーミュラEのマシン特性、重量バランスなどを考えると、1~2コーナー、3コーナーまでのシケインが見た目にも狭かったので、何か起きるだろうと思っていました。そしたら案の定アクシデントが起きましたね。モナコのフォーミュラEは、F1で使用するコースの半分を使用する、ある意味どのドライバーも初めてのコース。その中でのクラッシュでしたが、あれだけで済んだのは逆に奇跡だったと言えるでしょう。
モナコの予選では、1ラップをミス無く繋げることが、F1でもフォーミュラEでも難しいということが改めて分かりました。逆に、チャンピオンシップを争っている上位陣は、本当にレベルの高いレースを見せてくれました。どのカテゴリーにも負けない、フォーミュラE初めてのシーズンとは思えないすごいレースでしたね。そのレベルの高さにも驚かされました。
先頭のセバスチャン・ブエミ(e.ダムス・ルノー)はペースをコントロールしながらバッテリーをセーブする。一方、ルーカス・ディ・グラッシのアウディ・アプトはピット作業が一番速いチームで、ピットインのタイミングでブエミの前に出られると思いきや、サイド・バイ・サイドに並ぶのが精一杯で抜けない。そして、ディ・グラッシに予選で邪魔をされたとヒートアップしたネルソン・ピケJr.(ネクストEV TCR)は、ファンブーストを使ってストレートで差を詰め、ヘアピンのブレーキングを使ってインに入ろうとするも、それをディ・グラッシが抑える……。そんな先頭3台の争いは、本当にレベルが高かったと思います。フォーミュラEの1年目、初めてのヨーロッパでのレースとなる伝統のモナコで新しいマシンがハイレベルのレースを見せたというのは、世界中のモータースポーツファンを驚かすことになったのではないでしょうか。
■モナコとは対照的なベルリンのコース
そんな1年目のシーズンも残り4戦。歴史に残る初代のチャンピオン争いは、ブエミ、ディ・グラッシ、ピケJr.の3人に絞られつつあると思います。今回の優勝でシーズン2勝目をマークしたブエミがシーズンの順位を3位に上げて勢いがあるし、トップのディ・グラッシと2位のピケJr.の差もわずか。残り4戦は緊張感のある、目が離せないレースになります。
次のベルリンはモナコとは対照的。1周が2.5kmとフォーミュラEの中では比較的長めで、コーナーが17もある。しかし、直角コーナーはひとつもありません。ですから、ドライバーにはベストのライン取りが求められ、そのためにもチームはベストのセットアップをいち早く見つけなければいけないんです。テスト走行ではチームのシミュレート技術が試されるし、仮に予選で下位に沈めば、上位の3人でさえ優勝争いから脱落する可能性もある。チームやドライバーに求められるものが、よりハードになりそうです。
基本的にはターン1までの長いストレートが、ファンブーストを使ってオーバーテイクが狙えるポイント。また、ターン5および6以降~ターン10までのタイトなコーナーが連続するセクションでは、ラインをクロスさせることでファンブーストなしでのオーバータイクが見られるかもしれません。
飛行場の跡地のため非常にフラット。しかし幅が狭く、コーナーが多いというコースを、モナコから短い期間でいかに自分のものにするか。そんなレースをシーズン後半戦に行うという意味でも、非常に面白い一戦になるでしょう。
■アムリン・アグリの活躍に期待!
上位3人、3チームとも三者三様の良さがあるので、最終的に誰が総合優勝を手にするのか、予想は非常に難しいですね。ドライバー目線で言わせてもらえば、ピケJr.の熱い走りは子供っぽいけど面白いと思い。お父さん譲りでもあるし、この世界、あまりクール過ぎても華がないじゃないですか!
二世ではないですが、アイルトン・セナの甥ブルーノ・セナ(マヒンドラ)は、まだ何かが足りないと思います。例えば、たまに攻め過ぎて自滅したり、ミスをする。前で何かがあるかもしれない、というリスクを予見する強さだったり、ここ一番ではタイムを出すことができる速さが必要かなと思います。
モナコでは、予選でアントニオ・フェリックス・ダ・コスタのマシンがクラッシュしたり、サルバドール・デュランがスタート直後に事故に巻き込まれたりと、アムリンアグリは踏んだり蹴ったりでしたね。(鈴木)亜久里さんが現場に行くといいことがない(笑)。果報は寝て待てと言いますが、亜久里さんは寝ていた方がいいんじゃないかな(笑)。
ただ、第4戦でダ・コスタが優勝していますが、フォーミュラEはまぐれで優勝できるレースではありません。力があるから優勝したわけですから、必ずまた優勝するチャンスはあるでしょうし、表彰台にも上ってくれるでしょう。後輩として亜久里さんを応援しているし、日本人としても期待しているので頑張って欲しいですね。
■FIAフォーミュラE選手権 第8戦ドイツ ベルリン大会
2015年5月23日(土)生中継
テスト走行:午後5時15分(CSテレ朝チャンネル1)
予選:午後6時45分(CSテレ朝チャンネル1)
決勝:午後10時54分(BS朝日)
5月24日(日)
決勝ハイライト:午後11時30分(BS朝日)
5月30日(土)
決勝ハイライト:深夜3時45分(テレビ朝日)