遅くまで残業するハードワーカーを応援する「日本残業協会」が5月14日、都内で「残業ゼロ会議」を開催した。壇上には、片づけのコンサルティングをする「かたづけ士」として活動している小松易さんが登場し、職場の片付け方法をレクチャーした。
残業協会の代表を務める藤橋遼さんが会の冒頭で、4月に閣議決定された「残業代ゼロ法案」や大企業の「朝方勤務」など、労働環境をめぐる最近の動向を説明した。
「昔は頑張っている姿勢や、どれだけ長く働いたかで評価された。しかし今後は、時間内にいかに質の高いパフォーマンスを出すかが求められるようになる」
そこで、デスクの上を片づけて仕事の効率アップを図る、というのが今回の趣旨だ。
「社長を待たせてでも片付ける」ぐらいの気持ちで
小松さんはまず、片づけが苦手な人が使っている「〇〇時間」は何かと問いかけた。参加者からは「ムダな時間」「ダメな時間」といった回答が出るが、正解は「さがす時間」だ。
会社で働く人に「一日トータルでどのくらいの時間、ものを探しているか」と聞くと「30分」という回答が多いのだとか。1時間に3~5分は探しものをしている計算となる。中には「2時間」と答えた人もいたという。
残業を減らすためには、この時間をいかに減らすかがポイントになってくるが、デスクやファイルボックスをただキレイに整理するだけでは、片付けは上手にならない。大事なのは「無意識でやってしまっている習慣」を見直すことだとする。
仕事が忙しいと、受け取った書類をついデスクの上に置きっぱなしにしてしまいがちだが、こうした習慣を変えて「すぐに片づける」ようにする。この「すぐ」は、まさに「今」であり、仕事を中断してでも片付けるのがポイントだ。もしどうしても難しい場合には「あとで」と書いたボックスに入れる、といった工夫をする。
「社長を待たせてでも、片付けるのを優先すること(笑)。まあ、そこまでいかなくても、『あとで』という悪い習慣をいかに食い止めるかがポイントです」
「空中戦」を心がけ、デスクに置く前に処理してしまう
デスクが散らかっている人は、書類をもらうと、とりあえずデスクに置いてしまう。これを片付け業界では「地上戦」と呼ぶ。一方、片付けが得意な人は「空中戦」を心がけている。
サインが必要なものはその場で済ませて次に渡し、内容確認が必要なものはその場で読み、保管が不要ならデスクに置く前に、即座に捨ててしまうという。
ただ、一度に一気に片付けようとすると、いったんキレイになっても後々「リバウンド」することがある。悪い習慣を変えるのには、まずは簡単なことから始め、毎日少しずつ片付けるのが有効だという。
イベントでは、参加者に「21日間習慣化シート」という用紙が配られた。「変えたい行動」とその「真逆の行動」を記入し、達成すると1日ごとにチェックを入れていくというもの。
片付けが苦手な記者の場合は、「飲み終わったペットボトルを机の上に置きっぱなしにする」という行動を「飲んだらすぐ捨てる」に変えると記入。「郵便物はすぐに封を開けて整理する」と書く参加者もいた。
ちなみに今回の参加者は20人強。30~40代が中心で、男性が3分の2だ。小松さんによると、片付け業界では参加者も講師も8~9割が女性なので、かなり男性率が高かったようだ。大手企業の総務課で社内の整理整頓推進活動をしている男性もおり、仕事の効率化につながる「片づけ」に興味津々の様子だった。
片づけが苦手な人はまずは財布から
小松さんはキャリコネニュースの取材に対し「片づけができるようになれば、仕事の効率はアップします」と断言した。
「散らかっているデスクを前にすると、人は知らず知らずのうちに視覚情報を受け取り、気が散ってしまうものです。喫茶店で仕事しようとするのも、何もない状況を求めているからといえます」
故スティーブ・ジョブズはデスクの上が汚かったことで知られているが、「天才は視覚情報を処理するのが速かったり、そうした環境でも集中する力があったりするのでしょう」ということで、あくまでも例外の様子。オフィスで働く普通の人は、キレイに片付いた環境の方が集中できるという。
片付けがどうしても苦手な人は、まず簡単にできる「財布の中」から整理するのがいいのだとか。「財布は人生の縮図ですよ!」という小松さんの言葉に、記者はポイントカードとレシートでパンパンになった自分の財布を思い出すのであった。
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