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geek sleep sheepが体現する、バンドの楽しさと醍醐味「音のやりとり、コミュニケーションがすごくある」

2015年05月15日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

2ndアルバム『candy』インタビュー

 yukihiro(Dr/L‘Arc~en~Ciel)、kazuhiro momo(Vo, G/MO’SOME TONEBENDER)、345(Vo,B/凛として時雨)によるスリーピースバンド、geek sleep sheepが2ndアルバム『candy』を完成させた。前作『nightpoter』から約1年半ぶりとなる本作は、メンバーのルーツであるオルタナティヴロック、ニューウェイヴ、シューゲイザー、グランジなどのテイストを織り込みながら、卓越したプレイヤーでもある3人の音がさらに深く融合した作品に仕上がっている。純粋に音楽と向き合うことで、バンドの固有の音へたどり着いた本作について、メンバー3人に語ってもらった。


・「(1stアルバムで)止まりたくないという気持ちがあった」(yukihiro)


ーー2ndアルバム『candy』が完成しました。1stアルバム『nightporter』から約1年半ぶりの新作ですが、メンバーのみなさんの活動を考えると、かなり早いペースだと思うのですが。


momo:出来ちゃいましたね(笑)。2~3ヵ月に1回くらいですけど、1枚目の後もコンスタントに曲作りとリハをやってたんですよ。その間もデモのやり取りをしたり。


yukihiro:1枚目が作れた段階で「出来過ぎだな」という感じだったんですね。「アルバム1枚作っただけで、ここまで来れた」という達成感があったんですけど、そこで止まりたくないという気持ちがあって。すぐに次の活動に向かいたいなと思いましたね。


345:ライヴをやったことで「もっとこういうふうにしたい」というところも出てきたし、メンバーそれぞれ、グッと近づいた感じもあって。その感じのまま、今回の作品も作れたのかなって。


ーー「近づけた」というのは、演奏のことですか?


345:それもですし、人間的にも。お互いに心を許してきたというか(笑)。


momo:「音のやりとりを楽しむ」という感じは最初からあったんですけど、ふだんの会話だったり、人間的な部分、3人でいるときの空気感も、バンドにとってはすごく大事で。どれだけ「こういう感じでやりましょう」と決めたとしても、その通りにはいかないですからね。geek sleep sheepとしてはまだそんなにライヴの本数もやってないですけど、1本やるたびにメシ食いながら話したり、「いますぐ、もう1回やりたいね」みたいなことを言い合って…。


そういう会話を続けていくことで、「あ、そういうふうに感じてるんだ?」とか「その着眼点はおもしろいな」ということにも気づいて。要は気兼ねなくやり取りできるようになってたんですけど、その状態は今回のレコーディングもまったく変わらなかったんですよ。バンドっぽさが増しているなって思いながらやってました。


ーーもともと通じ合うものがあるんでしょうね。3人に共通するコードみたいなものが。


momo:そうなんですかね? キャラ的には、yukihiroさんと僕はぜんぜん近くないですけど。


yukihiro:(笑)。


momo:音楽的なところでは「こういう感じでやりたいんだけど」「じゃあ、ギターはこうですよね」って感じになるんですけど、それ以外はほぼ新鮮なことばかりですね。趣味とかもぜんぜん違うし。


yukihiro:僕はお酒も飲まないので、geek sleep sheepが動いていないときは会う機会も少ないですからね。


momo:その違いが良かったんだと思います。いい塩梅で距離感が取れてるというか。


・「3人で演奏するときの気持ち良さをもっと追求したい」(momo)


ーーなるほど。geek sleep sheepのメインソングライターはmomoさんだと思うのですが、今回のアルバムの曲作りに関して、前作との違いはありましたか?


momo:3人で演奏するときの気持ち良さをもっと追求したい、というのはありましたね。デモはすごくザックリしていて、曲の流れだったり、「ギターと歌メロはこんな感じ」ということだけがわかる程度なんですね。あとは3人でスタジオに入って、何度も演奏しながらアレンジを組立てていくので。


ーー実際にセッションすることで、演奏の気持ち良さを高められる?


momo:そうですね。その場で細かい説明をすることもなくて、ベース、ドラムに関しても「お好きにどうぞ」という感じなので。


345:曲作りの時に何回も同じ曲を演奏するんですけど、yukihiroさんが突然、まったく違うドラムを叩いたりして。それに対して「じゃあ、私はこうやろう」と反応していく感じですね。


ーー「次はこういう感じでやろう」みたいな話はなく?


345:ないですね。いきなり来ます(笑)。


momo:「ドラムってそんな楽器だったっけ?」って思うくらい、ガラッと変えてくるよね。


345:しかも、すごい無表情で。


yukihiro:(笑)。


momo:それはね、yukihiroさんの照れ隠しも入ってると思うよ。「どうだ」って顔するのもアレだし…。


ーーyukihiroさんとしては、思い付いたアイデアをどんどん試そうということなんですか?


yukihiro:早くポイントを見つけたいんですよね。そのときに演奏している曲に対して「何がポイントなのかな?」というのを探りたいので。


momo:なるほど。


yukihiro:自分なりに曲のポイントをピックアップしながら演奏して、「どういう反応が来るかな?」って。それが上手くハマればカッコ良くアレンジできるだろうし、反応があまり良くなければ、違うことをやってみる。セッションしながら曲を作っているんだから、そういうことをやらないと意味がないと思うので。練習しているわけではないから、閃いたアイデアは試していかないと。


ーーいきなりまったく違うドラムを叩くことには、明確な意図があると。


yukihiro:そうですね。たぶんドラムって、「そこが決まらないと、次に進めるのが難しい」というパートだと思うんですよ。だからこそ、僕が早い段階でアプローチしたほうがいいかな、と。そういうやりとりも楽しいですからね。


ーー確かにドラムが軸になっている曲も多いですよね。特にyukihiroさんが作曲した「kakurenbo」のドラムは素晴らしいと思います。リズムと歌だけで曲が成立しているというか。


momo:そうなんですよね。メロディ楽器にもなるんですよ、yukihiroさんのドラムは。


yukihiro:その曲はタイム感を掴むのが難しかったですけどね。レコーディングのときも、ふたり(momo、345)に延々と付き合ってもらって。


・「ライヴなどを重ねて、掴めてきてるところもある」(345)


ーーmomoさんのギターも前作以上に激しさを増していて。たとえば「feedback」のフィードバック・ノイズもそうですけど、ギタリストとしての個性がさらに発揮されているな、と。


momo:1stのときは少し“余所行き”だったかなっていうのもあって。これもライヴをやってみて感じたことなんですけど、もっと激しく弾きたくなったんですよね。ノイジーなんだけど、美しく聴かせられるような曲を増やしたいっていうのもあったし。


ーー「ノイジーで美しい」というのは、このバンドのひとつの特徴ですよね。ギターに関しても、意見のやり取りがあるんですか?


yukihiro:momoくんに任せてます。たまに口出します(笑)。


momo:今回のレコーディングでも、「この3人でやれば、ギターはいかようにも出来るな」っていう感じがあったんですよね。(曲を作り始める)スタートの時点では、たとえば「スマパンみたいな感じ」とか「バックのギターはシューゲイザーっぽく」という話もしてるんですけど、歌メロと歌詞が乗って出来上がってみると、まったく違うところに行けているような手応えがあって。


最終的にはちゃんとgeek sleep sheepの曲になるというか。知ってる人が聴けば、ニヤッと出来るポイントも入れてるんですけどね。


ーー確かに(笑)。345さんのベースラインも前作以上に個性が出ている印象を受けました。全体的にメロディ感が増しているというか。


345: geekの曲は構成がしっかりあるので、(Aメロ、Bメロ、サビなどの)段階に合わせたフレーズを意識してますね。


momo:フレーズの当て方が独特だなって思ってたんだよね。そうか、そういうことなのか。


ーーmomoさん、345さんのヴォーカルについても聞かせてください。今回はさらにデュエット感がアップしていると思うんですが…。


momo:デュエット感(笑)。


345:(笑)。ライヴなどを重ねて、掴めてきてるところもありますからね。あと、momoさんが私の声の出しやすいポイントを汲み取ってくれて、「ここらへん(の音域)が歌いやすいでしょ」っていうのを探ってくれてる感じもあって。


momo:1stアルバムを聴き直して、ふたりのハーモニーが気持ちよく響くところを確認したんですよね。いくつか方程式も見つかったので、それもかなり使ってます。僕がダークなギターを弾いても、345ちゃんが歌えばピュアな感じになるし。


345:(笑)。


momo:345ちゃんが歌う曲に関しては、声を思い浮かべながら歌詞を書いたんですよ。それも前作との違いだと思いますね。


ーーアルバムの最後に収録されている「color of dream」は345さんの作詞ですね。


momo:アルバムの最後は厳かで静かな曲にしようって話してたんですけど、すごくネイキッドな感じになったから、345ちゃんの心から出てくる言葉で歌ってもらったほうが、よりグッとくるだろうなと思って。


345:タイトルはyukihiroさんに付けてもらったんです。歌詞を書いて、歌を録ったあとで、yukihiroさんから「これでどう?」という提案があって。


momo:けっこうタイトルを付けてもらったんですよね、yukihiroさんに。「planet ghost」「floating in your shine」もそうだし。ドラマーとしての役割と同じくらい、名付け親として活躍してもらいました。


ーーアルバムタイトルの「candy」は…?


momo:それもyukihiroさんです。それが最初なんですよ、じつは


345:そこから怒涛のタイトル付けが始まりました(笑)。


ーーちなみに「candy」というタイトルの意味は?


yukihiro:意味というよりは、イメージですね。


momo:シンプルなタイトルがいいって話してたし、いろんなニュアンスがある言葉ですからね。


ーー「candy」というと、ジーザス&ザ・メリーチェインの名盤『PSYCHO CANDY』を思い出したりもしますが。


momo:ですよね(笑)。まあ、それもありつつ。


・「バンドらしくイチからやりたい」(momo)


ーー曲の作り方もタイトルの付け方も、やりたいことをやってるという手ごたえが感じられますね。純粋にバンドを楽しんでいるというか。


momo:そうですね。無理せず、自分がいままで聴いてきた音楽とか、好きなものをそのまま出してもいいっていう感じなので。


345:おふたりに受け止めてもらってます。


ーー素晴らしいと思います。最近のバンドって、シーンの流れとかトレンドを分析したうえで、音楽性や活動のスタイルを決めている人たちも多くて。そういうスタンスとは違いますよね、geek sleep sheepは。もっとピュアに音楽と向き合ってるというか…。


yukihiro:…なんかバカっぽい(笑)?


ーーいやいやいや、そういうことではなくて。


yukihiro:わかってます(笑)。褒め言葉として受け取ります。


momo:この年齢で新しいバンドを組めたこともすごく幸せだと思いますからね。ある程度は知恵も付いてるけど、あえてそれに頼らず、バンドらしくイチからやりたいというか…。yukihiroさんもこっちの出方をちゃんと受け止めてくれるし、音のやりとり、コミュニケーションがすごくあるんですよ。初めてスタジオに入ったときの緊張感はハンパなかったし、「ああしろ、こうしろ」って言われるんだろうなと思っていたというか…。


345:「こうやって弾いて!」とか。


momo:そういうことは一切言われたことないですからね。身も蓋もない言い方ですけど、「バンドをやりたいんだな」っていうか。


ーーメンバーの関係性は完全にフラットですからね。


yukihiro:うん、バンドをやろうと思ったので。スタジオにメンバー募集の紙を貼っても良かったんですけどね。「当方ドラマー。オルタナやりたし」って。


345:「ギター、ヴォーカル、ベース募集」(笑)。


momo:「完全プロ志向」(笑)。脱線しちゃいますけど、地方に行ったときにすごいメンバー募集を見たんですよ。「当方ドラマー、U2やりたし。ボノ、エッジ求む」って。


yukihiro:すごいね(笑)。


momo:もともとバンドって、それくらいの勢いで始めるものですからね。


ーーバンドの楽しさがもっと伝わるといいですよね、ホントに。最後に東名阪3か所で行われる「tour geeks 2015」について聞かせてください。ヒトリエ、People In The Box、ストレイテナーをゲストに招いてのツアーとなりますが、どんな内容になりそうですか?


momo:いまちょうどそれを話しているところなんですけど、お互いのバンドがより絡めるようにしたいですね。セッションなのかカバーなのかわからないけど、化学反応が生まれるようなイベントにしたいので。


ーーyukihiroさんは対バンというのは珍しいのでは?


yukihiroそうですね。geek sleep sheepを始めるまで、対バンは久しくやってなかったので。


momo:あ、そうか。


yukihiro:他のバンドのドラマーがいるってだけで、こんなに緊張するのかと。リハを(他のバンドのメンバーに)見られることもなかったし、新鮮ですね。


(取材・文=森朋之)