マーケティング調査など多額の費用がかかる知的人材の確保は、中小・ベンチャー企業には頭の痛い問題だ。2015年5月12日放送のワールドビジネスサテライト(テレビ東京系)では、そんな企業と、専門性の高い知識を身につけた学生とをマッチングする動きを紹介していた。
速く、低価格で「知的人材」を活用できる
東大発ベンチャーのアルトペーパーは、12月から事業所に義務化される「メンタルストレスチェック」に関するマーケティング調査をする必要があった。しかし人手が少なく資金も限られているため、調査を担当する人がいない。
そこで活用したのがMBA(経営学修士)を取得しようとしている学生を使ったマッチングサイト「MBAバンク」だ。MBAを取得するには経営戦略のほか、財務や組織人事、統計解析を含むマーケティングを学ぶ必要がある。
今回市場調査を依頼したのは、その卵だ。MBAバンクのしくみは、企業が依頼したいマーケティング案件をサイトに掲載し、学生がプレゼンを行う。その条件をみて企業が採用を決めるというもので、依頼する案件の価格は1件あたり10~20万円と、一般的なコンサルティング会社の5分の1程度だという。
アルトペーパーの鎌田長明社長は、学生に依頼した調査書を示しながら、
「実際には企業の3割程度しか、ストレスチェックを実施していなかったことが分かりました」
と話し、MBAの学生に仕事を依頼できることは「非常に気軽に知的人材を活用することができるようになったということ」と満足そうだ。専門的な勉強をしている人材なので、正しい知識に基づいた調査も期待できるという。
学生側も「実務経験」と「人脈」得られるメリット
MBAの学生側のメリットも訊いた。MBAバンクに登録している慶大大学院の渡邉さんは、「自分のこれからのビジネスのためになる能力を、深めるような引き出しを増やせる」と語る。さらに別の狙いもこう話した。
「実際のビジネスをしている方とつながることで、今後の新しい関係を作れます」
サイトを運営するリブ・コンサルティングは、経営コンサルティング会社。MBAバンクの中の優秀な人材の囲い込みを図りたい、というねらいもあるという。執行役員の権田和士さんは、こう話した。
「われわれも人材が命のビジネスなので、MBA学生の優秀な人材を積極的に採用していく。その採用コストを考えると、非常にペイするビジネスだと思っています」
マーケティング調査を学生に依頼することで、企業側はコスト減、学生には実務経験と人脈ができるという好循環だ。いいことばかりにも見えるが、コンサル業界のデフレ化を招いたりはしないのか、という疑問は残る。
しかし勉強中の学生たちが実際のビジネスの現場で鍛え上げられ、さらに優秀な人材になっていくと考えると、彼らの先行きは明るい気がする。(ライター:okei)
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