2015年05月18日 15:02 弁護士ドットコム
人気のスマートフォンアプリ「ねこあつめ」によく似た「いぬあつめ」が登場し、物議を醸した。「ねこあつめ」は画面上の庭先に、ごはんやおもちゃを置いておき、集まってきた猫たちを眺めて癒やされるゲームだ。集めた猫を手帳に記録する機能もある。
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一方の「いぬあつめ」も、画面上の庭先にごはんを置いて、集まってきた犬を眺めるアプリだ。集めた犬を手帳に記録する仕組みも「ねこあつめ」と同じだ。「ねこあつめ」はヒットポイント社が開発しているが、「いぬあつめ」はまったく別の個人が開発したとされる。
後発の「いぬあつめ」について、ツイッター上では「これはアウト」という声が多く出ているが、なかには「ゲームなんてパクりパクられの世界だろ」という声もある。話題になったのは4月中旬だが、注目を集めた「いぬあつめ」は5月18日現在、AppStoreでダウンロードできない状況になっている。
そもそも、あるゲームのコンセプトが別のゲームと良く似ている場合、著作権法などで保護されないのだろうか。知的財産権にくわしい早瀬久雄弁護士に聞いた。
「結論から言えば、ゲームのコンセプトが似ているというだけでは、著作権侵害になりません」
早瀬弁護士はこう説明する。
「そもそもの前提として、著作権法は、具体的に『表現』されたものを保護します。しかし、アイデアそれ自体は『表現』ではありませんから、著作権法で保護されません。
また、イラスト等のように表現されたものでも、それがありふれた表現であれば、これも著作権法で保護されません。ありふれた表現に独占権を与えてしまうと、他人の表現行為を過度に制限してしまうからです」
その点でいうと、今回のケースはどう評価できるのだろう。
「『ねこあつめ』でいえば、『庭先にご飯やおもちゃを置いておき、集まってきた猫たちを眺める』『集めた猫を手帳に記録する』といったゲームのコンセプト自体は、あくまでアイデアです。著作権法では保護されないでしょう」
では、ゲームの画面上に表現されたキャラクターや背景は、保護されないのだろうか。
「ゲームの画面上に具体的に表現されたもの、『ねこあつめ』でいえば庭先や手帳のイラストなどは著作権の問題が生じます。
ただ、それがありふれた表現であれば、完全な模倣(デッドコピー)と評価できるようなケースでない限り、著作権侵害とまではいえません。
『ねこあつめ』のイラストを見る限り、ありふれた表現と判断される可能性があると思います。たしかに『いぬあつめ』のイラストもこれと似ていますが、デッドコピーとまではいえないので、著作権侵害は認められにくいのではないでしょうか」
著作権以外で、なにか法的に問題はないのだろうか。
「不正競争防止法や民法上の不法行為責任の追及が考えられますが、これらは少々ハードルが高いです。この『ねこあつめ』の件も、おそらく難しいのではないかと思います」
早瀬弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
早瀬 久雄(はやせ・ひさお)弁護士
特許技術者を経て、弁護士登録。名古屋駅前にて、特許事務所とのコラボにより知財ワンストップサービスを提供し、弁理士として出願業務にもかかわる。ブログにて、知財などの情報も発信中。
事務所名:あいぎ法律事務所
事務所URL:http://law.aigipat.com