イスラエルにあるヘブライ大学のシドニー・エンゲルバーグ博士が、心理学の「組織行動」の講義中、泣き出した学生の赤ん坊を抱えて、教室を歩き回りながら講義を続けた写真が世界中で話題になっています。
5月11日にFacebookに投稿されて以来、ページビューは5000、Imgurでは110万とバズっています。日本でもライブドアニュースが取り上げて、5000件を超える称賛のツイートがあがっているようです。(文:夢野響子)
娘も感激「私の父は最高です」
経緯をあらためて振り返ると、講義の最中、赤ん坊がひどく泣き出すと、母親の学生は赤ん坊を連れて外へ出ようとしました。すると博士は躊躇せず赤ん坊を抱きとり、そのまま歩きながら講義を続けると、赤ん坊もすっかり泣きやんだのです。
この様子を、どうやら同じ教室にいた他の学生がスマホで撮影し、博士の娘のサリット・フィッシュべインさんが友達の間でシェアしようとフェイスブックに投稿しました。その文面には、ヘブライ語でこう書かれています。
「父はこれまでも、講義に学生が赤ん坊を同伴するのを許可してきました。これこそ"組織行動"と呼べるものだと思います。こんな講師が他にいるでしょうか。私の父は最高です」
エンゲルバーグ博士が赤ん坊を抱えて講義を続ける写真が世界中で反響を呼んだことで、娘のサリットさんはカナダのテレビインタビューに答えました。「家に幼児がいた時は、父も紙おむつを換えたり、粉ミルクも作ったりするのが普通の家庭でした」と回想しています。
彼女によれば「このような行動は、とても私の父親らしい」し、この大げさな反応は、おかしくもあり、少し恥ずかしくもあるそうです。彼女は「教育は決められたカリキュラムを学ぶことだけではなく、お手本になる人物を作り出して価値を教えることだというメッセージも含まれていると思う」と答えています。
「邪魔ではない。かえって授業に花を添えてくれる」
当のエンゲルバーグ博士も、イスラエルのラジオインタビューに答えており、世間の反応の大きさに戸惑いを隠せない様子でした。自分にも孫がおり、赤ん坊が泣いていると抱き上げずにはいられないとのこと。
「講義中に気が散りませんか」というインタビュアーの質問には、「長年講師をしているから大丈夫」。大学に限らず、自分の講義ではいつも赤ん坊同伴を許可していることについては、「赤ん坊は邪魔をしないし、かえって授業に花を添えてくれる」のだと言っています。
博士の講義をとっている学生の一人は、フェイスブックに「これは珍しいことではありません。ちょうど昨日も、先生は私の友人の赤ん坊を抱き上げました。これはイスラエルのよさだと思います」と投稿しています。
ちなみに、ヘブライ大学の構内には、赤ん坊の紙おむつを取り替えられるスペースなどもあちこちに設置され、ベビーカーや車椅子での移動もスムーズにできるスロープがいたるところに整備されており、若い母親である学生への配慮もかなり見受けられます。
赤ん坊連れの登校が許されるイスラエルの大学
とはいえ、サリットさんが「こんな講師が他にいるでしょうか」と書いているとおり、すべての講義で同じような光景が見られるわけではありません。
子守りが見つからない場合など必要があれば赤ん坊連れでも登校は可能ではあるものの、すべての講義に赤ん坊連れで入れるわけではなく、講師の考え方次第のようです。
ちなみに夏休み期間には、女性職員の子どもたちの姿が構内にも見られます。赤ん坊や子どもを邪魔扱いする風潮はまったくありません。他人の子どもにも寛容で、しかし静かにすべき場所で騒げば叱るというのがイスラエルのお国柄です。
(参照)Professor 'overwhelmed' by online reaction to photo of him calming student's child (CTV NEWS)
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