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沢田チャレンジが語る、時代の変化と音楽の挑戦「全部のオセロをひっくり返したい」

2015年05月18日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

ザ・チャレンジ『スター誕生』インタビュー

 ミニアルバム『スター誕生』でメジャーデビューしたトリプルボーカルの5人組バンド、ザ・チャレンジ。彼らは「アイドルブーム以降の時代」に正しく対応したロックバンドである。エンタメ精神たっぷりのパフォーマンス、思わず二度見するルックス、そして何より人懐っこくポップな楽曲。それが、バンドの痛快な魅力に繋がっている。楽曲には過去のロックや歌謡曲へのオマージュも詰め込まれていて、メタ的な楽しみ方もできるんだけど、実はストレートに熱いことを歌っていたりもする。そういう意味でも正しくアイドルを体現している。


ーーというようなことを音楽雑誌『MUSICA』のレビューに書いたら、それを読んだリーダーの沢田チャレンジから「ぜひ話がしたい」と連絡が来た。リアルサウンドでインタビューをしたいという話だ。せっかくなので、デビュー作の内容だけでなく、今のロックシーンとアイドルシーンについて、時代の変化と音楽のあり方について、たっぷりと語り合った。(柴那典)


・「わかりやすく他のバンドと違うことがやりたい」


ーーまず、ザ・チャレンジはメジャーデビュー作の一曲目で「僕はアイドル」と言い切っていますよね。それはどういうところから出てきたアイディアなんでしょう。


沢田チャレンジ:それは、他のロックバンドがやらないようなことをやりたいというのが大きいですね。僕らはインディーズの頃から、メジャーデビューという目標をかなり具体的に提示してきたんです。2枚目のミニアルバム『みんなのチャレンジ』の「メジャーデビュー」という曲で「ソニー、ビクター、EMI、メジャーデビューさせてくれよ」って歌うくらいで。で、そんなバンドがメジャーデビューするタイミングで「僕はアイドル」と言うのが面白いんじゃないかと思った。わかりやすく他のバンドと違うことがやりたい、というのが根本にありますね。


――他のバンドがやらないようなことをやりたい、というのは?


沢田チャレンジ:やっぱりそうじゃないとザ・チャレンジをやってる意味がないと思ったんです。ただ格好いいバンドなんて他にもたくさんいるから。あと、僕らはメンバーそれぞれ過去にバンドをやっていたこともあるので、2周目で前と同じことをやっても仕方ないし。そういう意味で、普通のバンドとは違うぞという宣言をしたという感じです。


ーーなるほど。


沢田チャレンジ:あとは、ゼロ年代に下北沢でバンド活動していて感じていたんですけれど、あの時代のロックシーンは僕にとっては窮屈だったんですよね。あまり多様性がなかった。ももクロ(ももいろクローバーZ)が出てきた時に、ロックリスナーがアイドルの方に流れていったのは、そういう時代の反動もあるんじゃないかと思っているんです。


ーー反動というと?


沢田チャレンジ:本当は、もともとはバンドにもアイドルの要素があったし、夢を見せる部分もあったと思うんです。でも、それがゼロ年代に無くなってしまった。だから、ザ・チャレンジはバンドの本来あった姿をやってるつもりなんです。でも、それをあえて今のアイドルシーンから逆輸入してるように見せている。


ーーその話、すごくわかります。というのも、ロックシーンだけじゃなく、J-POPシーン全体において、ゼロ年代は「等身大の時代」だったと思うんです。だからバンドは普段着でステージに立っていたし、着うたシンガーはリスナーに寄り添った歌詞を歌っていた。そのモードが切り替わったのが2010年から2011年の頃だったと思っていて。


沢田チャレンジ:なるほど。ももクロが出てきた頃ですね。


ーーそこで起きたのは「共感」から「機能」への変化だったと思うんです。今のフェスの現場で起きてる四つ打ちロックのブームもそうだし、EDMもそう。ももクロ以降のアイドルカルチャーもそうだと僕は思っていて。


沢田チャレンジ:アイドルにおける機能ってどういう意味ですか?


ーー等身大の共感ではなくて、一緒に盛り上がれる機能性が音楽にあるということだと思います。加えて言うと、今のアイドルの女の子って一種のヒロインのような存在になっていると思うんです。ももクロが戦隊モノのイメージなのが象徴的で、聴き手の日常に寄り添うものというより、ディズニーランドみたいにファンタジーの物語を提供するものになっている。


沢田チャレンジ:なるほど。それが現実逃避するために機能するわけですね。


ーーで、ザ・チャレンジは2周目だって言ってましたけれど、きっと1周目では等身大のロック、共感のロックをやっていたんじゃないかと思うんです。


沢田チャレンジ:まさにそうですね。


ーーでも、そこに行き詰まってしまった。沢田さんも、本名の自分とステージに立つ自分の辻褄が合わなくなったんじゃないか、と。


沢田チャレンジ:その通りです。ゼロ年代って、柴さんが言った通り等身大のロックが大勢を占めていたと思うんです。でも、実際にアーティストが等身大なわけではないんですよね。リスナーからしたら、アーティストが身近に感じるメッセージを発してくれているし、日常の延長線上に音楽がある。でも、ロックミュージックを職業にしている人達は、一般人の日常とは違う日常を暮らしているわけで。そんな中でロックバンドをやってると、自分の人生の進み方とバンドでの自分のあるべき姿がどんどん乖離していくんです。年齢を重ねてロックと日常を共存させるのがすごく難しくなっていくんですよね。本名を背負って、自分の人生を音楽に乗せていくことへの窮屈さを感じてきてしまった。ロックと一緒にいたいのに、自分の心にある本当のことを歌おうとすると、逆にロックが不自由になってしまった。


ーーですよね。僕が思うに、辞めてしまったバンドマンの多くはそこが理由だと思うんです。売れないからとか、メンバー間の仲が悪いからとか、単にそういうことじゃなくて。自分のやってることに辻褄が合わなくなったら続けられない。


沢田チャレンジ:簡単に言うと、例えば結婚をして家庭を持ってしまったらロックがやりにくくなるとか、そういうことだってありますからね。もちろん、そういう日常の部分を隠したりしつつ、どうにか辻褄が合わせながらリスナーと等身大のメッセージを歌っているアーティストもいる。でも自分は上手くいかなかった。その時に、サングラスをかけて「沢田チャレンジ」と名乗ることによって、僕にとってロックが自由なものになった。また楽しくなったんです。そこが何より大きかった。それに尽きますね。


・「ここまでロックミュージックに執着してるのは、自分でも謎」


ーー改めて聞きたいんですけど、沢田さんはバンド以外でも仕事をやっていますよね。


沢田チャレンジ:はい。


ーーしかもそこでもちゃんと結果を出している。なんでそこまでロックにこだわるんでしょう?


沢田チャレンジ:それは『MUSICA』の有泉さんにもしつこく訊かれたんですけど、そこはやっぱり「好きだから」以外に答えられないんですよ。別にバンドでバカ売れしたいとか、お金持ちになりたいとか、大成功したいとか、そういう願望もあんまりない。もちろん評価されたいとは思ってます。でも、ロックにこだわり続けるのは「好きだから」でしかないんです。


ーーモテたいという気持ちはあります?


沢田チャレンジ:もちろんあります。


ーー結婚して子供が産まれてもモテたい?


沢田チャレンジ:そうですね。格好いいと思われたい。単にルックスじゃなくて、男として格好いいと思われたいっていうのはもちろんある。だけど、別にモテたいからバンドを始めたわけでもなかったんです。こういう言い方すると反感買うかもしれないけど、バンドやる前の学生時代から普通に彼女とかもいたし。


ーーははは!


沢田チャレンジ:ロックがなかったら社会と繋がれないタイプでも全くなかったんです。だから、なんで自分がここまでロックミュージックに執着してるのは、自分でも謎。そこだけは自分でも紐解けてないところなんですよね。でも、そこがザ・チャレンジの面白さになってるのかもしれない。ただの戦略で考えつくされたバンドで終わらないのはそこなのかもしれないとは思います。


ーーそこがザ・チャレンジの面白さだというのは、どういうことなんでしょう。


沢田チャレンジ:結局、フォーマットがいくら完璧に作られて戦略的にやっていても、ステージで垣間見えるのってそこからこぼれた素の部分だったりしますよね。ももクロだってそうだと思うんです。常に笑顔でやってるんだけど、負荷をかけられているから、どっかでギリギリのところが見えてしまう。そこにグッときたりする。実はそういうところは自分にもあるのかもしれない。どれだけ隠そうとしても出ちゃう、という。


ーー沢田さんは、ももクロ以降のアイドルカルチャーをどんな風に見ていますか?


沢田チャレンジ:実は僕、そんなにアイドルは詳しくないんです。自分の中ではももクロの衝撃が全てなんですよ。


ーーももクロって、それまで「アイドルは○○しない」と思われていたことを全部やってしまう痛快さがあったわけですよね。ザ・チャレンジとしても、そこに影響を受けている部分がある。


沢田チャレンジ:ありますね。まさに仰る通りです。だからザ・チャレンジは表面的な意味でアイドルっぽいことをやりたいわけじゃない。ももクロは「アイドルがやりそうにないことをアイドルがやる」ということにカタルシスがあったわけですよね。そこが最高にロックだと思った。それをロックバンドでやってるんです。だから、ロックバンドがやりそうにないことを、あえてやる。そこが面白いという。


ーーたとえば?


沢田チャレンジ:インディーズの頃に出した最初のミニアルバムでは、ウチのメンバーが山手線を一周走ってお店回りしたんです。それをPVにもして。東京駅、秋葉原、池袋って一駅一駅回って、最後に渋谷に戻ってくる。そういうロックバンドがやらないようなことをやる方が面白いし、そこに意味があれば絶対楽しんでもらえると思うので。


ーー「ロックバンドがやらなさそうなこと」というのには、ファンとのコミュニケーションも含まれてますか?


沢田チャレンジ:それもありますね。アーティストは神聖なもので、ステージ以外の日常は見せないとか、格好つけてないといけないっていうことがセオリーなんだとしたら、そこを変えていった方が面白い。その方が新しいコミュニケーションの形が作れると思います。


ーー握手会みたいなこともやります?


沢田チャレンジ:ただ、アイドルグループがやってることをなぞって、そのままやりたいわけではないんです。だから握手会とかはやってなくて。唯一やってるのは撮影会かな。


ーー僕は、ロックバンドは握手会もサイン会も全然やっていいと思うんですけどね。


沢田チャレンジ:それはなんでですか?


ーー仕事柄、フェスの楽屋エリアによく行くんですよ。そこでいつも思うことがあって。たとえば夏の野外のロックフェスに行くと、ミュージシャンが楽屋で遊んでたり、出番が終わったらすぐ帰ったりする。もちろん、何をやってもいいんです。でも、その前の週に行ったアイドルフェスと、どうしても比べちゃう。「この時間帯にアイドルの女の子たちはお客さんと握手してCDを売ってるのになあ……」って思っちゃう。特に新人バンドに関しては「それでいいの?」って。


沢田チャレンジ:それは僕も思うところはすごくありますね。その通りだと思います。だから、フェスでサイン会をやるブースがあったら、僕らは全部エントリーします。こないだの「VIVA LA ROCK」でもやりましたし、トークショーの誘いがあったら全部やる。最初から最後までずっと動き回る。そこにビジネスチャンスがたくさんあるのに、それをみすみす逃すのは嫌ですから。だから、リリースのタイミングではCDが一枚でも多く売れるようにしたい。いいモノを作ったという自信があるわけですから。チャンスがあれば全てのことに対してエントリーしてやるべきだし。でも、意外とロックバンドはそういうことをやってないと思うんです。だから、そういう意味では、すごい助かってるんですよね。


ーーでもまあ、それはやっぱり「沢田チャレンジ」というキャラクターを背負っているからこそできることですよね。


沢田チャレンジ:そうですね。メンバー全員にそれを背負わせるつもりはないんですけれど、沢田チャレンジには負荷をかけて、やれることは何でもやろうって思ってます。熱湯風呂に入れって言われたら入る準備はできているというか。それで聴いてもらえる人や面白がってもらえる人が増えるんだったら何やってもいいなと思ってますね。自分のやってることはバンドの人間から「アイドルみたいなことをやりやがって」とか「ロックバンドらしくない」とか言われたりもするんです。そういうレッテルを貼られている。そう思う人はそれでいいのかもしれないけど、自分としてはロックバンドはもっと自由であっていいと思ってるんですね。


・「最初にロックを楽しいと思ったのはユニコーン」


ーーわかりました。ここからは音楽の話をしましょう。こういう話ばっかりしてると、得てして「戦略ばっかりで音楽の話をしてない」とか言われがちなんで。


沢田チャレンジ:ははは、そうですね。


ーーまず、ザ・チャレンジのルーツはどういうところにあるんですか?


沢田チャレンジ:自分の音楽遍歴を紐解くと、最初にロックを楽しいと思ったのはユニコーンなんです。それまでロックンロールは不良の音楽だというイメージがあって。僕は育ちもよかったし、タバコも吸わなかったし、そういうロックには正直あまり惹かれなかった。でも、ユニコーンと出会って「ロックって面白くてもいいんだ」「ロックバンドってこんな自由なんだ」ってことを初めて知ったんです。だったら自分もその世界に飛び込んでみたいと思うようになった。それが最初ですね。


ーーユニコーンはどのアルバムが入り口になったんですか?


沢田チャレンジ:『ケダモノの嵐』ですね。そこから『服部』に戻って、最後にデビュー作の『BOOM』を聴いて「最初はこんなだったんだ」って知ったという。だから、活動休止前、中期から後期にかけてのユニコーンにすごく影響を受けてます。メンバー一人一人が曲を書いてヴォーカルを担当しているのも面白かったし、かつ過去の音楽へのオマージュもたくさん入っていた。ユニコーンのおかげでビートルズも知ったし、いろんなUKロックを知ったんで。


ーー「LOVEってる」は昭和の歌謡曲というか、80年代の男性アイドルっぽい曲ですけれど。これは?


沢田チャレンジ:これは今回たまたまアイドル歌謡をやった曲がリード曲になっているということなんです。昭和の歌謡曲がコンセプトのバンドって思われがちなんですけど、実はそういうことではなくて。そういうのって、ユニコーンでもあったと思うんです。アイドルっぽい曲をあえて書いたり、TM NETWORKのパロディーをやってみたり。だから、ザ・チャレンジが今やってることって、自分の中では全然違和感がなくて、外れているつもりもない。それこそウルフルズとかも通ってきたので。


ーー10代の頃の自分のスターだったものって、ユニコーン以外には?


沢田チャレンジ:その頃は聞いてる音楽もお洒落じゃないとモテない時期だったんで、渋谷系が大きかったですね。小沢健二さんがいて、スチャダラパーがいて、TOKYO No.1 SOUL SET、かせきさいだぁとかのLBネイションの流れがあって。毎日学校帰りに渋谷のHMVに行って、新譜を試聴してLPを買ってました。そっちのサンプリング文化の影響も受けてるんですよ。


ーーなるほど。さっき言ったようにゼロ年代にはあんまり影響は受けていない?


沢田チャレンジ:そうですね。ゼロ年代は僕にとって氷河期でした(笑)。その氷をとかしてくれたのがももクロだった。やっぱり違うところから新しい文化が始まってたんですね。それを見てこっちにもやっと春が来るぞと思った。待っててよかったなって気分ですね。今は10年間の記憶がないくらいの気持ちですから。2005年くらいから10年経って、やっと氷が溶けて世に出てきた感じがある。だからなんか浦島太郎みたいな感覚はあるんですよね。周りに同じようなバンドが一人もいない。


ーーザ・チャレンジの楽曲の方向性についてはどうですか? 曲調の幅は大きいですよね。


沢田チャレンジ:ジャンルにはこだわってないですね。ザ・チャレンジはメンバーそれぞれが曲を書くので、それぞれに聴いてきたものをベースにその時に合わせて最適化して出すのがいいと思っています。昭和の歌謡アイドルみたいなこともやったし、ど真ん中のロックンロールもやるし、それこそ四つ打ちのフェス向きの曲もある。それでいいと思ってます。


ーーメジャーデビューして、やれることもさらに広がりますよね。


沢田チャレンジ:そうですね。メジャーデビューしたかった一番の理由がそれなんです。やれることが多くなる。ストリングスを入れたり、もっと壮大な遊びができる。それがメジャーの醍醐味だと思うんで。今まではバンドで再現できることしかやってないんですけれど、次からはそういう音を入れていこうと思っています。


ーーメロディーについてはどうですか? どんな曲調でもザ・チャレンジのメロディーには共通点がある気がしますけれど。


沢田チャレンジ:メロディーに関しては、シンプルかつキャッチーで、子供でも口ずさめるものっていうのは意識してますね。サウンドは凝っててもいいんですけれど、メロディーは絶対にシンプルであるべきだと思っています。自分自身がそういうものが好きだし、自分がやりたいことは、ユニコーンがそうであったように、ロックの楽しさに気付いていない人にそれを届けることだから。そのためには玄人好みのメロディーを作ってもしょうがない。3歳児でも口ずさめるような、歌詞も一回聴いたら頭に残るようなものにする、というのは意識してますね。それはザ・チャレンジにある唯一のルールかもしれない。


ーーなるほど。


沢田チャレンジ:地方まで届いてほしいんですよ。地方のホストがカラオケで歌えるようなロックバンドが今の時代にいないのがもったいないと思うんで。たとえばウルフルズの「ガッツだぜ!!」はそこに届いた。そういうところに行きたいんですよね。


ーーメロディだけじゃなく歌詞も大きいですよね。口ずさめるものにしている。


沢田チャレンジ:そこもすごく大事にしてる部分ですね。言語化できるって、すごく大きなことなんですよ。音楽って本来は言葉にしにくいものなんですけれど、それを言語化することによって流通するものになる。例えば「ザ・チャレンジってどんなバンド?」って聞かれた時に「5色のサングラスのバンドだよ」って言えるってことはすごく大事だし。たとえばフェスで30分ライブを観てメンバーの名前を覚えて帰るってことってまず100パーセントないと思うんですよ。「ヴォーカルの人、格好よかったね」とか「右にいた人がよかった」とか、そういう言い方になる。でも、ザ・チャレンジは色で記号化できる。


ーーなるほど。確かにそうですね。


沢田チャレンジ:曲を作る時にもそれはすごく考えてますね。フェスで6曲やったら、それが全部「なんとかの曲」って言えるようにしている。それをすごく意識してます。たとえばタイトルにインパクトがあったり、曲の中に振り付けがあったり。何かしらキーワードが言えるという。


ーー「花金ダンス」みたいなキーワードがあったり。


沢田チャレンジ:まさにそうですね。あとは「ツイッター」ってタイトルの曲があるんです。サウンドは90年代のJ-ROCKみたいな感じなんですけれど、サビで「なうなうなう」って歌ってる。そこにインパクトがあるから覚えてくれる。そういうことは考えてやってますね。あと、ザ・チャレンジって、音楽的な面白さでもアイドルの人達と同じようなところがあって。


ーーというと?


沢田チャレンジ:成功するアイドルの人達って強力な作家陣がついてるじゃないですか。90年代に活躍したバンドマンが裏方に回ってたりする。ザ・チャレンジは自分達がバンドマンなんですけど、そういう作家業をやってるヤツもメンバーにいるんです。だから自分達が狙いを定めたところに確実に曲が到達するんですよ。自信満々に言ってしまうと、そこがウチの強みだったりする。戦略を立てて、そこに向けて狙い通りの曲を仕上げていく。そういう作業がバンド内で完結するのが他とは違うところなのかなと思ってますね。


ーー作家としての自分と、ポップアイコンとしての自分が両方いる。それはどう共存しています?


沢田チャレンジ:その二つは完全に分かれてますね。作る時の自分とやる時の自分はスイッチを入れ替えてる。ステージに立つ時の自分はアイコンになる。だから、アイドルと作家の関係に近いという。やっぱり渋谷系を通ってきてるし、ピチカート・ファイヴも大好きなんで、ポップアイコンを立てることで世の中に浸透するっていう仕組みを見せてもらってきたんです。ただ、そこにはちゃんとメッセージ性もある。ザ・チャレンジのライブって、ワンマンだと最後にお客さん泣いてたりするんですよ。それは、沢田チャレンジが本当に思っていること、歌いたいこと、伝えたいことが届いているからだと思うんです。


ーーわかりました。今はザ・チャレンジというバンドが華々しくメジャーデビューしたタイミングなわけですが、今後の課題はどういうところにあると思いますか?


沢田チャレンジ:課題だらけのバンドだとは思うんですけど(笑)。ただ、これは今回柴さんにインタビューしてもらいたいって思った理由でもあるんですけど、僕達って疑われたまんまなんですよ。海のものなのか山のものなのか、探ったままの人達がすごく多い。全部のオセロをひっくり返したいんですけど、全然まだまだなんですね。自分がやってることには自信があるし、絶対楽しいことをやれてると思ってる。お客さんもそれに反応して集まってくれているんです。でも、音楽通の人達に届いてないんですよ。バンドマン達には微妙な感じに見られてるし、メディアとかライターの人でも、賛同してくれたり、面白がってくれる人もいるんだけど、なんか様子を伺っている人達が多い気がする。ニセモノなんだろうなって見られてるのがすごく悔しいんで、音楽に対しては真摯なんだってことくらいは伝えたい。ちゃんと聴いてもらえれば、そのことはちゃんとわかってもらえると思いますからね。


(取材・文=柴那典)