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ななみ、1stアルバムに込めた“人生の感情”を語る 「たぶん一生、愛を叫んでるんだろうな」

2015年05月13日 13:41  リアルサウンド

リアルサウンド

ななみ

 この人が歩んできた生きざまが透けて見える、強烈な作品である。ななみのデビュー・アルバム『ななみ』の完成だ。あまりに深い感情を含んだバラードの「愛が叫んでる」、リズミカルでポップな「I’ll wake up」と2曲のシングルをリリースしてきたななみだが、本作ではその両極をつなぐような曲たちが並び、さらにはそうした枠をはみ出すイメージの楽曲もある。ことにヴォーカルとソングライティングにおいては、このアーティストの高いポテンシャルがしっかりと表現されている。中学時代からシンガーを目指してきた彼女にとって、21歳の今ようやく自分のアルバムを形にできたことは感慨もひとしおだろうと思う。ここには、それだけの努力の積み重ねが反映されている。


参考:ななみ、1stアルバムより「I live for love」MV公開 蒼波純、山田愛奈、下山はるからが出演


 そして感じるのは、ななみがかねてから表明している「愛」というテーマ性の大きさと、その周りに重なって見えるいくつかのワードの存在だ。それは「夢」であり、「恋」であり、「青春」である。こうした言葉たちが指し示すものをたどればこのアルバムを浮かび上がらせることになり、ひいては彼女の人生を貫く何かにもつながるに違いないと考えた。というわけで今回のインタビューでは、13の楽曲群に触れながら、ななみが抱える感性や価値観、さらには生きざまの一端を射抜こうと思った次第だ。


 取材を終えた今は、ななみの歌が持つ深みと厚みは、やはり今どきの21歳にしては稀有であろう壮絶な半生を送ってきたからこそ生まれたのだと強く感じている。ただ、そんな中でも女の子としてのかわいらしさものぞかせているのが印象的だった。彼女には、これからも悩みながら、苦しみながら、転がりながら、多くの人の心を救う歌を歌っていってほしい。アルバム『ななみ』は、その尊い第1章になる。(青木優)


■「『ななみという人間はこういう人間なんだよ』っていう色のアルバムにしたかった」


――このアルバムはあなたが21年間生きてきた、その人生のさまざまな感情が詰まっている作品だなと思います。


ななみ:ありがとうございます。私のことを知ってる上で聴いてくださると、全然違いますよね。


――そう、ななみさんの生きてきた背景をね。そのアルバム・タイトルは『ななみ』と、ストレートですね。


ななみ:はい。私は人間らしいアルバムを作りたいと思ってたんです。ただ、そうすると明るい曲ばかりじゃなくて、イヤなことも歌うし、毒もあるし……それを詰め込みすぎたら虹色のように色が多すぎて、バランスがとれないかなと思ったんですけど。でも実際に私が経験してきたことはこんな感じだったし、それは何も偽りないことだなと思いました。「ななみという人間はこういう人間なんだよ」っていう色のアルバムにしたかったですね。


――ほんとにその通りで、あなたらしさが全面に出ているアルバムだと思います。で、ライヴを観ていた身としては、そんなにビートが強い曲が多い人ではない印象があったんですよ。それがこのアルバムでは……。


ななみ:覆せました? やったぁ!(笑) それは私がひとりで演奏してるわけではないから、豪華になりますよね。どんなに明るい曲でも、弾き語りだとちょっとスローに聴こえたり、バラードっぽく聴こえたりしますから。このアルバムは、アレンジも全部気に入ってますね。


――しかも、明るい曲調のものもありますよね。


ななみ:「ななみは毒があるから明るい歌は唄わないんだ」みたいなイメージを持たれても仕方ないし。自分は薬よりも毒のほうが好きなんですよ(笑)。だけどまだ21歳だし、自分だって恋をした時とか毎日メイクする前にかわいい曲を聴いてテンション上げたりするので、そこは今にしかできないこと……この先、25歳とかになってそんな曲を出してもリアルタイムじゃないし、出すなら今だと思ったし。あと、恋があって愛になるわけだから、そこもちゃんと共感してほしいなというのもありましたね。


――うん、僕も同じことを考えました。恋についての歌をこういうふうに唄えるのは、21歳の今だからだろうなって。


ななみ:うん、そうですね。きっと私は、愛について歌っているけど、この愛に対しての価値観も、今、21歳らしさの愛だと思うんですよ。もしかしたら30歳になって振り返った時に「全然そんなの愛じゃないよ」って思うかもしれない。だから、「愛が叫んでる」とかもそうですけど、何やかんや言って、21歳らしいんじゃないのかなと思うんですけどね。


■「やっぱり私は音楽以外なかった」


――ではここからは、それぞれの曲について聞いていきますね。アルバムは、前回お話を聞いた「I’ll wake up」で幕を開けて、2曲目は「去れ負け犬よ」。以前からライヴでもやっている曲ですが、この歌詞は自分自身に向けていますね。


ななみ:そう、自分に言ってますね。これを書いた当時は引きこもりだったり、ヤンキーだったり、そういう自分が本当にイヤだったんでしょうね。でも最近、この歌に助けられることが自分自身にあって……。たとえば全国で弾き語りでライヴしてると、聴いてくれる人が全然いなかったり、お客さんがいても、私のことを知らないから携帯いじってたりするんですよ。そういう自分が負けそうな時に歌いますね(笑)。お客さんだって、みんなが自分が勝ち犬だとは思ってないと思うし。「人に言うけど自分にも言う」みたいな感じで今は歌ってます。


――<結局人は簡単に裏切るし/どうせなら最初から 疑おうと思ってしまう>という歌詞はななみさんらしいと思います。人間観が出ていますね。


ななみ:(笑)そうですね、ヒネくれてますかね? ここの歌詞が一番気持ちいいですよ。ライヴを観てくれないお客さんの顔見て「お前だよ!」みたいな感じで歌うと、携帯をしまって「ごめんなさい!」みたいな感じで聴いてくれる人もいて(笑)。でもそこからファンになってくれる方も多かったので、ぶつからないとダメだなと思います。


――たくましいですね(笑)。次の「約束を果たすその日まで」は別れの場面を描いた、かなりグッと来る曲ですけど。これはきっとこういう場面が本当にあったんじゃないかと思いながら聴きました。


ななみ:そうですね。17歳の、まあ、ヤンキーの時に、結婚してもいいかなというぐらい好きな人に出会えたんですよ。それで「もしかしたら音楽をやらずに、この人と結婚して家庭を築いて……」とか考えだしちゃったんです。その時はオーディションとかも受けてたけど、先が見えなかったので、ほんとに未来について一番悩んでて。で、結局「音楽をやりたい、でもこの人と付き合いながらはムリだ、別れよう」という話をこっちから切り出して、別れたんです。そのあとにMusic Revolution(ヤマハの全国大会のグランプリ)を獲れたので、「あの時のさよならがなかったら今の自分もないんだろうな」って思いますけど……その時、「あんなに素敵な人と別れたんだから、絶対夢を諦めちゃいけない」って思えたんですよ。だからこれは「いつか夢をかなえて約束を果たすその日まであなたには会わない」っていう曲なんですけど、ただデビューできた今、向こうはもう結婚して、子供もいるんですね(笑)。夢を目指してる自分と恋をしたい自分がいて、そこで何かを選ばなきゃいけない時ってあると思うので、そこを共感してもらえたらなと思いますね。


――そうですね。ただ、17歳でそこまでの決断を迫られる人って、あまりいないと思います。


ななみ:うーん……やっぱり私は音楽以外なかったんですよね。だって自分で決めたのに、「あなたと結婚したから私は夢をかなえられなかった」とか言いたくないじゃないですか(笑)。わかってたんですよ、恋なんて一瞬だって。でも夢は、音楽は永遠だって思ってたから、そっちを選びましたね。


――4曲目は「I live for love」。これもタイトルに愛があります。


ななみ:これはあとで話す「悲しみはありがとう」の次の曲だな、という気がします。誰かにキズつけられて、誰も人を信じられない。キズを負うのが怖い。でも「誰かを愛することって素晴らしいんだな」と気づけた気持ちというか。私からすればファンの人だったり、最後まで見放さなかった家族だったり、そういう存在なんですけど。


――つまり、広い意味での愛なんですね。


ななみ:そうですね、うん。電車とかスクランブル交差点とか、人が多いところで、イヤホンで聴いてほしいと思います。うるさいところだからこそ静かな曲を聴いて、考えてほしいですね。いろいろ。


――続いては「愛してる」。これもバラードですね。


ななみ:これは、さっきの人と違うんですけど、ある人と別れた時のことで……その時はその人の幸せを願えないじゃないですか? 「ほかに取られたらどうしよう」とか「こんなに愛しているのに!」と思って別れたんですけど、でも「それって愛じゃないな」って気づいたんです。別れてから半年ぐらいまでは「新しい彼女できたかな」と思ってFacebookを調べたり、「どんな日常を送ってるのかな?」とか、気になったりしません? そのうちは全然愛じゃないんだな、自分を愛してるんだな、と思って。


――ああ、執着してるうちは?


ななみ:うん。でも2ヵ月、3ヵ月、半年経った時に「もうどうでもいいや」と思ってきちゃうじゃないですか。で、ひさしぶりに電話来てもうれしいわけでもなく、「元気? 幸せになってね」って、ほんとに言えるようになってからが愛なんだなって。それが男女じゃなくて、人間としての愛……相手の幸せを願えることが愛と呼べるのだろうな、という歌です。


――歌詞の一番最後の<この穏やかな気持ちを/『愛』と呼ぶのでしょう>というところですね。


ななみ:そうです。歌を入れる時も、最後は笑顔で唄って、ちゃんと出口に向かえるようにしました。ただ、この曲みたいに、自分のイヤなところがわかりながらも手放せないという女の子の気持ちを、世の中の男性には気付いてほしいですね(笑)。


■「母親のような曲を作りたかった」


――わかりました(笑)。で、このアルバムは曲調に幅があって、そのぶん、いろんな歌い方もしてますよね? とくに次の「出逢えたのはあの店で」は、かなりかわいくて。


ななみ:ああ、そうですね。これは自分のかわいいと思える場所を全部出しました。出しきって、何も残ってないぐらい(笑)。これも経験したことで……田舎娘なので、上京したての頃は東京の人って、みんなカッコ良く見えるんですよね。すごい!オシャレ!カリスマ!みたいな(笑)。で、あるお店に行った時に店員さんがすごいカッコ良くて、ひと目惚れをしたんです。ほんとにひと目惚れをした時って、しばらく考えません? 5日とか1週間とか。


――(笑)1週間も? ……ああー、でも引きずるかもなあ。


ななみ:ですよね? やっぱり魅力的な人って。で、ひと目惚れをして、最初から最後までそのことをずっと歌ってる曲ってなかなかないなと思ったから、今のうちに作ろうと思ったんですよ。ひと目惚れをしてる女の子たちがこの曲でその気持ちを盛り上げてくれたらいいなと思って。でもさっきの人、そのあとも「どこかでまた会えないかな?」「いないかな?」と思ったんですけど……あとで気づいたんですけど、東京では2回目会える偶然は、なかなかないですね。それぐらい一瞬の出会いというか。


――そうですね(笑)。ななみさんに恋の歌って、あんまり多くないですよね?


ななみ:いや、ありますあります! 実はあるんですよ? でも唄いながら、自分でも超恥ずかしいんですけどね(笑)。若い子にも聴いてもらえたらと思います。


――次は「許されざる愛」。これはまた一転して……タイトル通りのね。


ななみ:そうですね。これは最初のメロディを適当な英語で作ってたので、とことん洋楽チックに振り切って作ろうと思いました。洋楽ではR&Bが好きだったので、歌ってて、一番気持ちいいです。この曲は、それこそ女性がツラい経験を……他人から認めてもらえない恋やかなわない恋をしても、キレイになっていってほしいなと思って作りましたね。メイクをする時とかショッピングをする時とか、その人のことを思いながらキレイに、強くなっていけるような……そういう曲にしたかったです。


――そうですか。いやあ、視点が大人ですね。


ななみ:いえいえ(笑)、そんなそんな。


――そう思いますけどね。「ポケットの恋花火」もかわいい曲ですね。


ななみ:はい、自分の中のジャンルで言うと「出逢えたのはあの店で」と同じですね。これは大分にいた時から作っていました。<放課後>とか<グランド>っていう言葉からもわかるように中学時代の思い出なんですけど、花火を見た時に「好きな人のことを思う鼓動を<心の中の花火が打ち上がる>みたいに比喩できないかな」と思ってて。「恋桜」(シングル「I’ll wake up」のカップリング)と一緒で、恋と花火が視点を変えてマッチできないかな、と。その時に歌詞はできてて、かわいいメロディはちょっと大人になってから固めました。


――この<いぢらしい夏よ>という表現には、その頃の自分を今の視点で見て、書いてる感じがします。


ななみ:うん、そうですね。はっきりしない、ウジウジしてる若者の背中をドンと押せるような片思いソングになればいいな、と。まあこの曲は、結局最後は両思いになるんですけどね。だからリア充なんですけど(笑)。


――9曲目の「君という宝物」は、またまた一転して、切実なバラードですね。


ななみ:これは私の親友……というか、友達が地元にはひとりしかいないんですけど。その子がある日、すごく大切な人をこの世から失くしてしまったことがありまして。でもあんまり弱みを出してくれる子じゃないから、なかなか教えてくれないんですよね。それで私は気づいてはいたんですけど、向こうが言ってこないから、言えなくて……で、私にできるのは曲を作ることだなと思って、作りました。それでワンマンライヴにその子が来るのは知ってたので、この曲を歌ったら、最近になって「気づいてたよ」って、やっと教えてくれたんです。命にかかわらず、<君という宝物>はみんなにあると思うので、置き換えて聴いてもらえたらと思います。


――その話はライヴの時にしていましたね。そして10曲目は、「悲しみはありがとう」なんですが。いきなり<嘘つき。やっぱり離れていくのね>から始まるという……。


ななみ:これはもう、このままですね(笑)。これを書いた時の自分は、ほんとに人間が大っ嫌いだったんだなと思います。今思うと、よくもこんなマイナスなことを書けるなって。まあマイナスなように見えて、最後はプラスに行ってるんですけど。


――うん。プラスに思おうとしてるんじゃないでしょうか?


ななみ:そうですね、うん……って、私が気づかされた(笑)。もちろん男女でもそうなんですけど、誰だって裏切られることはあるじゃないですか? 向こうは裏切ってるつもりじゃなくても、全部信じられなくなる時ってあるし……。それで私、悲しい時にはすぐに母親の顔が浮かんで、いつも実家に泣きながら電話するんですよ。そういう存在の曲があったらいいなと思って作りました。私にとってのその歌は、中島みゆきさんの「ファイト!」なんですけどね。誰かが悲しい時にイヤホンつけて「これ聴こう」って、パッて勝手に指が動く、そんな母親のような曲を作りたかったですね。


――うんうん。で、これはあなたにとってのそういう曲にもなっていってます?


ななみ:そうですね。たまにツラいと、聴いてますね(笑)。<嘘つき。やっぱり離れていくのね/分かっていたのに忘れかけてた>……Aメロがそういう「ひどいわ!」っていう、ツラい!悔しい!悲しい!ってところから入ってくれると、聴くほうは楽なんですよね。キレイごとばっかりじゃなく、ほんとにキズをさすってくれるような曲じゃないかと、自分で勝手にそう思ってます。


■「普通に勉強できて、社会的に支障がない人がうらやましい」


――そう、すごく吐き出してますもんね。そして次の「Dahlia」は、あなたの毒の部分が出ていますね。


ななみ:周りを見ても、男性に振り回される女性が多い気がするんですよね。電話してくれない、メールしてくれない、私のこと好きじゃないの?みたいな、捨てられる女、浮気される女ソングが多くて。それも事実だと思うんですけど、もうちょっと考え方を変えたら大人になれるんじゃないかな、と思ってるんです。この曲、最後の最後まで、恨みを晴らそうと思ってたんですよ。でも詞を1ヵ月ぐらいかけて仕上げたんですけど、書いてる途中で恨みがどうでもよくなったんですよね。「ちょっと待てよ? いや、この男、くだらねえな!」と思って。これが女性の成長の速さなのかなと(笑)。聴いてくれる女性にも、この曲の5分ぐらいの間に「そうだ!」と思ってほしいなと。いつまでも泣くんじゃなくて、「恨んでたら同類なんだよな、男は子供だ!」ぐらいの上から目線で楽になってほしいなと思って(笑)。もちろんキズつく恋も大事だと思うんですけど、こういう曲が一番自分らしいですね。


――いやあ、こういう時の女性は強いというか、怖いですね。


ななみ:そうですね。ライヴの時に「出逢えたのはあの店で」のあとに絶対にこれをやっちゃいけないなって思います(笑)。並べるべきじゃないですね。


――わかります(笑)。12曲目は「涙レンズ」。これはしみますね。


ななみ:これは自分が普通じゃない人間っていうことがわかってるという歌なんです。私は音楽がないと生きていけなくて、恋愛は音楽の下というか、完全に次なんですよね。だから音楽のことによって不安定になる時期もあるし、つき合った人に迷惑をかけたこともよくあったんです。でもそういう時に、強がって助けを求めることができないんだけども、ただただ見守っていてほしい、という曲です。強がっているようで、弱いんですね。それはファンに対してもそうで、私は不器用だから考えることも変わるし、「ななみ、それは違うんじゃないの?」って思うことがこの先あるかもしれないんですけど、涙のレンズ越しで見守っていてほしいんだ、って。自分をこれからも愛してください、と言ってる曲ですね。


――そう、ここにも「愛されたい」という気持ちがありますね。


ななみ:そうですね。私、普通に勉強できて、社会的に支障がない人がうらやましいなって思うんです。私が経験してきたことや生き方に共感できる人は少ないと思うし、白い目で見る人もいるかもしれない。でも自分を信じて、前を向いて歩いていこうと思う。その隣にいてくれる人に「迷惑をかけてごめんね」という曲ですね。


――わかりました。そして最後が「愛が叫んでる」ですね。


ななみ:そうですね。この曲で終わった、眠ったように見えるけど、アルバムをリピートすると「I’ll wake up」のイントロが始まるので、また目覚めた!みたいに聴いてほしいと思います。あと、このアルバムの曲たちを陣取ってまとめられるやつは「愛が叫んでる」しかいないなって思ったんですよね。ボスっていうか(笑)。こんなに愛だのどうだの言ってるわがままな曲たちの中で、唯一ブレずに唄えてきた歌なので。


――こうしてアルバムを聴くとあらためてよくわかるけど、やはりななみさんの歌は愛が大きなテーマになってますよね。まず、そこにたどり着いてしまうのは、なぜだと思います?


ななみ:えーっ、何でだろう? ……べつに愛に満たされてるわけでもないと思うんですけどねえ。だから、かな?


――そうそう、だからだと思うんです。


ななみ:うん、たぶん、いまだに満たされてはいないんでしょうね。たぶん満たされたら、人間ってないものねだりだから、どんどん違うものを求めるようになるんでしょうけど。私、家族もちゃんといるし、ファンもすごく愛してくれてるし、スタッフの方々も仕事という形で愛を返してくれるし、孤独に思うことなんて、ないですけど。でもたぶん一生、子どもを産んだとしても、愛を叫んでるんだろうなと思います(笑)。それが幸せなんだろうなと思います。ただ、逆に幸せになったら、愛に満たされたら、自分はどうするんだろう?と思いますね。まあ満たされることなんて、ないでしょうけど……。


――それと愛と同じように「夢」という言葉もものすごく大事ですよね。さっきの話でも出てきましたけど、愛情を求めながら、夢に向かっていく自分もいるわけじゃないですか。その狭間でななみさんは生きてきたんだろうなと思いました。


ななみ:うん、そうですね。ただただ自分に期待をしていくしか、ほかに目を向けるところがなかったです。それが自分にあげられる愛だったので……夢があって、ほんと良かったなと思いますね。


■「愛を求めてるのは(素顔の)ななみちゃんで、(アーティストの)ななみは夢を目指してる」


――それからこれを訊いてみたいんですけど。ななみさんの青春って、どんなものだったと思います?


ななみ:ええ~っ! 青春ですか……!?


――まあ今もまだ青春の真っただ中だと思うんですけど。


ななみ:えっ、全然、青春、ないですよ。超乾いてますよ! 干からびてます(笑)。ええーっ、青春かあ……青春ねえ……。


――そんなに答えに困るの?


ななみ:困りますよ! だって学校行ってないんだもん。学校ってイメージあります、青春って。部活で県大会目指して、汗水流して……まだ汗が臭くない時期、みたいな(笑)。私の青春はたぶん、反抗期かな。


――反抗期だった頃? 17歳ぐらいの?


ななみ:やっぱりヤンキーだった頃ですね。ヤンキーの時期は一番音楽と離れて、ひとりの女の子として生きてたので、それが青春だったかなと思いますね。それまでは「夢を見なきゃダメなんだ!」っていう自分がどっかでいたけど、でもヤンキーの時はそれがなくて……結婚を考えるぐらいだったんで。


――じゃあ、その後にまた音楽への夢を持つようになって、ここまで来たわけじゃないですか。ここまでの過程は青春だとは思ってないんですか?


ななみ:全然思ってないですね。夢を追いかけることが青春かもしれないですけど、私はそれが当たり前だったから、青春だとは思ってなくて。どちらかというと、恋愛だけが青春だと思ってるかな……それ以外のことがなかったから。(青春は)青いってことですもんね?


――そう、未成熟がゆえの感性だったりね。ただ、そういうのとは違うところで生きてきたような感じがあるんですね。


ななみ:そうですね、文化祭も1回しか出たことないし……運動会も1回しか出たことないし。みんなで「おう!」とかすごい嫌いだし(笑)、そのぐらい熱さがなくて。「夢は信じればかなうんだ!」みたいなのが、全然ないですね。ディズニーのようなのは。


――夢は実現させていくべきもの、ということ?


ななみ:どうなんでしょうね……夢か。夢が自分、みたいな感じでしたもんね。あまりに現実が見たくなくて(音楽をすることに)夢を見てた感じですかね。ほかに見るものがなさすぎて。


――それだけ自分の生きる道を音楽に見出そうとしてたということですね。


ななみ:音楽がなかったら生きていけなかったですからね。<音楽=夢>だったので、それ以外のものは夢じゃないというか。


――うん。そして今はまだその夢を手に入れようとしている渦中なんですよね。そこでは愛も欲しがるけども、ただそれは、夢と一緒にはなかなか成立するものではない、ということなんですよね。


ななみ:そうですね、違う自分って感じです。愛を求めてるのは(素顔の)ななみちゃんで、(アーティストの)ななみは夢を目指してる。そこがパッキリ割れてますね。


――その両方が混在してるのがアルバムに出てると思います。


ななみ:あ、ほんとですか? 自分じゃわかんないです、何も(笑)。


――僕も今日、話していてわかりました。うん、今日はありがとうございました。これからも頑張ってください。期待しています。


ななみ:頑張ります! そう、頑張るしかないんですよね(笑)。どうもありがとうございました。(青木優)