NHKの朝の情報番組「あさイチ」(5月19日放送)で、学生を困らせる悪質な「ブラックバイト」の実態が紹介され、ネット上で話題を呼んでいる。
ブラックバイトとは、学業に支障が出るような勤務を強要するアルバイトのこと。番組では、今年大学を卒業した女性(23)が、その経験を語った。女性は大学在学中4年間、週5日スーパーでレジ打ちのバイトをしていた。
しかし労働環境は悪かった。シフトを組む際に、この日は休みたいという指定を月3日だけ指定できるが、あとは店側が決めてしまう。1か月前に決めるので、ゼミで急に休みたいと思っても、代わりの要員を見つけなければいけないのだという。
時給換算したら「最低賃金未満」のケースも
極めつけは「自爆営業」だ。恵方巻きやウナギ、クリスマスケーキといった季節モノの商品を定期的に買わされた。予約の紙にサインしないと帰れない。
「当然の常識という感じで、みんな買っているのを見ると言いづらい。(自分だけ)変に思われたくない」
ブラックバイトの問題に取り組む「ブラックバイトユニオン」の活動も紹介された。同団体には現在月に50件もの相談が寄せられる。相談に訪れた大学3年生の男子学生は、現在塾講師のアルバイトをしている。
80分の授業を1日2コマ持ち、勤務時間は160分とされていたが、実際は授業の準備や教室の清掃などのために、拘束時間は245分になっていた。
しかし、給与が払われていたのは160分の分だけ。授業以外の85分は無給で働いていたことになる。時給は1200円だったが実質的には783円になり、東京都の最低賃金888円を下回っていたという。
授業に慣れてくれば、準備時間は短くなるかもしれないが、授業後の清掃は明らかに労働時間としてカウントされるべきだろう。
弁護士は「記録」と「重要書類の保管」をアドバイス
学生のバイトなのだから辞めてしまえばいいという見方もあるが、こうしたブラックバイトでは辞めづらい状況も整っている。サービス業などでは、人件費削減のためほとんど非正規で店を回している所も多い。
そのため、自分が辞めると誰にどんな迷惑がかかるか、ということが簡単に想像できてしまう。雇用者側もこうした点に漬け込み、「今辞めるのは無責任だ」「社会人失格だ」と学生を追い込むのだという。
では、働いた先がブラックバイトだった場合、どうすればいいのか。労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は、まず証拠を残すことを推奨する。
勤務時間や休憩時間を、日付とともにメモに残しておく。時間だけでなく、その日に職場であったことを記録したことを記録しておくことも有効だという。雇用契約書と給与明細などの重要書類を保管しておくのも大切だ。
損害賠償は「払わないで済むケースがほとんど」
ブラックバイトの契約書の中には、「途中で辞めた場合は損害賠償請求する」と記述されていることもある。番組では、実際に送られてきた損害賠償請求の書類も紹介。額は数万円から数十万円という感じだが、中には297万円というものもあった。リゾート系の泊まり込みのバイトで、辞めるまでの宿泊費などを要求してきたのだという。
学生だと損害賠償という言葉だけでもびっくりしてしまうが、佐々木弁護士は仮に請求を受けても、すぐに払ってはいけないとし、「必ず専門的なところに相談してください。払わないで済むケースがほとんどです」と話していた。
今回のブラックバイト特集はネットでも話題になり、「責任感のある子がブラックバイトで心も身体も潰されるのは許せん」という声や、「自分もクリスマスケーキとか父の日とかのギフト買ってって申込書渡されたことある」といった実体験が寄せられいた。
塾講師のアルバイト経験のある虚構新聞社社主のUK氏も「塾講のブラックバイト問題は『ここで辞めたら生徒を見捨ててしまう』っていう情も絡んでかなかなか辞めにくい」と投稿。「子どもと勉強が好きなら何とか持ちこたえられる職種ですが、若い人を使いつぶす側面は強いのではないかなあ」と呟いていた。
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