2015年05月14日 11:02 弁護士ドットコム
独自に考案したフラダンスの「振り付け」を無断で使われて著作権を侵害されたとして、米国人女性がこのほど、日本の九州と中国地方で教室を開いている「九州ハワイアン協会」(熊本市)を相手取って、上演の差し止めなどを求める訴訟を大阪地裁に起こした。
【関連記事:出張で人気の「クオカードつき宿泊プラン」 会社に黙ってカードをもらっても大丈夫?】
報道によると、ハワイ在住のカプ・キニマカ・アルキーザさんが今年3月17日付で提訴した。カプさんは「クムフラ」と呼ばれるフラダンスの伝承者で、1980年代に協会から依頼されて、日本の教室で指導をはじめた。昨年、協会との関係が悪化して指導をやめた際、自身の振り付けを教えないように求めたが、協会側は拒否したのだという。
カプさんは、自身の振り付けについて、先代伝承者から受け継いだ動きを取り入れつつ、独自に考案したものだと主張している。一般的に、音楽の歌詞や曲に著作権があることはよく知られている。今回のような「ダンスの振り付け」にも著作権はあるのだろうか。著作権にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。
「ダンスの振り付けにも、著作権が認められます。ただ、あらゆる振り付けに、著作権が認められるわけではありません」
高木弁護士はこう切り出した。そして、次のように裁判例をあげて説明を続ける。
「過去の裁判所の判断としては、バレエの振り付けに著作権を認めた古い裁判例や、日本舞踊の振り付けに著作権を認めた例があります。
他方で、映画『Shall we ダンス?』をめぐる裁判では、社交ダンスの振り付けについて、『著作物性が認められるためには、単なる既存のステップの組み合わせにとどまらない顕著な独創性が必要』として、問題になった社交ダンスの振り付けには、著作権が認められませんでした」
今回のケースは、どんなことが争点になるのだろうか。
「ジャンルによると思いますが、ダンスの振り付けは、既存の振り付けの組み合わせや、そのアレンジで構成されることも多いですね。そのような場合、著作権は認められません。
ですので、著作権が認められるためには、その振り付けに『独創性があるかどうか』が重要な判断基準になるでしょう。
今回の訴訟では、原告の女性側は、自らの振り付けに独創性があることを主張し、被告の協会側は、振り付けの独創性を否定するかたちで争っていくことになると思います」
では、著作権をめぐって、このようなトラブルにならないようにするには、どうすればよいのだろうか。
「報道によると、今回のケースで、女性側と協会側との取引関係が終了してから、著作権のトラブルに発展したようです。
僕も弁護士として、著作権に関する相談を多く受けていますが、作曲家さんと音楽事務所にしても、マンガ家さんと出版社にしても、著作権のトラブルは、今回のように取引関係の終了の際に生じることが非常に多いと実感しています。
ただ、取引関係の終了の際には、両者とも自らの権利を主張しがちで、著作権に関して円満に合意することは困難です。
ですので、著作権が発生する可能性のある取引を行う場合は、取引を開始する段階で、著作権の帰属などをしっかりと取り決めて、契約書を締結しておく必要があります」
高木弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 啓成(たかき・ひろのり)弁護士
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。ミュージシャンやマンガ家の代理人などのエンターテイメント法務のほか、IT関係、男女関係などの法律問題を扱う。音楽事務所に所属し作曲活動を行うほか、ロックドラマー、クラブDJとしても活動している。
Twitterアカウント @hirock_n
SoundCloud URL: http://soundcloud.com/hirock_n
事務所名:アクシアム法律事務所
事務所URL:http://www.axiomlawoffice.com/