Aさんは40代前半の女性。大手商社勤務の夫と職場で知り合い、海外赴任に伴い退職。子ども1人を育てながら20年あまり専業主婦をしてきました。
夫はたびたび浮気をし、そのたびに見て見ぬふりをしていましたが、子どもが独立するのを機に離婚を決意。慰謝料と財産分与を求めることにしました。
夫は「君に分与できるものなんてないよ」と言うが
ただし結婚後、Aさんの収入は皆無で、すべて夫の勤務先からのもの。夫は、不動産や証券、金融商品などの財産は「ぜんぶ自分で稼いだり運用したりしたものなんだから、君に分与できるものなんてないよ」といいます。
しかしAさんは、曲りなりにも夫の身の回りの世話をしてきた自負があります。Aさんが家庭を守らなければ夫もここまで稼げなかったという意味では、財産は半分くらいもらってもおかしくないとすら思っています。
実際のところ、どこまでの分与が認められるのか。男女問題や離婚に詳しいアディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に聞いてみた。
――財産分与というのは、結婚してから離婚するまでの間に2人で築いた財産を、離婚の際に分けましょうね、という手続きです。結婚後に貯めたお金やマイホーム、車等々についてどのように分けあうのか、気になるところですよね。
裁判所の考え方では、夫婦が一緒に暮らしている間に得た財産というのは、原則として、夫婦2人で協力して作り上げたものであり、これを分配するときの分け前も2分の1ずつとなっています。
妻の給料よりも夫の給料が高い家庭であっても、妻が専業主婦で夫の給料のみが収入という家庭であっても、財産分与における夫婦の取り分は半々ということになります。
夫が全力で稼いでこれたのは、妻が家事を引き受けてきたから
今回の場合も、Aさんの夫が全力で稼いでくることができたのは、Aさんが家事を引き受けてきたからですよね。なので、対象となる財産の2分の1をAさんがもらえるということになります。
たとえば、結婚してから貯めた夫名義の貯金が500万円、Aさん名義の貯金が100万円、夫名義のローンを完済し離婚後は夫が所有することになったマンション(評価額400万円)があるとすると、Aさんが財産分与として求めることができる金額は、(夫の財産【貯金500万円+マンション400万円】-Aさんの財産100万円)÷2=400万円ということになります。
財産分与の場合、マイナスの財産がある場合は要注意です。たとえば夫婦の間の見るべき財産がマンション(評価額1500万円、残ローン1700万円)のみというように、ローンの関係からプラスの財産よりもマイナスの財産が大きくなってしまうということもよくある話です。
しかし、夫婦のプラスの財産を半分ずつにするのと同じように、マイナスの財産も半分ずつ負担するのか、というとそうではありません。夫婦のどちらかがこのマンションに住み続ける代わりに、残りのローンを返し続けるなど、マイナス分をどちらがどう負担するかなどをよく考えて、よりよい解決方法を探る必要があります。
「おまえは家にいるばかりで、社会のことを何もわかってないんだ」なんて偉そうに言い放って、専業主婦である妻には財産の取り分なんてないと思い込ませようとする夫がよくいますが、そんなことはないんですよ! ずるい夫に騙されて不利な条件で離婚してしまわないように、弁護士に相談して正しい知識を得ましょう。
【取材協力弁護士 プロフィール】
島田 さくら
弁護士(東京弁護士会)。中央大学法学部卒業、大阪大学大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所所属。未婚で妊娠・出産し、一児の母。波乱万丈な人生経験をもとに、悩める女性の強い味方として労働問題、男女トラブルなど身近な法律問題を扱う。相談無料!弁護士が教えるパーフェクト離婚ガイド(アディーレ法律事務所)
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