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乃木坂46の象徴はやはり生駒里奈であるーー12th選抜のメンバー構成とその可能性を読む

2015年05月20日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46『命は美しい(通常盤)』

 乃木坂46の中心に生駒里奈が戻ってきた。7月22日発売となる乃木坂46の12thシングル選抜メンバーが発表されたが、そのセンターポジションには2013年3月の5thシングル『君の名は希望』以来、およそ2年ぶりに生駒が選出された。12thシングルのメンバーに関してまず特筆すべきは彼女の立ち位置である。


(参考:Flower、乃木坂46、chay……アーティスト出身“専属モデル”はなぜ増えた?


 選抜発表が行なわれた5月10日放送の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)で生駒自身が「乃木坂46を作っていく段階でのセンターしか経験していない」と述べていたように、グループの知名度が急上昇していく時期にセンターを務めていたのは生駒ではなく、白石麻衣、堀未央奈、西野七瀬、生田絵梨花といったメンバーだった。認知度にともなってCDセールスも上昇していくが、シングル売上が毎回50万枚を超えるようになって以降の時期に生駒がセンターに立ったことはなかった。かつて彼女がシングル表題曲のセンターに立っていた頃とは規模の違うグループになった今、周囲に「教えてもらいながら」センターを務めていくと述べた言葉は謙遜ではないのだろう。


 しかし、6thシングル『ガールズルール』以降、センターを経験しなかったおよそ2年の間、生駒は決して単に中心から周縁へと立場を移していたわけではない。むしろ、ライブにせよマスメディア露出にせよ、中央から外れながらも、端々で見せるその絶対的な存在感の強さは変わることがなかった。この約2年間は、ポジションの如何にかかわらず、彼女がどこまでも乃木坂46の象徴として在るのだということを浮き彫りにした期間でもあったように思う。生駒里奈という人は、自分自身の立場だけでなく、常に乃木坂46というグループのポジションや世間的な見え方に自覚的なメンバーである。その彼女の視野は、センターから一歩引いてグループを見渡すことでさらに深まったであろうし、そうした人物だからこそ、ここ一年ほどに経験したAKB48との兼任も、グループにとって大きなフィードバックをもたらすはずだ。先述の『乃木坂工事中』では、今回の選抜発表でなかなか自分の名前が呼ばれなかったことについて、一旦アンダーに行くのかと思ったと吐露したが、その発言の意図は自身のポジションの上下そのものよりも、ライブ中心の活動が強みになっているアンダーにAKB48で培ったパフォーマンスを伝える役割になるのではという予測からのものだった。もちろん生駒里奈個人としての野望がないはずはないが、己よりもグループ全体の現状を見通して必要な役割を考えるような彼女の姿勢は、どこのポジションに立とうとも頼もしい。


 その生駒が、名実ともに乃木坂46のセンターに返り咲いた。彼女自身がグループの象徴としての足場を固め、また外部活動を含めた経験で視野を広げたのと同様に、彼女の脇を固める福神メンバーたちもまた、かつて生駒がセンターだった頃とはその見栄えが大きく変わっている。白石、西野、生田らセンター経験者はそれぞれにいつでも中央に立てる強さを持っているし、他の十福神もそれぞれにソロ仕事等で活躍の場を広げている。そうしたメンバーで周囲を固めた生駒が、久しぶりに立つ表題曲のセンターでどのような姿を見せるのかに注目したい。


 また、今回の選抜メンバーで忘れてはならないのが、3列目の充実である。特にアンダーライブが始まり選抜とアンダーが拮抗して以降、アンダーで目覚ましい活躍を見せたメンバーをなかなか選抜にすくい上げられないという歯がゆさが、シングルリリースのたびに繰り返されてきた。今回の選抜では、際立った役割を担いながらも常に選抜とアンダーのボーダーにいたメンバーが、比較的多く顔を揃えることができた。かねてより随所で頼りがいを見せてきた衛藤美彩をはじめ、アンダーライブ成功の立役者になった伊藤万理華や井上小百合、齋藤飛鳥、斉藤優里といった顔ぶれが選抜に同時に入ることは稀有である。ライブグループとしてのアンダーを引っ張ってきた彼女たちが入ることで、テレビなどで披露されることの多い表題曲のパフォーマンスにも良い効果がもたらされるだろう。アンダーが組織として充実してきたことが、シングル選抜の活動に反映されるならば、それもまたこの一年余りで乃木坂46が育んできた大きな成果になる。


 ただし、実力者たちを並べたこの3列目の人選は、また別のジレンマをもたらすものでもある。すなわち、2期生メンバーが選抜に参入する枠を狭めてしまうことと裏表になるのだ。今回、2期生メンバーで選抜入りしたのは新内眞衣のみとなった。これはまず、今回の選抜からはセンター経験者の堀未央奈が漏れているという、大きな波乱を意味する。ただ、この人選の難しさはそればかりではない。アンダーライブと正規メンバー全員昇格を通じて1期生とようやく足並みを揃えることができた2期生が、ともすればここでまた置いて行かれるのではないかという危惧も生じかねない。12thメンバー活動期間にどのようにバランスをとっていくかがポイントになるだろう。リリース前後の期間には舞台『じょしらく』、『真夏の全国ツアー』、『16人のプリンシパル』と、1期生と2期生、選抜とアンダーが混在する大きなイベントが相次ぐ。そこでどのような関係性を示していけるかがその先のグループを占うことになる。


 乃木坂46のシンボルといえる生駒がセンターに再度配置され、その周囲をセンター経験者らグループを大きくしてきたフロントメンバーが固めるこの構図によって、12thメンバーは新たな仕切り直しに入ったとも言える。中央に配される人物は同じでも、それぞれが2年の間で築いてきたものも、グループとしての環境の変化も決して小さなものではない。この2年、どこに立とうとも背負うものが軽くなった時期などなかったであろう生駒を中心に、幾重にも頼もしくなったはずの彼女たちのパフォーマンスに期待したい。(香月孝史)