2015年05月21日 17:21 弁護士ドットコム
東京・浅草の「三社祭」で小型の無人飛行機「ドローン」を飛ばすことを示唆する動画をインターネットで配信し、祭り主催者に警備を強化させるなどしたとして、警視庁は5月21日、横浜市に住む15歳の無職少年を威力業務妨害の疑いで逮捕した。
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報道によると、少年は5月14日から15日にかけて、動画配信サイトで「祭り行きますから」「撮影禁止なんて書いてないし」と発言し、祭りの運営業務を妨害した疑いがもたれている。動画の視聴者が通報し、主催者側が警備を強化するなど対応したという。警視庁の調べに対し、少年は「ドローンを飛ばすとは言っていない」と供述し、容疑を否認しているそうだ。
少年はネット上で「ノエル」と名乗り、長野の善光寺の境内にドローンを落下させるなどして、これまでも警察から注意を受けていた。だが、ツイッターでは「逮捕は行き過ぎではないか」という声も上がっている。
仮に「ドローンを飛ばす」と受け取れるような言葉を発していた場合、そのような発言をしただけでも、威力業務妨害罪にあたるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
威力業務妨害罪は、刑法234条に定められている犯罪で、「威力を用いて人の業務を妨害」することだとされている。
「まず、『威力』とは、判例で『人の意思を制圧するような勢力』と定義されています。暴行や脅迫をはじめ、大学の授業中に大声を出す、飲食店で汚物をまくなど、さまざまなケースが当てはまります。非常に広い概念だと考えてください」
もし「祭りでドローンを飛ばす」と受け取れる発言をネットでした場合、それだけで、威力を用いて、他人の業務を妨害したといえるのだろうか。
「非常に微妙なケースだと思いますが、ドローンが落下する事例があいついでいる以上、祭りで飛ばすと予告すれば、運営者は来場者がケガをする可能性があると考えて、防止措置を講じなければならなくなる可能性があります。そう考えれば、『威力』に当たる可能性は否定できないと思います」
今回の逮捕については、「やりすぎではないか」と疑問の声も上がっている。現在の法律では、ドローンを飛ばすこと自体は適法行為なので、殺害予告などのような「犯罪行為の宣言」と同列に扱うべきではないという指摘だ。
「たしかに、ドローンを飛ばすと予告しただけで威力業務妨害で逮捕というのは、ちょっとやりすぎという気もします。
ドローンを飛ばすことについて、法規制が追い付いていないことも関係しているのではないでしょうか。ドローンはさまざまな利用法が期待されていますが、盗撮など、悪用の危険も否定できません。しっかりとルール化することが必要ではないでしょうか」
西口弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/