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浮気夫が「社宅」を解約して「妻と子」を放り出したーー身勝手な夫にどう対抗できる?

2015年05月18日 11:31  弁護士ドットコム

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社宅住まいの専業主婦の女性から「夫が離婚の意思を固めて、勝手に別居を始めてしまったうえ、1ヶ月以内に社宅から出て行けと言われている」との悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。


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騒動の発端は、夫の浮気だ。妻に浮気がバレると、夫は早々に弁護士をたて、離婚したいことやキャッシュカードの返却、さらに社宅の契約解除を通告してきたのだという。そして、妻と3人の子どもたちをおいて、勝手に1人で家を出ていった。



生活費も支払われない中、専業主婦である相談者が、3人(9歳、6歳、4歳)の子を抱えて、途方に暮れるのも当然だ。夫の身勝手と思える行動に、対抗する方法はないのだろうか。夫に家族の生活費を支払う義務はないのか。離婚問題にくわしい田村ゆかり弁護士に話を聞いた。



●「夫に浮気されて、これではあんまりです」


「夫に浮気され、幼い子どもを3人抱えて、さらに社宅を追い出されて・・・これではあんまりですよね。ここからは交渉です」



田村弁護士はそう語る。



「不倫の証拠がどの程度あるか、財産状況はどれくらいかを把握したうえで、慰謝料はいくら請求できそうか、夫がどのくらい離婚を急いでいるか等を、まず整理してください。



また、夫が相手の女性と結婚したがっているのであれば、妻の要求に応じて、早く離婚したいはずです。また、夫が浮気したのですから、夫とその浮気相手に対して、不貞行為(不倫)に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。



そこで、請求できるものは、積極的に請求することをお勧めします」



●「社宅の契約」は夫の一存で決められるか?


相談者は小さな子を抱えた専業主婦であり、当座の生活への不安も強そうだ。特に、社宅を追い出されると、新しい住まいの入居費から引っ越し費用、生活費まで全てを工面しなければならない。そんな相談者は、身勝手な夫に対して、どんな請求ができるのだろうか。



「まず、社宅の使用に関しては、会社と夫との間で賃貸借契約が結ばれているため、契約当事者である夫は、妻の同意がなくても賃貸借契約を解除できます。残念ですが、妻側から解約に異を唱えることはできないのです。



ただ、夫婦は婚姻から生ずる費用(婚姻費用)を分担する義務があり(民法760条)、この義務は夫婦が別居しても続きます。相談者の場合も当然、婚姻費用を請求することができます」



婚姻費用とは、日常の生活費のことだ。衣食住の費用や教育費、医療費、交際費が含まれる。では、引っ越し費用についてはどうだろうか。



「婚姻費用とは、互いの生活レベルが同等になるよう助け合う『生活保持義務』に基づくもので、家族が共同生活を保持するために必要な費用のことを言います。別居のための引っ越し費用や新しい住まいの敷金・家賃などは、家族が共同生活を保持するための費用とは言えませんので、残念ながら請求できるものではありません。



婚姻費用は一般的に、夫の収入や妻の収入、子どもの年齢等を当てはめる計算式を用いて、分担額を決定します。婚姻費用の分担額について、夫婦間での話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることになります」



夫の身勝手さは「あんまり」なものだ。しかし、妻と子どもたちが新しい生活をスタートさせるため、夫のワガママに立ち向かう方法はあるようだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。平成27年度沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/